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小笠原一人旅【旅行記:2日目/後編】

【2日目 後編: 海へ】

前編はこちら

① 宮之浜と製氷海岸

いよいよ海へ繰り出す。

水着に着替え、自前のシュノーケルセットを原付に積んで、まずは宮之浜へ。
街から原付で5分くらいの場所にあって、非常にアクセスの良い海岸だ。

ちなみに一部の方の夢を壊してしまったら申し訳ありませぬが、一人シュノーケル時の私の水着姿、だっせえです。
日焼け予防と目立つこと(海難事故防止)が優先なので、上は鮮やかな水色のラッシュガード、下はロングパンツ型水着。
しかも、潜る時に首元焼けたくないからフードもかぶる。

浅瀬でマスククリアの練習をしているツアー団体を横目に、もんぺ履いたドラえもんみたいな格好でさっそく海へ。

「うんうん、私にもあんな頃があったな〜」

年長さんが年少さんを「赤ちゃんかわいいねぇ」とにこにこしながら見ている様子を想像いただきたい。
だいたいそんな感じである。

太陽はそんなに出てないけど、水に顔をつけた瞬間、戦慄。

海、きっれ〜!!!
透明度たかっ!
少なくとも20mはあるで〜〜!!

よーっし、これは熱帯魚たくさん見られそうだぞう〜

…………🐠

開始5分でサメに遭遇。

まじか〜〜

そこそこの大きさで、1.5mくらいと推測。
ただし高い透明度のおかげで早めに発見できたので、思ったより相手との距離はありそうだ。

海では、パニックを起こしたら終わりだ。
下手したらサメに喰われる前に溺れて死ぬ。

私は一般的な危険生物は一通り頭に入れているものの、幸か不幸か、小笠原のサメに詳しいわけではない。

サメと言ったらジョーズのイメージが強い人も多いかもしれないけれども、世の中にはこちらがいらんことしない限り無害なサメもいっぱいいる。

目の前にいるこのサメはきっと無害な方のサメに違いない。

……だってなんかほら、なんとなーくおだやかそうな目ぇしてはるやん? 

な、そう思ったらそう見えへんこともないやろ。

まあ、もしなんかの間違いで襲って来たら鼻頭ぐーぱんするしかないけどな。

そんなことを考えながら、ひとまずじっと観察してやり過ごす。
もし慌ててばたついたら、フィンの泡を小魚と間違えて寄ってくるかもしれない。

サメは特に私に興味を示すこともなく、どこかへ優雅に泳ぎ去っていった。

(ちなみに後で調べたら「ネムリブカ」というこの地域ではよくみられる比較的大人しい鮫だった)

※宮之浜は、風向きがよければ波が穏やかで熱帯魚もたくさんいるので、シュノーケリング初心者にも超おすすめのスポットです。

結局宮之浜に2時間ほど滞在したあと、枝珊瑚で有名な製氷海岸へ移動する。
関係ないけど製氷海岸ってものすごい水冷たそうな名前じゃないですか。

入る前に海岸から状態を見た感じ、なんか波がちょっと荒めだし、全然人がいないじゃないの。
これは個人的アラート3だな。

説明しよう。
このアラートというのは、これまでの経験から私が勝手に6段階で定めているものである。

0 風向きよし。波おだやか。人が複数いる。
  (♪波の音:  さわ~) 

1 風向きよし。波おだやか。自分の他に誰もいない。
  (♪ さわ~)

2 風が岸に向かって吹いている。中弱の波がある。自分の他にも誰かがいる。
  (♪ ざぱん しゅるるるる ざぱん)

3 風が岸に向かって吹いている。中弱の波がある。自分の他に誰もいない。
  (♪ ざぱん しゅるるるる ざぱん)

4 中強の波がある。
  (♪ ざっぱん ざざざ ざっぱん) 

5 波が明らかに高い。
  (♪ ざっぱーん! ごごごごごごご ざっぱーん!)

ちなみに海水浴や波乗りする人の基準ではなく、あくまで一人シュノーケルするには、という前提である。
サーフィン目的なら5でも超弱い。

そんなわけで、このアラートで4を超えたら、どんなに綺麗そうな海でもレアな体験が出来そうでも私は絶対に入らないと決めている。

よい子のみんなもいのちだいじにな!

話は戻り、現在の製氷海岸はアラート3。
いつもなら無理はしないけれど、ハンマーヘッドシャークが見られるかもしれないという海、一度は入っておきたい。
迷ったあげく、シュノーケル用の浮き輪を膨らませてがっしり掴んで入ることにした。

初めて入る場所なので確実なことは言えないけれども、風向きのせいか、今日はあまり海中のコンディションがよくないようだ。
流れは速くないものの、砂が巻き上げられて、視界は10mもあればいいところ、といった状況である。

それでも、エントリーしてすぐに、一面に枝珊瑚の光景が広がる。
こんなに見事なのは今まで見たことがない。
まるで森のようだ。
その周りを、ロクセンスズメダイの大群が泳いでいる。

竜宮城があったら、たぶん入り口こんな感じ。

そのとき、視界の隅からミズクラゲがふわふわふわーっとあらわれた。
続いて別の方向からも!
小笠原にもミズクラゲが生息しているのか……完全に油断していた。

クラゲは、人生波まかせのさすらいの民である。
クラゲ先輩に悪気はなくても、足首なんかをうっかり刺されたりしないか、位置を確認しながらそそくさとその場を離れる。
クラゲぐらいでいちいちビビるなよ、と思われるかもしれないけれど、万が一ここで刺されでもしたら、このあとの旅の不快指数が格段に上がってしまうじゃないの。

今日はなんか、この海岸たぶんよくない。
そう思って一時間弱で早々に切り上げる。
誰と戦っているわけでもないので、無理に留まる必要はないのだ。
また明後日にでも再チャレンジしてみることにしよう。

※製氷海岸は、枝珊瑚が圧倒的で、実にすばらしい。
枝珊瑚は主に海洋センターの側と、赤灯台に向かうテトラポット周辺でシュノーケルすると見られる。
ちなみに珊瑚は1〜10cm成長するのに1年かかると言われているので、誤って踏んでぽきっと折ってしまわないようにくれぐれも注意して楽しんでくださいな。


② 迷子

製氷海岸を出て、風向き的にどっかいいとこないかな~とパンフを見ていると、なんだか近くに「釣浜」とかいうよさげな場所があるじゃないの。
グーグルマップ先生を頼りに、原付で向かう。

1分ほとで到着。
え、ぜったいここじゃないやろ……めちゃめちゃ陸やん。
ていうか公園?
そもそも海と反対の方向むいとるやないか。

グーグル先生はたまに嘘をつくので、パンフレットとGマップを交互に見比べながら再びバイクを走らせること5分。

よくわからない駐車場に到着。

どこやねんここ。
ひとりツッコミして思わず笑ってしまう。
絶対に海でもその近くでもないことくらいしか分からない。
お手上げだ。

と、そこへ救世主となる軽バンが到着。
観光客の多い父島ではあるが、私の野生の勘では、この車に乗っているのは間違いなく現地の方だ!

「あの、すみません、釣浜まで行きたいんですけど、迷っちゃって」

《藤原は、必殺〈子猫のような表情〉を繰り出した!》

親切なおじいさん「今日船で来たの? 釣浜はね、この道を行ってに曲がるでしょ。それで坂を上がっていくとね、今度は右に降りる道があるのよ。急だから原付は置いて歩いて行かないとだめだよ」

なんとなくわかった藤原「なるほど、この道を行って最初の角をに曲がってずっと坂道を上がって、バイクを駐めて歩いて右に道を下る、ですね!」

心配症なおじいさん「そうそう、にいくとね、こうぐるっとこの山の反対側に出るのよ。高校の横を上がっていくの」

いける気がしてきた藤原「わかりました、ありがとうございます!」

優しいおじいさん「うん、気をつけてね。私はね、この島で生まれてね、もう87歳なの」

驚く藤原「はえ~若い!」(本当にもっとずっと若く見えた)

ヤングなおじいさん「ふふ。じゃあ、気をつけてね」


《藤原は意気揚々と出発した》


《藤原は最初の曲がり角を右折した》


は? 
左じゃね?

と、みなさん思われたでしょう。
実は私、どのつく方向音痴なのです。

方向音痴じゃない人には理解できないでしょうが、我々が迷うのにはちゃんと理由があるのです。

その1 謎の勘に頼る

(おっ、さっそくおじいさんの言ってた曲がり角だぞ。確か、左とおっしゃっていたな……ん? 左は下る道だぞ? さてはおじいさん、右と左間違えちゃったな~? 仕方ない、ここはなんか上っていきそうな右で!)

その2 地図の全体像が全く頭に入っていない

(ふんふん♪ ぐんぐん上がってくぞ~
 あれ、でも高校ないな? 見落とした?
 いやちょっとさすがに上りすぎじゃない?
 えちょ、グーグルマップの現在位置おかしい!
 どんどん釣浜から離れてってるし、絶対間違えてる!)

その後、最初の曲がり角まで引き返し、おじいさんの言うとおり左折方向に行ってみたら、少し下ったあとすぐに上り坂になっておりました。
ちゃんと高校もありました。

おじいちゃん、「どうせ左右間違えたんだろ、草」とか思って本当にごめんね。

「釣浜」と書かれた駐車場もございましたので、そこにバイクを駐めて、まあまあ歩きにくい遊歩道を下りました。

③ 釣浜の出会い

ぬかるんだ道無き道を、恐れながら歩き続けること15分。ようやく浜へ到着。
途中、波の音が聞こえ始めた時には心底ほっとした。

誰もいない……
そりゃ平日の昼間(しかも入港初日)にあんな道わざわざ降りてくる人なんてめったにいないでしょうね。
波は超おだやかで無風、ただし一人きりなのでアラート1。
しかも、ここは沖に行くと潮流がとても早くなって危険なので、ブイのかなり手前で気をつけて潜ろうと決意。

干潮時刻に近いのか、珊瑚が浅瀬に飛び出ていてエントリーが非常に難しい。
上級者向けの浜と書いてあったけど、そういう意味でも上級者向けだと思った。

頑張ってよさげなところでフィンをつけてシュノーケルを開始すると、眼下に奄美大島で見たような美しい珊瑚礁が広がっていた。

正直、宮之浜や製氷海岸よりこっちの方が断然私は好き。
いろんな種類の熱帯魚がたくさんいるし、珊瑚もさまざま。

しかもなんとここで、早々にウミガメに遭遇。
ウミガメは臆病だから、追いかけると逃げちゃうので、そっと邪魔にならないようになんとなーく近づく。

逃げない。
かわいい。

なぜか普段から私は海の生きものに逃げられないどころか、ぶつかられることがよくある。
亀とか魚とか。
マンタツアーじゃないダイビングのとき、頭上を3匹の大きなマンタにぐるぐる回られたこともある。
存在感のなさやばくな〜い?(涙目)
いや、違うな。
私、もしかして魚なのかも。

そうだ、せっかくだから写真を撮ろうと思って、いったん岸に上がりスマホを持って再度エントリー。
防水だから大丈夫だろう、たぶん。
知らんけど。

さすがにもうウミガメはいないだろうなーと思ってのんびり魚を撮影していると、さっきの子とは別のウミガメを発見。
なぜ違いがわかるかというと、2回目の子のは甲羅のさきっちょの色が白っぽく褪せていたから。
大きさ的に、たぶんまだ2匹とも大人じゃない。

かわいい・・・・・・

途中でちょっと、昼に食べた亀のユッケのことが頭をよぎったけれど、気にしない。

ぷるぷるぷる。。

この子も逃げないので、しばらく一緒に泳ぎながらじゅうぶんに動画を撮らせていただいた。
たまにガイドに餌付けされている亀もいるけれど、ここは普段からウミガメツアーとかをやっている場所ではないので、どうやらたまたま天然の子たちを発見できたようだ。

しかも2匹も。
ラッキーすぎる。

釣浜の魅力に引き寄せられて、3時間近く滞在していた気がする。
時計を見ると17時半。
満足したしそろそろ帰ろう。

駐車場への道、行きに下った分だけ帰りは当然急な上り坂である。
でも降りるときより上るときの方が心理的な恐怖は少ない。
試しにApple Watchで時間を計りながら駆け上がると、8分だった。
そんなに息が上がっていないのは、ひょっとしたら日頃のランニングの成果かもしれない。

ちなみに今日行った3つの海岸には、シャワーとかそんな文明の利器みたいなもんはない。
なんなら製氷海岸と釣浜にはトイレすらない。(離島ではそれが当たり前)
宿に着いて、早速シャワーを浴びる。
塩分が洗い流される感覚がじわじわあって、気持ちいい~
ふぁあああ真水、気持ちええ〜〜
私やっぱり海水魚じゃなくて人間だったかも〜〜〜


今日は3つもビーチを巡って、大変に充実した一日だったな~と振り返る。

どんだけ民宿がボロくて、シーツに飛び散った血の痕がいっぱいついていても、共同トイレの鍵が閉まらなくて左手でドアノブを教えながらアホみたいな格好で入るしかなくても、そんなコトキニシナイ。

明日もよい一日になるといいな。

【2日目 終わり】


※この記事を見て一人シュノーケルを検討している方への注意※

大事なことを言い忘れていたけれど、海へは基本一人で入らない方がいい。

あぶないもん。

溺れても誰も助けてくれないし、一人旅だと気付かれないまま消息不明になる可能性だってある。
海に入るときは二人以上がいいし、シュノーケルに慣れていないのなら絶対しない方がいい。

私もいつもは旅先のドミトリーで仲良くなった、同じく一人旅の人たちと一緒に行くことが多い。
それでも今回みたいに誰もいなくてしょうがない時は下記参照。

<私が気をつけていることなど>
❶現地の海の危険生物をあらかじめ調べておく

❷潜りたい場所の潮の流れや危険な場所、その日の風向きを知っておく
 (パンフレットやネットを見る、地元の人に聞く、ビーチの看板で確認など)

❸シュノーケル用の浮き(紐付き)を持って入る

❹ビーチに人がいるときは、なるべく話しかけて存在をアピールする

❺厳しめの基準(アラート)を設けて、怖いなと思えば入らない

ちなみに❷については、パンフに書いていなくても地元の人に聞くと恐ろしい話が出てくることもある。

「海が綺麗で亀がたくさん見られるシュノーケルスポットって紹介されてる『亀の子ビーチ』はね、急に潮の流れが変わって溺れ死ぬ人が多かったから昔は「神の子ビーチ」って呼ばれてたんだよ。それがなまって亀の子ビーチになったんだね・・・・・・」

これは小笠原の話ではないけれど、まじでこわい。

あと、私はダイビングのライセンスを持っていてそれなりに本数を潜っているし、シュノーケルツアーや複数人でのシュノーケルを何度も経験している。
その上で、自分が下手くそであることを自覚していて、決して無理をしない。
これらが大前提であって、一人シュノーケルを奨励しているわけではないのだ。

以上、よろしくお願いします!

3日目はこちら
https://note.com/lily1927/n/nd37968093c06

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