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【映画#57】「子猫をお願い」『静かな爆弾』より

こんにちは、三太です。

ここ数日一気に日中が暖かくなってきました。
どうやら花粉もたくさん飛んでいるようです。
花粉症だと診断されたわけではないですが、体が花粉にかなり反応している今日この頃です。

では、今日は『静かな爆弾』に出てきた映画、「子猫をお願い」を見ていきます。
『静かな爆弾』に出てくる唯一の映画です。

基本情報

監督:チェン・ジェウン
出演者:テヒ(ペ・ドゥナ)
    ヘジュ(イ・ヨウォン)
    ジヨン(オク・チヨン)
    ピリュ(イ・ウンシル)
    オンジョ(イ・ウンジョ)
上映時間:1時間51分
公開:2001年

あらすじ

仁川(インチョン)の商業高校を卒業した仲良し女子5人組。


写真を撮っているのはテヒ、左からヘジュ、ジヨン。
ピリュとオンジョは正直わかりませんでした。

可愛いけれどわがままなヘジュ
面倒見がよく、どちらかというとおせっかいともいえるテヒ


                       テヒ

噂話が好きな双子のオンジョピリュ
そして家がかなり貧乏で両親も他界してしまい、けれども夢を追いかけるジヨン
社会に出てそれぞれが厳しい現実に直面します。
それに伴って5人の関係も徐々に高校の頃のような仲の良い感じではなくなっていきます。
そんなある時期にジヨンに思いがけない災難が降りかかります。
そこから女性たちの運命は動き出します。
物語の大筋は以上のような感じなのですが、タイトルがなぜ「子猫をお願い」なのかについても述べていきたいと思います。
ある日ヘジュの誕生日パーティーが行われました。
そこで一人一人、誕生日プレゼントを渡すのですが、ジヨンのプレゼントが道端で拾った子猫でした。
「子猫をお願い」という言葉の通り、この後この子猫が色んな状況との関わりの中で良い風に言えばバトンパス、悪い風に言えばたらい回しにされていきます。
子猫は無事落ち着くことができるのでしょうか。

設定

・貧困
・実の親の不在(ジヨン)
・韓国の社会問題

感想

序盤30分ぐらいを見終わって、自分の中では「女子高生のときはうまくいっていた5人組が社会人となり一度バラバラになって、それぞれに危機が起こり、もう一度仲がよくなる」という話かなと想定したのですが、少し違いました。
ただ、希望を持てる(少しですが)ラストであることは変わりなかったように思います。
あらすじを書いていて思ったのは、やはりこの映画での重要人物はジヨンかなということです。
彼女には実の親の不在による貧困という問題が大きくのしかかります。
社会に出て学生の時には感じなかった周りとの違いが如実に感じられてきます。
ここらへんはけっこうリアリティがある感じでした。
もちろんジヨン以外の女性にもそれぞれ大なり小なり問題があります。
ある意味たらい回しにされる子猫の行方も通して考えるなら、問題への解答は「助け合い」あるいは「連帯」なのかなと思いました。
家父長制度、貧困、都市と地方の格差、学歴格差、男女格差など様々な問題が描かれた映画だと感じましたし、現在の日本の現状にも通じる部分はかなりあるかとも思いました。

卒業やうふふあははは五人組

その他

ウィキペディアより
→登場人物たちは頻繁に携帯電話のメール機能を使用しているが、演出の技法としてスクリーンの端々に携帯メールの文字が描き出されてゆく。また主人公のテヒがボランティアでタイピングしている口述筆記の文字も同じように描き出される。

『静かな爆弾』内の「子猫をお願い」登場シーン

鍵を開け、一応、「ただいま」と声をかけて部屋へ入った。廊下の先にある居間で、テレビを見ている響子の背中がある。
ビデオ屋で何か借りてきたらしく、ちらっと目に入ったシーンで、それが『子猫をお願い』という韓国映画であることが分かった。
ただ、もちろんテレビからは音が出ていない。部屋の明かりもつき、そこに響子の背中があり、テレビには映画が映っているというのに、ただ、テレビから音が聞こえないというだけで、まるで異空間へ迷い込んでしまったような気がした。

『静かな爆弾』(P.65)


これは俊平が家に帰ってきたときのシーンです。
俊平は週末を響子と過ごすようになっていました。
響子は耳が不自由です。
その響子がいる部屋に帰るときには、耳の不自由な響子を少しビックリさせるかもしれないと思い、気を遣いながら入ってきます。
そこで響子が見ていた映画が「子猫をお願い」でした。
もちろん字幕が出ていれば音がなくてもわかるので他の映画でもそれは同じなのですが、「子猫をお願い」にはその他でも述べたようにメールの文字が画面上にたくさん出てきます。
そういう意味では響子が見ていた必然性があったかもしれません。

吉田修一作品とのつながり

・実の親の不在
・10代後半から20代前半にかけての物語(『横道世之介』)

以上で、「子猫をお願い」については終わります。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:映画ドットコム「子猫をお願い」  

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