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【観劇記録】『多重露光』観ました。

このページに足を運んでいただきありがとうございます。
芸術の秋を満喫している黒木りりあです。

今日は、稲垣吾郎さん主演の舞台『多重露光』を観劇して参りました。以前から観たいと思っていた作品で、ようやく足を運ぶことができました!
秋の始めにピッタリなほろ苦い作品で、芸術の秋を堪能できました。


舞台『多重露光』とは

舞台『多重露光』は、俳優の稲垣吾郎さん主演のストレートプレイ作品です。劇作家横山拓也さんによるオリジナル脚本で、演出は眞鍋卓嗣さんがつとめていらっしゃいます。

作品の舞台はとある町の写真館。主人公・山田純九郎はその写真館の2代目館主です。写真館の初代館主だった純九郎の母は、町の人々に大人気でしたが、病で十年以上前に他界。純九郎は母から写真館を継いだものの、経営がうまくいっているわけでも、彼自身が撮りたい写真を撮れているわけでもありません。純九郎の父は戦場カメラマンで、純九郎は一度も顔を会わせたことすらありません。
ある日、珍しく写真館に飛び込みのお客さんがやって来ます。それは、純九郎がかつて憧れていた、常連だった一家のお嬢さんとその息子でした。二人との交流を深めるにつれ、純九郎が長い間求めていた何かに、手が届きそうになるように思えたものの…。事態は彼の予期しない方向へと進んでいきます。

段々と浮かび上がるもの

冒頭、物語は輪郭が辛うじて見えるほどのぼんやりとした印象から始まります。しかし、物語が進むにつれ、像がくっきりと浮かび上がってきます。
漠然とした親の期待が呪いとなり、ぼんやりとした記憶が残酷な真実として突きつけられ、ひた隠しにした秘密の憧れが公のものとなり、片付けたはずの過去が厄介な現実としてやって来て、目を逸らしたくても直視せざるを得なくなります。

人間の抱く様々な見たくない感情を隠したそれぞれの登場人物たちが思いをぶつけ合う場面は役者の力量が試される場面ですが、皆さんの確かな演技力で、とても見ごたえのあるシーンになっていて、強烈な印象が残っています。
また、カメラや写真を題材とした作品といっただけあって、光と影の演出が非常に巧みで、それぞれのキャラクターの持つ心の奥底の願望や幻想、立ち位置を表現するその演出にも心を奪われました。

安定のトリオ

主人公である山田純九郎を稲垣吾郎さんが、突如、写真館を訪ねてくるかつてのお嬢様こと麗華役を女優の真飛聖さんが、純九郎の父親役を俳優の相島一之さんが演じていらっしゃいます。
実はこのお三方、約十年前にミュージカル『恋と音楽Ⅱ』でも共演していらっしゃいます。残念ながら三人が一緒にお芝居する姿はみられないのですが、それでもそれぞれの共演シーンでは息がピッタリ。

アイドル、宝塚、劇団とそれぞれ異なる舞台経験・バックグラウンドを持つお三方の共演は新鮮で非常に興味深いものがあります。『恋と音楽Ⅱ』はミュージカルだったのに対して、今回はストレートプレイ。前回とは全く異なるお芝居の形式での組み合わせ、とても期待していたのですが、それぞれ期待を裏切らない納得のケミストリーでした。カーテンコールでは久々にお三人が並ぶ姿を生で観ることができ、懐かしくも嬉しかったです。

多重露光する役者たち

パンフレットにて横山さんが、役者さんは常に多重露光しているようなもの、というようなことをおっしゃっていて、なるほどな、と感じました。

多重露光は一つの写真に、本来であれば別々に写るはずだった像が重なって写ってしまう技巧を指した言葉です。

役者さんも人間ですので、それぞれのキャラクターというものがあります。それに近い役を演じるのも、全く違う役を演じるのも、どれもあり得ることですが、確かにその視点だとどちらの役を演じても役者さん自身と演じるキャラクターが多重露光するようにも思います。
山田純九郎は植物が好きで、カメラを扱う仕事をしていて、写真を撮る人間。演じる稲垣吾郎さんも、植物が好きで最近はカメラにはまっていて、だけれどと写真を撮られる側の人間。ほぼ当て書きだからとはいえ、見事な近似値的な多重露光を舞台上に観ることができました。パンフレットのインタビューなどを読んでいると、他の方々も皆さんそれぞれ、ご本人と役柄が多重露光しているように感じられて、非常に興味深いと感じました。特に、女性らしいエレガントな華麗さを表現なさる真飛聖さんから透けて見える、男性的なエレガントな華麗さを表現していた名残のような残像など、確かに重なって漂う像があるな、と。

インターネットの発展も後押しをして、近年は世界的に役者さんが発信する場が昔よりも格段に増えていて、役者さん自身がどんな人なのか、知り得る方法も増えています。役者さん自身と演じる役が多重露光する瞬間に立ち会ったり感じたりすることはこれからも増え続けるこだろうな、と不意に思ってしまいました。

舞台『多重露光』は残すところ4公演となりました。本当に秋のはじまりにふさわしい、ほろ苦いけれども希望も感じることができる作品で、俳優さんたちの演技も素晴らしい作品です。もし少しでもご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?

そして、すでに舞台をご覧になった方。『多重露光』では、3公演限定で抽選でバックステージツアーなるものに参加できる、という面白いイベントが開催されておりました。本日がその3公演目だったのですが、なんと、奇跡が起こりまして、そのツアーに参加させていただくことができました。この貴重なバックステージツアーについて、明日のnote にて書かせていただこうと思っております。私の拙い文章と写真でどれほどお伝えできるか、不安ではありますが、もしも気が向きましたら、再度足を運んでいただけますと幸いです。

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