見出し画像

なるべく動物園【毎週ショートショートnote】

「なるべく動物園がいいわ」

「次のデート、どこに行きたい?」
という僕の問いかけに彼女はそう答えた。

彼女と知り合ったのは3ヶ月前。


僕がひとりで山中をハイキングをしていると1羽のツルが罠にかかって、もがいていた。

僕はツルを助けて、手当てをしてやった。

ツルは少し足を引きずりながら、まるで僕にお礼を言っているような目つきで飛んで行った。

それから2時間ほどして、彼女と出会った。

彼女もひとりでハイキングに来ていたが道に迷ってしまったらしい。

僕たちは一緒に山を下りた。
その後、僕たちは付き合うようになった。





僕たちは、動物園のツルの檻の前にいた。


突然、彼女が目に涙を浮かべながら言った。



「お母さんが病気で、手術代が200万円必要なの」



僕の頭の中を彼女と出会ってから今日までのことが走馬灯のように蘇った。


そしてあの時助けたツルの姿を思い浮かべた。


僕はツルの隣りの檻の中にいる鳥を見た。

僕が助けたと思っていたのはツルではなくサギだった。


410文字


たらはかにさんの企画に参加させていただきます。

この記事が参加している募集

ほろ酔い文学

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?