ある女の子の話 3

大水槽の上では、、

「海くん、ルナちゃん、どうしたい、?」
館長が寂しそうな顔でルナを見ながら言った。

「僕は、ルナをずっとここで守って育てたいです。研究所なんかに行かせたくないです。どんな危険なことをされるかわからないんですよ?想像もしたくないです。」
僕ははっきりと言葉で館長に伝えた。

「そうだよな、わしもルナちゃんを守りたい。他の飼育員たちも、海くんに決断は任せると言っているし、わしが研究所へ断りの電話いれておくよ。」

ほっとした。

「海くん!」
ルナが上に上がってきた。

「すっご、い広いよ!!ひ、ともいっぱいいた、!ちょっとこわか、たけど、みんなキ、キラキラしてた!」

ルナが目を輝かせて勢いよく喋る姿に、心臓が鳴る。なんだろう、この胸の痛み。

「う、みくん?ど、どうし、たの、?」
不思議そうな目で見つめるルナ。

「なんでもないよ、!よかったね!!ね!館長!」
少し焦って館長に話を振ってしまった、

「うんうんよかったよ!ワシがこの水槽がこの水族館で一番大きく、目立つように作ってもらったんじゃぞ!」
館長めちゃくちゃドヤ顔してる、、
「そ、そうなの、!おじいちゃんすご、いねえ!」
「すごいじゃろう??」
「うん!」

…そうだ、!
「ルナ!僕、ルナが中で泳いでる姿見てみたいな!人がいっぱいいる方で見てきていいかな?」
「いいよ、!」

バックヤードから出て
「ついた、!」
目の前に広がるのは巨大水槽。
水槽のガラスの奥には、実は本物の海が見えるようになっている。浜と、水平線が綺麗に見える。今日は快晴だから青空が映える。
その綺麗な景色の中、ルナは楽しそうに泳いでいる。
あ、目が合った
すごい笑顔だ、こっちに向かってくる、!?待ってガラスに当たる、!

ガンっっ、、、、、



「ルナ、!!」
どんどんルナの顔が歪んでいく、

「館長!」
小型マイクでスタッフと話ができるようになっている。クソでかい声で館長に呼びかけた。

「海くん、!!今すごい音がしたけど、水槽で何かあったのかい、!」
どうやら上からは見えなかったみたいだ

「ルナが、僕を見つけて寄ってこようとして、ガラスに頭をぶつけて、、」
半泣きで状況説明をする。

「ルナが今上に上がってきている。早く海くんもバックヤードに、!」

ルナ、!ルナ、、
バックヤードの扉を開ける
「ルナ!!!!!!」

「うわああああああああん、う、うみくん、」

ルナが号泣している、
「館長、!ルナのおでこ、大丈夫ですか、?」

「ああ、問題なかったよ、赤くなっているけどすぐに治るだろう。今は冷やしといてやってくれ。わしは研究所に電話してくる。」
よかった、
「ルナ、ごめんな、冷やそうな、」
ルナの真っ赤になったおでこに袋に入れた氷を当てる
「痛かった、、海くん、それより気になったことがあるん、だ、けど、ガラスの向こ、う側の、水がいっぱいで、白い、ふわふわしたも、のが浮いてたところ見えたんだけど、あれはなあに、?」

「あれがね、海だよ。とっても広くて綺麗でしょ?白いふわふわしてるのは、雲っていってとっても空の上の方にあるんだよ、!」

「空、?」

「夜になったら月が見えるよ!今日は満月だよ。ルナの名前になったやつだよ。」

「月!!見る、!」
さっきのおでこの痛さはどこかに飛んで行ったみたいにまた、キラキラした目で僕を見つめる。その姿に僕はまた、胸が痛くなった。これは、何かの病気なのかな。

「月、海くんと、おじいちゃんと一緒に見たい!」
大水槽前には長椅子がある。そこに座って見ることはできるだろう。
「いいよ!夜になったら一緒に見ようね、!」

その頃館長は、
「はい、はい、、、そう、ですか、、承知しました。ですが、もう少し、もう少しだけ時間をください。’’長く待つことはできない‘’、ですか、わかりました。」

夜になって
お客さんは帰って、静かになった館内。

「ルナじゃあ、あとでね!」
「うん、!」
館長と一緒に、バックヤードを出て、見えたのは
とても大きな満月だった。
ルナが降りてきた。
とても嬉しそうだ、目を輝かせて、回転しながら泳いで見ている。

「海くん綺麗じゃな」
「そうですね、とっても綺麗です」
なにか、館長は深刻そうな顔をしている。

「館長?なにかあったんですか?」
「海くん、ごめんな。実は研究所に電話をしてみて断ったんじゃが、"これは生き物の発展の第一歩になるかもしれないんですよ。それを断ると言うのなら、強引にでもルナを捕まえて連れ去りますからね“と言われてしまって、」
僕は顔が引きつってしまった。
あまりにも残酷すぎる。研究所の人間は何を考えているんだ。

「ルナは渡したくないです」
「海くん、来週までに、もしルナを渡さなかったら強引に引き取りにくるそうなんじゃ、」
嘘だろ、信じられない。早すぎる。

ルナが不思議そうにこっちを見つめている。

「ルナはまだ、1歳です。人魚だから、見た目の成長は早くても、1歳なんです。そんな子を引き離すことなんて僕にはできない。僕は、守り育てると誓ったから、」
涙が止まらない。

「決断は、早い方がいいぞ」
館長は泣きながらだが、冷静に僕に言った。




ルナと過ごす一週間は早かった。



ルナと過ごす最後の夜。

「ルナあのね、君は明日から、他のお兄さんやお姉さんたちに引き取られることになった。」
僕は涙がこぼれそうになりながら、ルナに伝えた。

「海くん、私ね、全部知ってたよ、ガラスの向こうで話してることら聞こえてたの、背を向けて月を見てたけど、聞こえてくる言葉はあまりにも辛くて、見ながら泣いてた。ねえ海くん、今日も、月が綺麗だよ、私、研究所、?に行っても頑張って、海くんを思い出しながら、生きるからね」

くっ、、、、、こんな、優しくて、愛しい子、研究所のやつらなんかに渡すくらいなら、!

「ルナ、海を、見に行こうか」




続きます。
多分明日最終回





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