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年下彼と紫リボンの物語。

高校の文化祭で「リボン交換」なるものがあった。
それは
予め配られた紫のリボンを好きな相手と交換するというもの。
勿論、異性、同性は問わずに。

当時から年上の人が好みだった私は
学年が1つ下の子から告られても何とも思わなかった。
「ありがとう、でも気持ちには答えられない」と伝えた。
だけど彼は度々私の前に現れて
ラジカセを肩に担ぎ、友達を従えて、
通り過ぎる時は手を挙げて敬礼
挨拶をするのだ。
「全く・・・そんな顔しないでよ、声大きい、恥ずかしい・・」
というのが本音。

友人の間でも有名になっていくのが何だか嫌だった。
だから、私は敢えて年上の彼を選んだ。
もう彼氏がいるのだから・・という意思表示でもあった。

ある日
年下の彼に彼女が出来たと、風の便りが届いて
胸をなでおろしたが、それはざわつきへと変わった。
その彼女というのは、男たらしで有名な娘だったのだ。
私は心配になった。
あの屈託の無い笑顔が消えてしまったら・・・
お願い、彼は傷つけないで・・・と。
もう気になって仕方がない。

暫くして
仲間でカラオケに行くことになったのだが…
実はその中に彼もいて。
賑やかな時間が過ぎて行く中・・・
年下の彼が彼女と別れた事を知る。
「彼女には他にも何人か彼氏がいたんだ。」と明るく笑う彼。
ズキっとしたのを覚えている。

そして 私も
当てつけのように付き合っていた 年上の彼と別れた。


いつもの学校生活が始まって。。

いや…違う。。。

いつもと同じではない…
年下の彼を目で追う自分がいる事に気づいてしまった。
彼は今まで通り屈託のない笑顔。
会うと手を挙げて敬礼。挨拶をして通り過ぎて行く。

私は彼が来るのを楽しみに 待つようになっていた。


そして文化祭の日。
後夜祭に交換する紫のリボンが配られた。
教室に彼の友人が来て
「あいつ、体育館で待ってるから想っていたら来てほしい。」
と言われた。
もう迷いは無い。行くと決めていた。


でも。。。
釦を一つかけ間違えたら揃う事はない。。


委員会の仕事が長引き、体育館へ行くのが遅れてしまった。
人もまばらで、勿論いるはずもない…彼。
暫く立ちすくむ私。。。。
ショックと後悔が襲ってきて崩れそう・・・

一度振られた相手をずっと待ってるほど大人でもなく
そこまでの想いは無いよね。

そうだよね・・・

その夜私は、打上げという一人前の理由で友人と遊びに出かけた。
何とか 気を紛らわしたものの
布団の中で流れ出た涙は、夜通し止まる事はなかった。

翌日、聞いた話では
彼は待ち人来ずで皆と遊びにくり出した…と。
待っていてくれたのは事実だった。
当時、スマホがあったなら・・・・と今でも思う。

高校生の頃の切ない恋の思い出。。。



思い出がずっと胸に引っかかったまま
大人になってしまった。
あの時の紫のリボンは、定期券入れの中に入っている。
何故かずっと入れているのだ。

別に彼と会いたいとか未練があるとかではない。
ただ忘れられない。。あの時の事が
これを未練…というのかな…

あの時もしも時間通りに行っていたら・・
もしも委員会の仕事を断っていたら・・と

思っている、今でもずっと。。


流れる景色をみながら、ボンヤリ…時々頭に浮かぶ
彼の…あの時の笑顔と得意げに上げる右手。
どこかで元気にしているかな。
幼少期の傷跡は傷んでないかな。

窓ガラスに映る自分の顔はいつも疲れていて老け顔。
あの頃のような若々しさはもうないな。。
彼はどんな大人になったのだろう。子供はいるのかな。

もしも今
会う事があったら、沢山話したい事あるのにな
元気かな。。。

ねぇ…元気?

いつもと同じ道、同じ風景。
私はこの時間がとても好きだ。

*******

「終点です」
あ、もう着いたんだ。と降車口へ向かう。
「ありがとうございました」
と…その時
「これ落としましたよ」
と言われて振り向いた。

白手袋をはめた その人の手には

あの時の「紫のリボン」が。

そして そこには
あの頃と変わらない屈託のない笑顔があった。


*あとがき*
 半分ほど実話が入ったお話しです。
 この後の2人の物語は皆様にお任せします。

 最後まで読んでいただきまして
 ありがとうございました。感謝いたします。

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書いた人:みるるぽ