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厚労省副反応検討部会 データのごまかしか?

久しぶりに記事を書きたいと思います。どうしても看過できない事柄を発見したからです。

ワクチンの副反応についての情報です。

【私は感染症やワクチンについての専門家ではありませんが、大学院で統計学を研究しています。入念に資料を読んで確認しています。誤った箇所がある場合、専門家の方は是非ご指摘頂きますよう宜しくお願い致します。】


モデルナのワクチンについて、若年男性の心筋炎リスクについての報道をご存知の方も多いと思います。そこで、厚生労働省の出している資料等を調べたのですが、不審な点がいくつか見られました。これらについてまとめた事をご紹介します。

1. 一般向けの資料について

まず、こちらの資料をご覧ください。

こちらは、「10代・20代の男性と保護者の方へのお知らせ」と題された資料で、厚生労働省が一般向けに発表しているものです。


この資料によると、「感染症による心筋炎・心膜炎の頻度に比べると、ワクチン接種後に心筋炎・心膜炎になる頻度は低いことが分かっています」とあります。
その下にグラフが提示されています。

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これは若年層の男性がワクチンを受けた場合、新型コロナ感染症にかかった場合、それぞれの心筋炎・心膜炎になる頻度を100万人あたりで揃えたグラフです。このグラフをザッと見ると、厚労省が先に説明したとおり、ワクチンを受けた場合の方が、心筋炎や心膜炎になるリスクが低いように見えます。
ところが、年齢のところをよく見てみると…。

ワクチンを受けた場合は10代(12〜19歳男性)、20代(20〜29歳男性)と分けて書かれているのですが、新型コロナにかかった場合の国内の方は(15〜39歳男性)と書かれています。

つまり、同じ年齢層で比較しなければならない所で新型コロナにかかったほうだけ、年齢層を合算して算出し、多く見えるようになっています。しかも新型コロナに罹った場合、30代の分まで余分に合算しています。

ちなみに、新型コロナにかかった海外の方の場合は、12-17歳男性で揃えられていますが、国内と海外では感染状況が違うため、比較対象としては妥当ではありません。また、この資料だけでは「海外」がどこを指すのか不明です。

上のグラフのどこを指しているのかをお示しするため、拡大図を載せます。

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さらに疑問なのは、この「国内」の数字が何をもとにしたものなのか、この資料を見るだけでは分からないことです。そこで、その下の出典を見てみましょう。

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グラフの下に細かい字で出典が書いてあります。(上図の赤線の部分です)「第70回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第19回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(令和3年10月15日開催)資料」とあります。つまり、この「国内」の数字がどこから来たのかを知るためには、この資料を読む必要がありそうです。次のセクションではこの資料に基づいたことを書きます。

2. 10月15日開催の厚労省副反応検討部会の資料について

部会の資料はいくつかあるのですが、「1−1−1 副反応疑い報告の状況について」という資料の中に、上で紹介した図と似たものがあったので、それを紹介します。

この資料のPDFも載せておきます。

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100万人あたりの心筋炎等の発症数ということで、一般向けの資料に書かれていることと大差はありません。ところが、下の細かい字に注目して欲しいのです。

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赤線で示した部分です。「E:新型コロナウイルス感染症(国内)は、国内の新型コロナ感染症の入院患者の15〜40歳未満の男性で、100万人当たり834人」と書かれています。つまりこの834という数字は、コロナ感染症にかかり、入院した人の中で心筋炎になった人の数字だということです。

厚生労働省の一般向けの資料には「感染症による心筋炎・心膜炎の頻度に比べると、ワクチン接種後に心筋炎・心膜炎になる頻度は低いことが分かっています」と書かれていました。しかしこの結論に至るためには、入院患者における心筋炎のリスクとワクチン接種後のリスクを比較するのではなく、新型コロナ感染症の患者全体における心筋炎のリスクとワクチン接種後のリスクを比較しなければならないのです。
入院患者、さらには15〜40歳未満の数字を合算して使用、比較しているという点で悪質なミスリーディングに見えてしまいますがどうでしょうか。

ちなみに、赤い線の箇所の下の文にはこう書かれています。「新型コロナ感染症(海外)は、海外の大学で調査した結果による12〜17歳の男性で、100万人あたり450人」

この資料でもやはり「海外の大学」というのが、どこの国のどの大学なのか不明のままですので厚生労働省に直接確認する必要があります。

3. 率ではなく実数での比較

今までは、100万人あたりの数字を見てきたのですが、「じゃあ実際、どれだけの人が心筋炎になってるの?」ということで、実数が気になる方もいらっしゃると思います。そこで「1−1−1 副反応疑い報告の状況について」をもう一度見てみましょう。まず、ワクチン接種後の心筋炎発症の実数についてです。

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この青い図はファイザーの場合です。資料の7ページにあります。実数として、10代男性は7例、20代男性は20例であることが読み取れると思います。

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このオレンジの図はモデルナの場合です。資料の8ページにあります。実数として、10代男性は13例、20代男性は47例であることが読み取れると思います。

次に、新型コロナに罹った人の中で、心筋炎になった人の実数を確認してみましょう。これは同じ資料の30ページで確認できます。

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15歳〜40歳未満の欄の心筋炎関連事象者数をご覧ください。赤枠で囲ってあります。なんと4人です。つまり実数ベースで比較すると、ワクチン接種後に心筋炎になっている人の方が圧倒的に多いことになります。しかも、この100万人あたり834人というのは、比率という面では正しいですが、実数とあまりにも解離した数字であるため、実体より大きく見せかけた数字であると言わざるを得ません。
以上を踏まえ、コロナに罹った方がワクチン接種後よりも心筋炎になりやすいと言い切れるのでしょうか。

今まで上げてきた点についてはTwitter上でも専門家により多く指摘されています。一例として藤川賢治さんが指摘されていますので、参考まで。

4.そもそも、新型コロナに感染した場合とワクチン接種後を比較するのは妥当なのか

ワクチンを接種すると、×1で副反応のリスクがかかってきます。対して、新型コロナは感染するか感染しないか分かりません。つまり、罹患率をかけないといけないということです。コロナの罹患率は今のところ低く、しかも人によって取る行動は異なるため、あまり人と会わない人はさらに罹患する確率は下がると考えられています。十把一絡げに感染リスクを考えられないという事なのです。

そう考えると、ワクチンを接種した方が、いうまでもなく副反応のリスクを上げるのではないかという指摘にも肯けます。この点についてTwitterで詳しく解説されています。

以上、長くなりましたが、ワクチンの副反応としての心筋炎の話でした。【再度申し上げますが、私は統計は学んでいますが、ワクチンや感染症については素人です。至らない点はあるかと思いますがこれは人命に関わる問題なので、真剣に議論する必要があると思います。拙い文章ではありますが、これを叩き台にして、ワクチンについての議論がより良い方向に進むよう心から祈っています。】

【まとめ】

・厚労省は、「感染症による心筋炎・心膜炎の頻度に比べると、ワクチン接種後に心筋炎・心膜炎になる頻度は低いことが分かっています」としている。
・ところが、その元となるデータの見せ方にミスリーディングな部分がある。
・若年層の男性について、新型コロナに感染した人全体の心筋炎リスクについてのデータを厚労省は示していない。
・そもそも副反応自体、新型コロナに感染した場合とワクチンを接種した場合で比較して良いのかという議論がある。罹患率も考慮しなければいけないのではという指摘がある。


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