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護身術は対人で稽古した方がいいと考える3つの理由

私の知人の知人のそのまた知人が暴力沙汰を起こしてしまいました。
赤の他人ですが(笑)、看過できなかったのでこの記事を書いています。

背景

この話は私の知人(以下、Aさん)から聞きました。
Aさんは、Aさんの知人(以下、Bさん。ちなみに私は面識がありません)がそのまた知人(以下、Cさん。暴力沙汰を起こした張本人。この方とも私は面識がありません)を紹介したいというので会う約束をしていたものの、約束の時間になってもBさんもCさんも現れない、連絡も付かない状況だったそうです。

後日、AさんがBさんから理由を聞いたところ、Cさんが起こした暴力沙汰でBさんも警察の事情聴取を受け、連絡はおろか身動きすらできなかったとのことでした。

Cさんは、Bさんと待ち合わせした駅前でチンピラ数人に絡まれたそうです。
そこでCさんが取った行動は、「相手の顔面に肘を叩き込む」というものでした。
結果的に、相手は鼻の骨や歯を折る重傷を負い、Cさんは逮捕され、Bさんも事情聴取を受けることになりました。

CさんはYouTube等の動画で「護身術」を学んでおり、相手の顔面に肘を叩き込むのが「最も実戦的な技」と認識していたそうです。

では、Cさんは自分の身を護ることができたのでしょうか。

私は、できていないと思います。

確かにチンピラから暴力を振るわれたり、金品を奪われたりはしていません。

しかし、いきなり(チンピラは手も出していなかったそうなので)エルボーを見舞い、しかも相手が重傷を負っているので、ほぼ間違いなく法的な制裁(刑事and/or民事訴訟)を受けると思います。

仮に法的な制裁を受けなかったとしても、職を失ったり、周囲の人達からの信頼を失ったりといった社会的な制裁を受けることになるでしょう。

これでは本当の意味で「実戦的な護身術」とは言えないというのが私の考えです。

本題である「護身術は対人で稽古した方がいいと考える3つの理由」はここに潜んでいます。

1つ目の理由

まず1つには、技がどれくらい危険なのか、対人稽古をしないとわからないということです。
稽古の中では当然自分も相手も怪我をしないように注意する必要があるため、どんな技を、どの程度使ったら、相手をどの程度痛めつけることになるのか、という感覚が自然と磨かれます。

この感覚は、実戦の場面でも相手を必要以上に傷付けない=法的・社会的な意味も含めて自分の身を護ることに繋がります。

2つ目の理由

反対に、実際に人に対して技を使おうとすると通用しないことがある、というのも対人稽古をしないとわからないことです。
動画で見る限り簡単そうな技であっても、実際に使うにはそれなりの鍛錬が必要なので、自分の実力を過信しないためにも対人稽古は必須だと思います。

3つ目の理由

動画では指導者がどんな考え方、哲学を持っているかわからない、というのが、最後にして最大の理由です。

短い動画で多くの人の注目を集めようとすると、どうしても派手な技を披露しがちになります。

派手な技というのは、1つ目、2つ目の理由と関連付けて言うならば、極めて危険であったり、習得までに大変な鍛錬が必要だったりします。
また、そもそも実戦を想定しておらず、単なるパフォーマンスであることも考えられます。

護身術というのは、「護身」という目的を実現するための技術であるため、技の内容はその背景にある考え方、すなわち、どのような状況を想定し、どのようなゴールを目指しているか、とセットになっています(少なくともそうあるべきだと思います)。

短い動画では、見ている人が退屈しないようにそのような考え方の説明は省略されます。
仮に説明していても説明パートをスキップする人もいます。
その結果、動画をアップしている人が仮にどんなに崇高な考え方を持っていたとしても伝わりづらく、危険な技、実戦では使えない技が独り歩きして多くの人に知れ渡ってしまうというリスクを孕んでいます。

護身術の考え方

私は「危険を事前に察知して回避する」というのが理想の護身術であると考えています。
今回のCさんと同じ状況に私が置かれたとしたら、まず逃げます。
それも、理想としてはチンピラに絡まれてからではなく、絡まれそうな雰囲気をなるべく早く察知して逃げます。

万が一間に合わずにチンピラに取り囲まれる等の危険な場面に陥ったは、いかに冷静に対処するか、が大事です。
恐怖心をコントロールする呼吸法のトレーニングが有効になります。

自分が冷静になることができれば、相手をなだめるとか、大声を出して周囲に助けを求めるとか、自分から手を出す前に色々な選択肢が生まれます。
Cさんが絡まれたのは駅前だったので、大声を出すだけで多くの人の注目を集めることができたはずです。
駅の職員が気付けば警察に通報してくれる、むしろ駅ならば交番が近くにあって警官がすぐに駆け付ける可能性もあったかも知れません。

いずれにしても、自分が実力を行使しなければならない状況は最悪の状況だと思っています。
自分も相手も傷付けずに事態を収拾する=法的、社会的な意味でも自分を護るための鍛錬はしていますが、最悪の状況の中でそれが実現できるのかはわかりませんし、可能な限り最悪の状況に陥ることなく生きていきたいですね。

動画の利点

ちなみに、動画による護身術の指導や鍛錬を完全に否定したい訳ではありません。

特にコロナ下では対人稽古がやりにくい状況なので、動画はある程度までは有効だと思います。
私も緊急事態宣言の最中は動画を見ながらトレーニングをしていました。

ただ、基本的な肉体のトレーニングであるとか、対人稽古で学んだ動きを定着させるためのイメージトレーニングであるとか、あくまでサブ的な位置付けだと思っています。

最後に

護身術に興味のある方は、動画を見るだけではなく、是非実際に人と一緒に稽古すること、それも広い意味での護身を本気で考えている指導者の下で教わることをお勧めします。

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