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探しているものは?

ーあなたが探しているものは何ですか。


所属しているコミュニティで初のクリスマス会が開催された。2年間ほど、オンラインが主流の交流の場だったのが、今年から徐々にリアルで集まる機会も増えてきた。
今年最後のリアルイベントとして、企画されたクリスマス会の中で、“サンタの本棚”というテーマで、「大好きな本を誰かの大好きな本と交換する」といった趣旨の「覆面本交換会(任意参加)」が提案された。
「これは面白そう!」と思い、即「参加する」に手を挙げた。


誰かのために本を選ぶ

「プレゼントとして、本を交換する」といっても今年のわたしの読書量はそんなに多くない。育休復帰し、フルタイムに戻した影響は予想以上に可処分時間を奪っていった。
交換条件には、「家にある本もOK」とあった。
家にある本? 
自己啓発系で話題になった本、マインド整える系、ハウツー本、時間管理術系、○○は9割系、やりたいこと見つける系…そんなのばっかだ。
しかも、本を複数同時にちょっとずつ読み進めるのが好きなので、なかなか1冊が終わらない。読み切っていないとおすすめできないぞ。

さて、「大切な仲間にプレゼントしたい本…」。

やっぱり、何か別に探してみようと思った。
色々考えあぐねていたときに、ふとコミュニティ内の「読書部屋」で今年、話題になっていた作家さんのことを思い出した。
その作家さんの最新の本については、まだ誰も話題にしていなかった。どんな作品なんだろう?と興味を持ったので、まずは自分で読んでみようと決めた。本当にそれをオススメしたいと思ったら、プレゼントにしよう、と。

久々の世界を味わう

書店で実物を見たそれは、なんだか表紙から珈琲の香りが漂ってきそうな本だった。
小説ー。普段、読まないジャンル。
いや、昔は好きで読んでいたのに社会人になってから、パタリと触手が動かなくなってしまった。
今、家にあるような本たちばかり、つい手に取ってしまう。
それは、自分が「今よりもっと成長したい」と思うからなんだけど。

そんなわたしが久々に小説を買って、読み始めたら、思いのほか、面白くって、ストーリーの光景が、その場の空気感や匂いとともに脳内でありありと想像できてしまった。
まるで、主人公の行動を追体験しているような感覚だった。
年齢、性別、仕事、立場も全然違うのに…!
そうだ、小説ってそんな感じだった、と久々の世界を味わうことになった。

POPが引き寄せた出会い

今回買った小説は、「年末年始にほっこりした気持ちで温かい飲み物と一緒に読んでほしい」とシチュエーションが浮かび、読書でリラックスして笑顔になってくれたらいいなと思い、この本をプレゼントすることにした。

一方、クリスマス会でわたしが選んだのは、「寄り道ならぬ寄り本。その一冊が人生を拓く一冊になるかも。」と書かれたPOPがついた紺色のギフト袋に入った本だった。この「寄り本」という表現に心惹かれた。寄り道って普段あまりしなくて、どちらかというと生き急いでいるから、逆に「寄り道してみたい」と思ったのかもしれない。

帰宅して、袋の中を開けたら、想像していなかった本が入っていた。
それは文庫本で、絶対自分から手に取らないだろうタイトルだった。
第一印象は、「え、わたしに読めるかな?」だった(ごめんなさい)。でも、コミュニティ仲間の誰かが大好きな本として選んでくれたものだから、読まなきゃと思い、その日の夜から読み始めることにした。

主人公はあなた

この小説は、5章からなっていて、主人公は、年齢、性別、職業、バックグランウドが異なる5人。加えて、地域のコミュニティハウスの図書室の司書さんが、全員に関わる重要な役まわりになっていて、すべての話がどこかでつながっている、という群像劇になっていた。
1章目からすでに惹き込まれてしまって、2章・3章ではまるで自分のことかと錯覚するくらい、自身を重ねてしまい、ついウルウルとしてしまったことに驚いた。ちょうど大好きな音楽を聴きながら読んでいて、その世界感と究極にマッチしてしまった場面があったのだ。

不思議とどのストーリーからも、自分ごととして、これからの生き方を考えるきっかけを与えてもらった気がする。
個人的に感じ取ったことは、総じて、「人生の主人公はあなた(=わたし)であり、どのように生きていきたいか、答えはすでにあなたの中にある」ということ。

何をお探し?

主人公たちは、微かな夢や希望を抱きつつも、現実ではそううまくいかないことが日常であり、「どうせわたしには」と諦めも同時に抱えている状態。でも、心の奥底では、やっぱりどうにかしたいと思っている。
そんな彼らに行動のきっかけをくれるのが、図書室の司書さん。「お探しものの本」の検索結果とは別に司書さんのおすすめ本がリストに載っていて、疑問に感じながらもその本も手に取って帰ることに。

その選書は、主人公たちがレファレンスで、司書さんから「何をお探し?」と聞かれたことを発端に始まった会話のやりとりからの流れだった。

その質問を受け、彼らは本ではなく「今、わたしが人生で探し求めているもの」について想いを巡らせることになる。
その後、司書さんが選んでくれた本と周りの人たちとの関わりの中で徐々に希望を取り戻し、背中を押され、少しずつ行動を起こし始め、また人生が動き出していく、というストーリー。

“誰かのために“は出会いをもたらす

ここまで書いて、気づいたことがある。
あれ、この小説のストーリーってまさにわたし自身にも最近、起きている流れじゃない?!
クリスマス会の企画をきっかけに、誰かのために本を探し、誰かが選んでくれた小説を読んだ。久々に小説の面白さを実感し、ふと思い出されたのは、すっかり忘れていた「わたしも小説家になりたい」と原稿用紙に物語を書いていた子供の頃の夢だった。

つい先日も、この小説の図書室のような小さな本屋の店主さんに本を選んでもらったばかりだ。

クリスマス会の企画をきっかけに大好きだった小説の世界の面白さを再び感じることができ、子供の時の純粋な夢も思い出したり、珍しくウルウルするくらい心が揺り動かされる体験し、もっとこんな本を読んでみたいと思た。

「誰かのために」探したり、選んだりするものは、その誰かへの新たなきっかけ(出会い)として、その想いがつながっていくのかもしれない。

人は孤独を感じても決して1人では生きていけない。
他者との関係性の中で、初めて気づかされることはたくさんある。他者というのは人だけでなく、本や音楽や舞台やアート作品、誰かの発した言葉かもしれない。

それらはすべて“人生の出会い”であって、その出会う過程の中で、人生で心から求めている「お探しもの」の本当の答えが、ふとした瞬間にろうそくの灯りのようにポっと心の中に見つかるのかもしれない。

ただし、それを捉えられるかはきっと自分次第ー。

この小説を読んで、そんな風に感じました。

あ、わたしが何の小説を読んだかを公表するかは、本を選んでくれたサンタさんにもし確認できたら、にしますね!(あらすじでわかる方もいるかな)


追伸:サンタさんと連絡がつき、公開について確認できました!サンタさんありがとうございます♡
わたしが受け取った小説はこちらです。
興味を持たれたらぜひ読んでみてくださいね!


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