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塚本晋也のヴェネチアコンペ作『斬、』

塚本晋也監督の最新作『斬』。塚本晋也といえば『鉄男』。89年に撮ったこのカルト的な作品が世界的に評価され、今でもヴェネチア映画祭の常連。『鉄男』もそうだけど、とにかく作家性の強い、というか過剰な監督であり(全部見たわけじゃないけど)その作家性が一貫している印象があります。

誰かが言ってたけど、欧米では監督の個性を焼き付ける作品が評価されやすく、逆に日本の場合は個性を抑制して職人のように撮ることが推奨されてきた傾向があるらしいけど、塚本作品はまさに前者ですね。

本作『斬』もそうだけど、観ていて、ああ、監督の身体とスクリーンがもうくっついちゃってるなと思わされる濃さがある。ネバネバしたものを口から吐き出してこちらに叩きつけてくるような感じ?でもまあ『鉄男』よりは薄味になってますけどね。 『斬』は例えば音が過剰ですね。あと剣戟シーンなどはもう何が何か分からない迫力!(笑)いくら世界的名声があっても、常に低予算で撮ってきたならではの割り切り、振り切れが良い。

あと、チャンバラというテーマで日本映画が世界に出るときには、必ず『七人の侍』や『用心棒』と対比されるということをしっかり意識しているなと思いました。

本作は、「刀で斬る」という行為に対して、独特の感覚と単純ではない問題意識で捉えていて目が離せなかった。生と死、善と悪に加え、性的な意味での身体感覚も含んでいる印象。普遍的な作品とするには少し物足りないかもしらないけど、感覚がギンギンに尖った塚本作品です。

追記:塚本監督のコメントを見つけたので以下引用

 【ベネチア共同】第75回ベネチア国際映画祭で7日、コンペティション部門に出品されている時代劇「斬、」の塚本晋也監督と出演者の池松壮亮さん、蒼井優さんが記者会見した。塚本監督は「世界や日本が戦争に近づいている中、今の若い人が江戸時代に行って、人を殺さなければいけない状態になったときにどうなるんだろうと考えたのが、この映画です」と製作意図を語った。(2018.9.7 共同通信)

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