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【映画】ゴジラ-1.0

戦後日本、日本。「無」から「負」へ。

あまり期待せずに観たのですが、なかなか楽しめる映画でした。

なんとなくですが「シン・ゴジラ」と対比のようなイメージがあります。「シン・ゴジラ」は現代で対ゴジラ戦は官邸主導、この「ゴジラ-1.0」は終戦時で民間主導。

ゴジラの劇場第1作目が1954年ですので、本作の方がオリジナルの世界観に近いのかもしれません。私が常々思っていたのが「現代の兵器や科学力なら、ゴジラ現れてもなんとかなるんじゃね?」でした。まあ、都市部で撃沈させても放射線被害はありそうですが…。んでも、1945年前後って、日本も「金もない、技術もない、疲弊した時代」ですから、戦えるポテンシャル、リソースがそもそも確保できるのかってとこがきついですよね。

終戦の時期なので「特攻隊」の話題に触れられています。ここは複雑な気持ちで鑑賞していたんですが、最終的に納得いく形に着地しました。

物語

特攻隊の敷島浩一(神木隆之介きゅん)はとある島で巨大怪獣に遭遇します。ゴジラと呼ばれるその怪獣に味方はほぼ全滅、からくも生き残った彼は日本へ帰還します。

が、東京は焼け野原と化し、両親は亡くなっていました。極貧の中で逞しく戦後の日本を生き抜く人々。そんな中、浩一は子連れの女性の大石典子(浜辺美波)に出会います。生活も厳しい中で彼は機雷除去の仕事にありつき、船で洋上で仕事をする毎日。少しずつ生活も安定してきた中、再びゴジラが海に現れます。ゴジラは東京に上陸、典子は銀座でゴジラの巻き起こす破壊の被害で吹っ飛ばされて行方不明になってしまいます。

日本を立て直そうとする人々を脅かすようなゴジラ、GHQの占領などで国も身動きが取れない。そのため、民間主導でゴジラ掃討作戦が開始されます。

考察:戦後

終戦から今年で78年。団塊世代の方が戦後のベビーブームなので、今の日本には「戦争経験者」はもう数が少なくなっています。戦後の復興期も、団塊世代でさえ幼少期です。が、なかなかこれリアルだったなぁ。CGや特撮などの技術が発達すればするほど、逆説的だけどリアルな昔を表現できるのかもしれませんね。

ここ、主人公の成長と戦後の街並みや復興が綺麗に比例して見違えていくんです。東京大空襲後のぼろぼろの廃墟みたいな家が立ち並んでいた街並みが、綺麗に頑丈に立派になっていく。主人公も典子も、身なりがどんどん整っていく。さあ、これからだって時にゴジラが現れるんです。

民衆は「また街が破壊されるのか」という絶望感を抱く。この時にようやくタイトルの意味が分かりました。戦中がマイナス、終戦をゼロで、それを1にして2にして3にしようとしてた矢先の災厄。ここ、うまいなぁ。

考察:俳優陣

神木きゅんは何やらせてもうまいから割愛(雑でごめんw)

浜辺美波は最初誰か分からなかったんですよね。終戦のぼろぼろの身なりで登場するので。普段はあんなに現代風の女の子なのに、きっちり昭和感を出していました。メイクと服装もそうだけど、まとう雰囲気がちゃんと昭和だった。私、浜辺美波あんまり知らないんですけど、ちゃんとハマってたよ。

あと学者役の吉岡秀隆。「北の国から」観てましたから、少年期の彼も知っているのですが、もう白髪の役がぴったりな世代になったのかと。私は彼の演技は「作品を選ぶ」と思ってます。マイルドな役柄が多いけど、癖がある役柄の方が実は合ってるんじゃないかなぁと思ってました。「シン・ゴジラ」だとマッチしなかったかもなぁ。でも、この「ゴジラ-1.0」には馴染んでました。

考察:特攻隊

映画の最中でずっと気になっていたのが「特攻隊の描かれ方」です。※ここからは私見で異論反論はあるかもしれません。

以前、知覧の特攻隊記念館に行ったことがありますが、手紙の数々を読んでいたら、なんとも複雑な気持ちになりました。勇ましい言葉、覚悟を決めた言葉は、もしかしたら自分を鼓舞するためのもので、実際は泣き出したり逃げ出したりしたかった方もいたと思うのです。

特攻隊の隊員には最大限のリスペクトを抱いています。まだ20歳前後の若者が「生きて帰れない」覚悟を胸に国のために飛んでいった。普通に生きていたかっただろうし、親兄弟や恋人に会いたかったに違いありません。

特攻隊の隊員の方の魂は崇高で、現代の日本に生きる私には計り知れない勇気と愛国心があったと思います。だからこそ「特攻隊という戦術を選ぶに至った軍部」は賛美してはいけないと思っています。

この映画で特攻隊の生き残りの主人公がどう描かれるのかはずっと気になっていましたが、私はこの結末に満足しています。主人公は「死ぬべき時に死ねなかった」と罪の意識を持っている訳で、どこかその埋め合わせをしたいと負い目をもって生きている。だから、彼がどう描かれるか気になって仕方なかったです。

結果、命の尊厳を失う事無く、ちゃんと描き切ったなぁと。

最後に

初代ゴジラを意識している感ありありですし、終盤にあのBGMが流れるのも胸熱です。やっぱあの音楽だよね。

迫力もあるし、FXもふんだんに使われてゴジラ大暴れなんですけど、観終えた時に残っているのは「ヒューマンドラマ」でした。派手なモンスター映画を想定していったので、いい意味で裏切られました。

よろしければ是非。面白いですよ。

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