サーモンの生き様


川の中の生き物たちは、学んでいた。

何も考えずに、流れに身を任せて泳いでいると、
いつのまにか流されてしまい、
思わぬ落下が待ち受けているかもしれない。

だから、流れを見極め、逆らいながら、上手く生きていく必要があると。

けれども、サーモンは、耳を貸さなかった。

自分にとっては、落下してからが、
本当の人生のはじまりだったからだ。

それは、自分の使命であり、
宿命であることを本能的に分かっていた。

彼は、あえて流れに身を任せ、
オザキのように、滝に呑み込まれていった。

そして、大海原に挑戦した。

長い間、弱肉強食を生き抜き、
経験値を積んで、

ついに、キングサーモンに進化した。


とうとう、故郷に戻らねばならない時がやってきた。

次世代の為に、より安全な場所で、
産卵という使命を果たす為だ。

だが、試練は終わらなかった。

からだが傷だらけになりながら、滝をのぼった。

熊にかじられることもあった。


ようやく、故郷にたどり着き、

何とか使命を全うできた。


口をゆっくりとパクパクさせ、
力強く、遠くを見つめたまま、
静かに横たわった。

やがて、彼は、生物たちの栄養となり、

からだは、森に還元され、

次世代の稚魚たちの養分となった。


挑戦し、貢献し、未来をつくる。

その生き様は、後世に受け継がれていった。


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