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「人を殺す」ということ

 学校までの登校時間、ふと頭の中に「人を殺す」ことについて考えてしまった。なぜ人を殺してはいけないのか、という話。倫理的に人を殺すことは良くないと理解しているし、殺そうとも思ったことはない。単純に「人を殺す」ってどういうことのなのだろうかと考えてしまっただけである。

 多分、最近触れていた作品の中で「人を殺す」ことに対する台詞が出てきたからだと思う。それに合わせて好きな作品たちの中で語られるそれぞれの「人を殺す」ことが頭の中で駆け回ったからこんなこと考えたのだろう。あるいは、森監督の『福田村事件』のことを思い出したからかもしれない。

 考えたというが、実際はそれぞれの作品の意見を羅列したに過ぎない。この作品ではこう語られていたな、こっちではこんなこと言っていたな、くらいである。
 自分の意見はいつもと変わらず、倫理的に「人を殺す」ことはいけない事で、やりたくない事である。人から流れる血は怖いし、肉を斬る感触は想像するだけでも恐ろしい。食肉を切る感覚とは異なる誰かを物理的に傷つける行為はやりたくない事である。

 思い出した作品は3つ。
 1つは『ミステリということ勿れ』。この作品を思い出して、「人を殺す」とはと考えてしまった。数週間前に映画を観に行って、そこから公式Youtubeのドラマのダイジェスト版を観た。ドラマは視聴していない状態で映画を観に行ったのである。原作は6巻だけ読んだ。旅行先のホテルにあったのが6巻からだったので、それだけ読んだのである。
 で、整くんが「なぜ人を殺しちゃいけないのか」という問いに対する答えが示されている台詞がある。

「なぜ人を殺しちゃいけないのか。いけないってことはないんですよ。別に法律で決まってることでもないですし。人を殺しちゃいけないって法はないです。罰則はありますが。

秩序ある平和で安定した社会を作るために便宜上そうなっているだけ。でも戦時下になれば人を殺してもOKだし、たくさん殺したほうが褒められる。そんな二枚舌で語られるような適当な話。

自国では殺しちゃダメでも他国には空爆OKの人たちもいる。だからそういう所に行けばいい。
そういう所ではあなたもサクっと殺される。ここで殺されないでいるのは、ここにいるのが秩序を重んじる側の人間だから。

自分は殺されたくない、自分だけは殺す側にいたいというなら、それは人より優位にいたいという、ただのコンプレックスの裏返し」

田中由美『ミステリと言うこと勿れ』

 女性向け漫画はこういう考えさせる台詞が多いなと思ってしまった。というより、少女漫画止まりの私が知らないだけなのかもしれないが。男性向け漫画にはないやわらかさとじんわりとした温かさがある気がする。
 なお、この話で捕まった人のサイコパスさには驚いた。純粋な素直さというか、理解できないサイコキラーってこんな人たちなのかな?と。悪いことを悪いと思っていない倫理観が欠如したキャラクターにはどこか魅力を感じてしまう。良い意味ではなく、理解できない魅力として。

 2つ目が『キノの旅』。リメイク版アニメの1話『人を殺すことができる国』の話。もう10年近く前になると知って、とてつもなく驚いている。
 主人公:キノが相棒のエルメス(モトラド)と共に様々な国を旅する話。

 1話の舞台はタイトルの通り「人を殺すことができる国」だった。ある人物に殺されそうになったキノ。それをみていた国民がキノを殺そうとした人物を殺してしまうのである。

「この国ではね、人を殺すという行為は許されていないんだよ」

時雨沢恵一『キノの旅』

 「法律で禁止されていない=許されている」わけではない、という話。これを初めて見た時に衝撃とストンと何か納得したような気持ちになった。このことがきっかけでアニメを全話視聴し、原作もちょこちょこ買い始めたのである。アニメの演出もちょっと怖くて面白かった。

 3つ目が『空の境界』。奈須きのこの小説で、夏休みに同人版がブックオフに売られていて即買いしたのが最近の嬉しかったことである。原作しか読んでなかったけど、映画も少しだけ見た。6章の鮮花可愛いという頭の悪い感想しか出てこなかったけど。

「人は一生に一人分の死しか背負えない」

奈須きのこ『空の境界』

 主人公:式の祖父が彼女に残した言葉である。そして、この一人分というのが自分自身であるという話。残っている言葉やシーンはたくさんあるのだが、この言葉もその一つである。自殺の正しさの話も印象的だった。

 またこんなことをぐるぐる考えながら登校していたのだが、講義の合間、このことが頭から離れなかったのでインターネットで検索してみた。哲学者の意見とかで「人を殺す」ことに対して考えている偉人がいるだろうと思って。昔から議論され、答えは出ない難題として扱われていてもおかしくない。
 哲学に明るくないし、難しいだろうからと常に避けてきたけれど、最近ちょっとだけ興味が沸いてきた。いつか知り合いが「授業の時に哲学使うわ」という言葉が残っているからかもしれない。高校生の授業で哲学使うって、多分考え方の話なんだろうけれど、相変わらずすごい人である。

 調べたら普通に出てきた。その中で面白そうな書籍があった。哲学者たちの思想を戦わせるという内容らしい。辛口レビューのアマゾンさんのコメントから、現代版にアレンジも加えられているらしく普通に面白そうだった。入門書くらいの軽い気持ちで買ってもよいかもなぁと思ってしまった。哲学初心者に優しくしてほしい。

 そういえば、成人式で会った中学時代の友人が哲学を学んでいると話していた。すごいな、と思うと同時に高校時代にお世話になった現国の先生が「哲学選ぶ人はやばい人(誉め言葉)」と話していたことも思い出した。頭のいい人なので、哲学楽しんでいるんだろう。

 すぐにポチることはしなかった。ちょっと考えてからにしてほしい、と保留にした2日後の昨日。別の本と一緒にポチられている。届くのは2、3日後らしいので、それまでに今読んでいる本を読み終わらないとなぁ。読み終わるまでに100ページをきった新書を観ながらパソコンに向かうのであった。

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