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嫌いな人にお菓子を貰ったら?

 皆さんは嫌いな先生や嫌いな友だちにお菓子を貰ったらどう思いますか?僕はチョロいので「あ、案外この人いい人かも」って思っちゃいます(笑)で、これがもしお金だったらどうでしょう。嫌いな人に「100万円あげる」って言われたら?僕は「この人の悪口言うのやめとこ」って思ってしまう気がします。もちろん人それぞれなので、中には「100万円なんかで魂は売らん!」という人もいるかもしれませんね。では1億円だとどうでしょう。それでもその人に対して物申すことが出来るでしょうか?思考実験をして遊んで欲しいのです。

 これが個人間の話だと、「悪口言う言わない」だったり「文句言う言わない」の話で済むのですが、研究者と企業との間だとそうはいかないんですよね。先ほどの設定で「自分」を「研究者」、「嫌いな人」を「企業」と置き換えてください。そうすると利益相反(COI)の図式がわかりやすくなると思います。
 で、これの何がまずいかというと研究者が企業に逆らえなくなるんですよね。これが新薬の研究なんかになると深刻で、「効果が出なかったデータを消せ」とか「安全性に問題があるようなデータの見せ方をするな」とか言われてもお金をもらっていたら研究者側も反論しにくいわけです。実際過去には「バルサルタン事件」というのが起こっています。ググってみてください。

 こういうことをすると、「科学者って信用できねえじゃん」となって科学離れが進んでいくわけです。「リケジョ」ブームとか言われてますがそれどころじゃなくなります(笑)ただ、一応対策はされています。論文では「〇〇という企業にお金を貰ってこの研究を行いました」というのを書くわけですね。そうすると論文を見る側は、「企業のCMだと思ってみた方がいいな」と思って少し距離を置いて結果を見ることができるわけです。

 でも「〇〇という企業にお金を貰ってこの研究を行いました」を表示する義務は限られているわけです。例えば、テレビや新聞に研究者が出る場合は要らないのです。これってどうなのでしょうか?

 ここまで書いても、「利益相反」がいまいち分からないという人もいるかもしれません。今流行りの「ステマ」の研究者版と考えればピンと来る人もいるかも。下に参考文献もあるのでぜひ調べてみてくださいね! 

利益相反(COI):大学や研究者と企業との間の利害関係のこと。お金がからむ。平たく言えば、大学や研究者と企業との間に「癒着」が生じてしまう、または生じそうになる関係のこと。

ステマ(=ステルスマーケティング):広告だと言わずに商品の効果を宣伝すること。YouTuberが商品を作る企業からお金を貰ったことを明かさずに商品紹介するとステマに当てはまる。


【参考記事・文献】

新谷由紀子. 利益相反とは何か: どうすれば科学研究に対する信頼を取り戻せるのか. 筑波大学出版会, 2015.

「こんな学問領域はほかにない…製薬マネーにどっぷり浸かる「医学部の教授」を信じてはいけない」(プレジデントオンライン,2022/3/29の記事)

https://president.jp/articles/-/55917

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