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流転の地球 -太陽系脱出計画-

太陽系脱出計画……????となってしまうタイトル。『三体』の作者として中国SF好きにはおなじみの劉慈欣の短篇を原作とし、作者本人も監修として参加している中国のSF超大作映画である。

原題は「流浪地球2」。えっ?2作目なの?(2作目でした)
1作目は観ていないけれど、最近原作の短篇を読んだこともあって話の内容についていけないということはなかった。それでもおそらく1作目を知る人にしかわからないポイントがあるのだろうなあとは思うので、何かで探して観れたらと思う。

太陽が膨張し、いずれは地球はおろか太陽系ごと飲み込んでしまうと予想されている時代。火星移住だけでは対処しきれない……それなら地球ごと太陽系から飛び出してしまえばいいのでは?というトンデモ発想から始まるストーリーに思わず「それはそうだけど!そうだけどさあ!」と笑ってしまう。話の内容についていけないというより、発想が壮大すぎてちょっと待ってくれとはなる。

月を吹っ飛ばして引力を無効化し、さらに核爆発によりスペースシャトルの要領で地球を動かし、宇宙を流浪する。物理学や天文学や化学や数学の知識が総動員されたセリフに、文系の私は高校までのなけなしの記憶を召喚してみるが足りない。

壮大なスケールで繰り広げられる超大な計画と、一難去ってまた一難という展開が繰り返される175分。およそ3時間。インド映画のように踊ることはないが、ここまで観客を惹きつけ続ける脚本と演出には感嘆する。あっという間の3時間弱ではなく、ぎっしり内容の詰まった濃い3時間弱であった。

なぜこんなハリウッドでもウケそうな超壮大なSF映画がそんなに話題になっていないのかという疑問しかないのだが、なんとなく国際関係的なあれこれがチラつく。

もちろん中国映画なので、この一大プロジェクトは架空の国際機関の下で中国が中心となって仕切っていく。この点はアメリカにはなんともいえない部分であろう。ついでに言うと、韓国の宇宙飛行士団はちょっとだけ登場するが日本はいない。たまに日本語のニュース映像っぽいものは流れる。日本にとっても少し複雑なところだろう。

架空の国際機関(とはいえ時代設定としては数十年先という結構な近さ)を扱っていて、フィクションではあるけれど実在する国が登場するために、なかなか国際的な称賛は得難いのかもしれないなあ……などとしみじみと考えながら帰路についた。いくらフィクションと言われても、つい現実世界と重ねてしまうのが人間の性である。人間、社会、国家、政府というものは難儀なものだ。

話は盛大に逸れたが、この作品は本当に面白い。壮大なスケールでシリアスな作品に見せかけて「え、ここで?」というところで笑いどころも泣きどころもぶち込んでくる。映画ジャンルとしての中国SF映画、文学としての中国SF作品、もっとたくさん観たり読んだりしたいと思う。


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