シェリング『超越論的観念論のシステム』拾い読み①の修正版

皆様申し訳ありません。拾い読み①に関して、私に見間違いなどの誤読があり、解釈を変更するとともに訳を作り直しました。修正前のものを消してしまうのはフェアじゃないと考えたので、そのまま残しておきます。

修正前はこちら。https://note.com/leethoo/n/n5a4b16f145bf

Dass ein System, welches die ganze, nicht bloß im gemeinen Leben, sondern selbst in dem größten Teil der Wissenschaft herrschende Ansicht der Dinge völlig verändern und sogar umkehrt, wenn schon seine Prinzipien auf das strengste bewiesen sind, einen fortdauernden Widerspruch selbst bei solchen finde, welche die Evidenz seiner Beweise zu führen oder wirklich einzusehen imstande sind, kann seinen Grund allein in dem Unvermögen haben, von der Menge einzelner Probleme zu abstrahieren, welche unmittelbar mit einer solchen veränderten Ansicht die geschäftige Einbildungskraft aus dem ganzen Reichtum der Erfahrung herbeiführt und dadurch das Urteil verwirrt und beunruhigt.

システムとは、日常生活だけでなく学問の大部分さえも支配している物事の見方を全て完全に変化させ、それどころか逆に、システムの証明が明証となり、実際に明証性を理解できるようなシステムの諸原理が既に厳密に証明されている場合には、それら自身においてすら持続的な矛盾に出会うものである。このシステムは、こうして見方が変化するとすぐに経験の豊かさの全体から忙しく働く想像力を引き起こして判断を混乱させ不安にさせるような、大量の個別の問題を度外視することができないことにのみ、基礎を持つことができる。(私訳)

解釈を変えたポイントは以下の通りです。
・文全体の主語は、文頭の dass 節。
・定動詞は kann で、それに対する本動詞(動詞の不定形)は haben。
・従って「dass節であることは、大量の個別の問題を度外視すること(von der Menge einzelner Probleme zu abstrahieren)ができないことにのみ、基礎を持つことができる」が文の骨格。
・文頭の dass 節は、ein Systemが主語、findeが定動詞(これの語形がなぜ”findet”ではないのかが私にはわかりませんでした)、einen fortdauernden Widerspruchが目的語。
・当初はdass節内部のein System … einen fortdauernden Widerspruch selbst bei solchen finde, welche …という文を、「システムはwelche以下のような人々(solchen)にさえも、長きに亘って反論され続けてきている」と解釈したが、そうではなく、ここのsolchenとwelcheをwenn節内の複数形であるseine Prinzipien(システムの諸原理)ととり、einen fortdauernden Widerspruchを「持続的な矛盾」ととって、「システムとはwelche以下のようなシステムの諸原理がwenn節の場合には、それら自身においてすら持続的な矛盾に出会うものである」ととる。
・つまりdass節の中身は「システムとは何か」を説明する文である。このことを踏まえておくと、『超越論的観念論のシステム』の後々の説明にも符合するのではないかと思われる。
・当初はwelche unmittelbar以下の関係文の関係代名詞welcheを複数形の四格と取り、かつeinzelner Problemeを受けているととり、関係文の主語をdie geschäftige Einbildungskraftと見做していたが、これでは、das Urteil verwirrt und beunruhigtと書かれていることととの整合性が取れない。なぜならverwirrtもbeunruhigtも四格das Urteilをとる動詞であるからwelcheが四格ではおかしいことになる。
・つまり、この場合、welche unmittelbar以下のwelcheは複数形四格の関係代名詞ではなく、女性単数形主語一格の関係代名詞であり、それが受けているのはeinzelner Problemeではなく、der Mengeである。
・つまりこの関係文だけ抜き出せば「大量の個別の問題が … 忙しく働く想像力を引き起こして判断を混乱させ不安にさせる」というような文になる。

もっといい訳語の案があるとか、異なる解釈が成立するとか言うことがあったらご教示ください。よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?