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【引用】ランボー『地獄の季節』

今回読んだのは、アルチュール・ランボー(RIMBAUD, Arthur)[1854-1891]『地獄の季節』(小林秀雄訳、岩波書店、岩波文庫、1938年8月、東京)です。

以下、引用した文章になります。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

2024年4月2日 13:56
蒼白い眼と小さな脳味噌と喧嘩の拙さとを、俺は先祖のゴール人たちから承け継いだ。この身なりにしたって、彼らなみの野蛮さだ。(略)。
野獣の皮を剝ぎ、草をき、ゴール人とは当時最も無能な人種であった。

ランボー『地獄の季節』1938: 9

2024年4月2日 13:57
フランスの歴史を探ってみて、何処どこかにこの俺の身元が見つかったならば。
いや、いや、そんなものは無い。
俺はいつも劣等人種だった。解りきった事だ。(略)。俺の人種が立ち上ったのは掠奪の時と決っていた、死肉を漁る狼のように。

ランボー『地獄の季節』1938: 10

2024年4月2日 13:58
科学。新貴族。進歩。世界は進む。なぜ逆戻りはいけないのだろう。
これが大衆の夢である。俺たちの行手は『聖霊』だ。俺の言葉は神託だ、嘘も偽りもない。俺には解っている、ただ、解らせようにも外道の言葉しか知らないのだ、ああ、喋るまい。

ランボー『地獄の季節』1938: 11

2024年4月2日 13:59
邪教の血が戻って来る。『聖霊』は間近にある。なぜキリストは、この魂に高貴と自由とを与えて、俺を助けてはくれないのか。ああ、『福音』は去ったのか。『福音』よ。『福音』。
俺はがつがつして『神』を待っている。いつまで経っても劣等人種だ。

ランボー『地獄の季節』1938: 11

2024年4月2日 14:00
俺はヨーロッパを去る。海風は俺の肺臓を焼くだろう。未開地の天候は俺の肉をなめすだろう。泳いでは草をき、狩しては煙草をふかし、たぎり立つ金属のような火酒をのむ事だ。――焚火を囲んで、あの親しい祖先の人々がしたように。

ランボー『地獄の季節』1938: 11

2024年4月2日 14:01
ああ、何と寄辺もない俺の身か。完成への燃え上る想いの数々を、俺はもうどんな聖像にささげても構わない。
ああ、俺の自己抛棄と見事な愛、だが、下界は下界だ。
深きところより、主よ、俺は阿呆だ。

ランボー『地獄の季節』1938: 13

2024年4月2日 14:02
「牧師や教授や先生方、(略)俺はもともとそういう手合いじゃない。キリストを信じた事はない。刑場で歌を歌っていた人種だ。法律などは解りはしない。良心も持ち合わせてはいやしない。生れたままの人間なのだ。君たちが間違っている、……」

ランボー『地獄の季節』1938: 14

2024年4月2日 14:03
駄言は沢山だ。俺は死人たちを腹の中に埋葬した。叫びだ、太鼓だ、ダンス、ダンス、ダンス、ダンス。白人らは上陸し、俺は、何処どこともしれず堕ちて行く、いつの事か、それすら俺には解らない。
飢え、渇き、叫び、ダンス、ダンス、ダンス、ダンス。

ランボー『地獄の季節』1938: 14

2024年4月2日 14:04
俺は、すべての神秘をあばこう、宗教の神秘を、自然の神秘を、死を、出生を、未来を、過去を、世の創成を、虚無を。幻は俺の掌中にある。
聞き給え……
俺はどんな能力でも持っている。

ランボー『地獄の季節』1938: 20

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