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ある舞台を作った時の事から・・・

数年前になりますが、舞台の脚本と演出をやった時のお話を・・・
中国でとても有名な家具の会社があります。梵幾(ファンジー/簡体字では「梵几」と表記)という名前なのですが、シンプルだけどアジア的で、落ち着いた雰囲気がとても好きで私も北京在住の時には使わせてもらっていました。そこのデザイナー兼オーナーの高古奇(ガオ・グッチw/本当にグッチから取った名前の様ですwww)と仲良くなり、彼が北京の芸術区である798のあるギャラリーで個展をやると相談を受けました。家具の展示なので、単純に家具を並べるだけになってしまうのが嫌で、何か一緒にやってもらえないかという事でした。
ウェブサイトはこちらから https://fnji.com/ 

最初は映像を流してみる?なんてアイディアを出していたのですが、ふと、舞台にしたらどうだろうと思いつきました。
彼らの家具を見るたびに、ずっと使いたい、自分が買う事で子供や孫にも使ってもらえるのではないかと思っていたので、家族が紡ぎ出す物語を描きたいと思いました。
彼らもブランドのコンセプトと合うので是非そうしようと言ってくれ、プロジェクトがスタート。
家族というより一族の物語にしようと思い、彼ら自身にこれまでの人生で転機となった事や思い出深い事を書いてもらい6つのストーリーにまとめました。
この6つのストーリーは普遍性があり、きっとどの世代でも起こりうる事だった事から、アクティングスペースを6つにする事を思いつき、アクティングスペースが観客を囲むという構想を思いつきました。
一つのスペースから話はスタートするものの、時代や地域性は極力省き、そのストーリーで語られる会話が次々と別のスペースへ派生していく様演出をつけました。観客は360度どこを見てもよく、どこを見ていてもストーリーがつながっていく様なイメージで。

公演まではスタッフが積極的に手伝いをしてくれ、稽古もスムーズに進みました。リハーサルから本番までは、彼らは全く想像がつかないと言っていました。稽古中は本番とは違って狭い場所でやっていたので、私が6つのストーリーが同時に進んで・・・と言ってもイメージが湧かなかったようでした。

右の女の子はその後上海に移動、歌がとても上手だったのでジャズシンガーをしたり、ステージで活躍しています。


ギャラリーでのリハーサルに入り、すでに設置が済んだ舞台を見て、高古奇本人すら驚いていた事を思い出します。これは、日本人照明家の早川綾子さんが舞台の設置や美術、照明等を担当してくれた事がとても大きかったと思います。
高古奇もアイディアが豊富な人なので、ステージの様子を見て、観客が座れる様に段ボール製の腰掛けを大量に用意してくれました。


本番

本番では、観客があちこち顔を動かしながら、どこに話が繋がっていくのか考え、笑い、最後は残されていく家具たちを静かに見つめていました。早川さんのライトがふっと消えた瞬間、静けさから徐々に拍手の音が聞こえて来て、伝わったのかなとホッとしました。

今日は何が言いたくて、昔の話を書こうと思ったのかというと・・・

こんな事を書くべきではないのかも知れないけど、感覚の合う人たちを探す事がとても大変、だけど大切なのだという事です。
高古奇がやってのけた事は、単純にかっこいい家具を作り出すという事だけではなく、企業文化を作り出しているという事だと思います。最初は数人で始めた会社が、今ではここで働きたいと会社や彼の作る家具の美しさに打たれて入社を希望する人が増えて来ている事がそれを証明しています。
これまでずっと一人でやって来た私には出来ない事です。
日本や中国を一人で動いていると、なかなか楽です。でも、一人では出来ない事が多すぎる事も肌で感じます。一人でいると、毎回違う人たちと仕事をする事に慣れてしまうのですが、感覚が合えば良いけどそうでない時はコミュニケーションから時間を費やす事になるなと・・・時々感じるのです。

ここしばらく、私はエネルギーをなるべく外に出さないようにしていたのですが、どうやらどうやらどうやら、自分で動くしかないのだろうと思う様になってきました。
人探し。
仲間探し。
高古奇の様になれたらいいな。

右が梵幾のデザイナー兼オーナー高古奇/左はカメラマンとして活躍する凹老師


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