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退屈を甘く見ちゃダメ【心理学】

今週もよく働いた。やっと土日だ。
今日は金曜日だし、お酒を飲みながら映画でも観よう。

映画を観終わって、スマホをいじっていたら午前2時。
まあいい、明日は予定のない土曜日だ。
スマホを片手に、寝落ちする。

アラームのスヌーズをいつの間にか切ってしまったようだ。
もう昼の11時か。
お腹が空いたな。
スーパーへ行って、昼飯とついでに夕飯を買ってこよう。

昼食を済まし、スマホをいじっていたら日が傾いてきた。
レースのカーテンの隙間から差し込む西日の主張が強くなる。

そういえばこのスーツ、クリーニングに出そうと思っていたんだ。
最後に掃除機かけたのいつだっけ。トイレのフチは黒ずんできた。

やるべきことは沢山あるけど、求めてるのはこれじゃないんだよな。

でも何かがしたい。せっかくの休日が終わってしまう。
手持ち無沙汰になりスマホに手が伸びる。
ひとしきりSNSのチェックや動画の視聴に勤しんだら、お腹が空いてきた。


「あ〜退屈だなあ…」



と、入社2年目のたかし君は、ベッドに横になりながらボソッとつぶやきました。
そしてこの日の就寝前、こう思うのでしょう。「一日無駄にしちゃったなあ」と。

誰でも経験したことのある「退屈」って、何なのでしょうか。

今回も、ある本を参考に、手がかりを見つけていこうと思います。

参考書籍の紹介

ジェームズ・ダンカート氏、ジョン・D・イーストウッド氏著、一川誠氏監訳、神月謙一氏訳「退屈の心理学 人生を好転させる退屈学」株式会社ニュートンプレス(2021)です。

そして、以下は退屈な状態を言葉で説明した一文です。

 退屈に襲われるのは、何かをしたいのに、その場で与えられた選択肢にやりたいことが一つもなく、前向きになれないときだ。無気力とか無関心と呼んでもいいだろう。あるいは逆に「じっとしていられない」感じを指すこともある。何かしたくてうずうずしているのに、どうすればその欲求が満たされるのかわからない状態だ。
退屈の心理学 人生を好転させる退屈学 p.8

むずむず、ソワソワして、何かしようと家の中を歩き回ったりするようなこの感じは、誰にでも経験があると思います。

大昔から人類は退屈を感じていたのにも関わらず、退屈に関する研究が始まったのは最近のことのようです。
心理学者や精神分析学者など、様々な人たちが退屈を定義しようとしました。

そしてあらゆる集団で共通する定義はこうです。
「退屈とは、満足を得られる活動に没頭したいのに、それができないときに生じる不快感である」

退屈を分析してみる

それでは、何が退屈をもたらすのでしょうか。

本書によると、「単調さ」「目的のない活動」「制約」「スキルと作業との適合」この4つが要因になっているそうです。
これだけではよくわからないので、たかし君に当てはめてみます。


僕は入社2年目であるが、今年は新入社員がいない。
つまりあと1年は下っ端だ。

仕事はいつも雑用ばかり。
先週なんか、機械のようにずっと書類の仕分けをしていた。

「新人の通る道だ」とか言うけれど、これが何に役立つんだ。

自分なりに仕分けてたら、
「マニュアル通りやれ!」と怒られる。
絶対僕のやり方のほうが効率良いのにな。

こんな作業は機械がやればいい。
僕はこんな作業がしたくてこの会社に入ったわけじゃないのに!


このような毎日の繰り返しで、たかし君は仕事中も帰宅後も退屈を感じているのですね。

加えてこちらも説明しておきます。
以下の2つの条件が揃った時に、退屈を感じるのだそうです。

1.何かをしたいが、何もしたくないという欲求が生じる
2.精神的能力やスキル、才能が使われないことによる心の空虚化に陥る

そして、退屈という不快感から逃れるために、穴埋めとなるものを探します。
眠ってみたり、インターネットに逃げ込んだり、朝から何回目になるかわからないゲームアプリをやってみたり…。

退屈の不快感に答えるのが、「何かに没頭すること」なのですが、没頭は見つけるというよりも起こることなので、結局は振り出しに戻ってしまいます。

余計なお世話と思えばそれまで

ここまで退屈を分析してみましたが、正直なところ、
「それで?」
と、思ってしまいませんか?笑

例えば、
ついゲームに夢中になって夜更かしをすると、翌日の自分のパフォーマンスは下がります。
TVで家系ラーメンが特集されていたら、お腹の肉が気になってきていてもつい食べてしまいます。

そのことに口を挟まれたらどう思いますか?
「次の日仕事なら、ゲームなんてしないで早く寝なよ。」
「ダイエットしてるって言ってたのに、なんでラーメン食べたの?」

「分かってるよ!」と腹を立てるでしょう。

「よくないことだろう」と薄々気づいていても、その時自分がやりたかったことですし、即座に起こる被害はほとんどないからです。


それと一緒で、たかし君に「退屈ってね、ペラペラ…」と説明したところで、
「そんなの当然じゃないか!自分が1番分かっている!」
と、腹を立てて怒鳴ってくるでしょう。

今の生活に苦労はしていないし、別に変えようとも思わない。このまま安定して毎日を過ごせばいいや。
と多くの人は考えていることでしょう。


しかし、退屈を問題視してもいいと思います。

退屈傾向は、10代をピークに徐々に下がり、70代で再び上昇します。
一般的に、10代と70代はいくらでも時間があり使い道がないからです。

10代の非行や危険な性行為、早過ぎる妊娠などは、退屈が原因の一つです。
老後、ソファに座り、すること無くぼーっとテレビを眺めて過ごしたいですか?

退屈を解消するために

退屈の反対概念として考えられるのは、
喜び、興奮、興味、好奇心、リラクゼーションなどが挙げられます。

そのような気持ちになると、心が満たされ「このまま続けていたい!」と思いますよね。
それが没頭するということです。

没頭している状態をあえて言葉で説明すると、例外はありますが、
「明確な目標に向かって、集中している。時間を忘れて取り組むが、疲労を感じさせない」状態です。


僕は昔から絵を描くことが好きだ。
久しぶりにタブレットで絵を描いてみようか。

土曜日を無駄に過ごしたことを少々後悔している。
日曜日の今日は流石に何かしようと、重い腰を上げてみた。

おお!今はこんな機能がついたのか!
どれどれ。これも、あれも、試したい。

気がつけば、日が落ちていた。
うわ!もうこんな時間だ!

今日はここまででやめておこう。
明日は仕事帰りに、図案の本を買って、あれも必要かな…


たかし君は、絵を描くことに没頭しはじめました。
自分の世界に入り込み、心が満たされます。

しかし、たかし君のすぐそばで没頭の天敵が身を潜ませています。

それは、スマートフォンです。

スマホは依存性が高く、すぐに効果が得られる手軽な気晴らしを一時的に提供してくれます。
SNSや動画視聴は見ている間は退屈を遠ざけますが、終われば役に立たなくなります。

いわば、薄っぺらな没頭まやかしの没頭であり、わたしたちを悪循環へ引き込みます。

ぜひこちらもご覧になってみてください。

おわりに

退屈を感じないようにすることはできません。
ですが、退屈は「今不快だよ!なんとかして!」と私たちにメッセージを送っているのですね。

今まさに退屈を感じている・いつか退屈を感じた時に、この本を読んでみてはいかがでしょうか。

私は、看護師として働いていた時よりも、無職の今の方が退屈を感じていません。
読書や料理、いかに家事を快適にできるかの試行錯誤で1日があっという間に過ぎてしまうからです。

ちなみにたかし君は私の空想上の青年です。

次回の記事は、この記事の続きなので、よろしければ読んでみてください。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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