見出し画像


産婦人科で「妊娠ですね、10月ころでしょうか」
と言われた時は、
「あら~~できちゃったか。どうしよう」
と戸惑いはあったが、大した喜びはなかった。
命に対して申し訳ないことだと今は思うが、その当時は正直そうだった。

結婚はしていたから、
「両親になんていおう」
「彼がOKするかな」
とかの問題はない。

「でもな、仕事ができなくなるし。収入も夫のだけじゃ苦しいな」

という現実的な課題の前に、心の中でこんな声が渦巻いていた。

「じぶんのことに手いっぱいの私が、子どもというもっと手のかかる存在のために生きれるのだろうか」

私は、いわゆるDV家庭に育った。こんな苦しい家庭ならばとっとと出ていけばいいのに、と心の中で思いながら、母はいつも言った。

「お父さんとの生活は死ぬほどつらいけど、あなたがいるから生きていける。あなたがためならば、私は命を投げ出してでもいい。」

「重たい・・・・・」

口には出せないば、母にいつも言われるたびに、「嬉しい」よりも「重たい」言葉。

そんな重たい存在が、もうひとりできるのか。
私は私と夫の生活をつくるだけでも、結構しんどいよ~~~

そんなこんなでもがいていたとき、夫に相談したらただひとこと。
「でもさ、猫の子でもかわいいから。人間の赤ちゃんも可愛いんじゃないの?」

なんじゃ~~~こいつ!
猫の子と、人の子を一緒にしてどうする?ペットじゃないから、
「はい、育てられません。って保健所もっていけないよ」
いえいえペットももっていってはいけないです、責任るよ。はい。

でも、この無邪気というか子どもっぽい?夫のひとことはある意味新鮮だった。

「人をかわいいと思っていいのだ。
責任とか重みとかはあるけど、私はひとりじゃない。
かわいいと思える夫と二人で育てるんだ」

ずっと、人を「かわいい。頼りにする。」というのは、条件つきだと思っていた。
仕事でも、依頼するのは、仕事の分担上。委任するのは部下の成長のため。同僚にお願いしたら、今度はお願いされていい準備あり。

そんな条件つきでしか、人を信頼できず、お願いもできない私だった。

家庭もそうだ。母の面倒をみることは、父の機嫌を損ねないため。母が家を出て引き戻すような厄介ごとにならないため。
そもそも母の面倒を見ること自体が、親子逆転の私の役割だったのも可笑しい。

「よし、生もう。そしてこの人の優しいDNAを受け継ぐ「子」と一緒に生きてみよう、3人で」
と決意した。

しかし、もっと大きな問題はそこからスタートだった。
職場への報告だ。

「えっ、子どもできたの?おめでとう!!」
と歓迎してくれるみんな。

「大変ならば、仕事をメンバーに割り振るから言ってください」
と上司も協力的。まさかと思うような反応だった。

しかし、しかし、その時は、私でないと解決できない超大手の新規案件を抱えていた。新しいOSを使っての開発だった。
すぐに進めなければいけないのだが、つわりがひどい。

モノもたべられないし、電車にものれない。
2、3日会社を休み、家でちょびちょび水だけのむ毎日

どうしよう~~~~

その時会社から電話が入った。

「つらい時に申し訳ない。あの案件をすすめなきゃいけないね。
会社にでられないようならば、設計課長があなたの家にいって打ち合わせすると言ってくれているよ。男性だけじゃ嫌だろうから、女性の〇〇さんも一緒にいくって、言ってるけど。」

まさか、まさか!
あの、いかつい設計課長が家まで来てくれるなんて。
忙しい中に、尊敬する先輩もくるなんて。
その気持ちが嬉しかった。そして責任感もずしずしとくる瞬間だった。

「いえ、なんとしても行きます。」

這いつくばるようにして出社した。そして、案件を進めた。
しかし、複雑な案件ですったもんだが続いた。

身体が動くならば、徹夜してでも仕様書を作成し直したい。
テストをしたい。
あれもこれもと思うが、つわりで身体が動かない。
おまけに子宮が張ってきた。早期流産にもなりかねない。

そんな時に、リーダーがひとこと。

「あなたがひとりで頑張らなくてもいい。
今までずっとひとりで頑張ってきたよね。
会社は個人企業じゃないよ。
これからは、本当の意味で「チームで仕事をする」ことを学ぶんだよ。」

そうなのだ。
いつも利害関係でしか生きてこなかった。
仲間も仕事も当然その延長線上。迷惑をかける私は「存在価値」がないと思っていた。
しかし、自分ひとりで仕事はまわらない。
もっと、人を信じるときなんだ、できないことは「すいません。お願いします」と心から、首を下げてお願いするときなんだ。
相手を信じて。

そこから仕事は円滑に回るようになった。
思いもかけないような、好意的な判断が下されて、なんとか案件は納品できた。

あの時、子どもを産むという選択をしたから。
世界は変わった。
家族という存在も、軽やかに「かわいい」と思える観点をもてた。
そして、仕事でも「できない私」を知り、チームメンバーのありがたさを心の底から思いしった。

仕事はやっぱ楽しい。苦手な人もいるけど、ちゃんと助けてくれる人、信じられる人もいる。
完璧じゃないから、補いあって、生きあえるだね。

そんな世界に変わった。
あの選択がなかったら、今でも、誰が周囲にいても、「ひとりぼっち」
ゴールのない人生トライアイスロンを走っていただろう。

#あの選択をしたから

自己紹介

💕登録特典プレゼント中💕
1日5分!「幸せな毎日を創る付箋術」PDFシート、
💚LINE登録後に、お好きなスタンプを1つお送りください♪

line登録画面


よろしければサポートお願いします。サポート頂けるのが最高の励みです。お役に立つ記事を書きます☆