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東京コンプレックス

移住して3年目。
最近、やっと友達ができ始めた。

2年間はずっと「友達がいない」と笑い話にしながら嘆いていた。

正直、引っ越す前は友達くらいすぐできるだろうと思っていた。今までがそうだったように、自然と気の合う人と話すようになり、色々な場面を共有するうちに自然と仲良くなれるだろうと。だけどそんな考えは甘かった。

友達ってどうやってなるんだっけ?

初対面のとき、多くの場合は東京から来たことに驚かれ「どうして東京から田舎に?」と尋ねられる。はじめはそれが興味を持ってくれてるようで嬉しかった。だけど名前を覚えられることよりも「東京からきた子」という印象が先行することの方が多く、だんだんと居心地が悪くなっていった。

引っ越してきたことを隠してみたりもしたけれど、言葉づかいや会話の中ですぐに分かってしまう。隠していたことが分かるともっと微妙な空気になってしまうから、すぐにやめた。

「私」ではなく「東京」に話しかけている

話しかけてくれる人に対して、そんな気持ちを抱くようになった。違いを感じる度に「東京ではそうなんだ」と言われる。興味があるのは、私ではなく東京なんだろう。それに対して、さして面白い東京話もできないことに申し訳なさを感じた。(私の生まれは東京と言っても端っこの…と説明する度に、尚更相手との距離が生まれる気がした)

東京との比較は、純粋でシンプルな疑問、もしくは単なる会話の糸口だと今なら分かる。全部私の勝手な思い込みで、勝手に東京コンプレックスを抱いてるのは私の方だった。だって、新しく越してきた人と話すときは、私も必ず聞いてしまう。

「どうしてここに越してきたの?」

その土地に「住む」

田舎ならではの長くて難しい住所も、もう空で書ける。
町の中で、知り合いと何度も顔を合わせるうちに「東京から来たらしいよ」ではなく「この間はどうも」というやり取りに変わってきた。

そういえば3年前はここにいる誰のことも知らなかった。
「いくら長崎が好きだからって、住むことはないんじゃない」と言われることもあった。それでも住みたかったし、漠然と「旅行じゃだめ」と感じていた理由が、最近になって分かってきた。

住んでこそ分かるその土地の人柄や、季節の移ろい方。生活のすべてが旅行では得られないものばかりだった。

東京を離れて失った友達もいるけど

「東京を離れたい」というのは、東京が嫌だったわけではなく他を知りたかったからだけど、故郷から離れようとする私の意志に反対してくる人もいた。

友達ができない2年間、自ら離れていって、それでいて「友達がいない」と悲しむなんて、なんて自分勝手で馬鹿なんだろう、と思ったこともあった。だけど離れても変わらず友達でいてくれる人もいるし、会うこともなく連絡すら取っていなくても、ふと思い出して元気をもらう人もいる。

東京にいても、田舎にいても、人って腹の底で何を考えているか分からない。それでも、腹の底を探り合って、解り合って、変で楽しい。

東京に行くことも、長崎へ戻ることも、「帰る」と言う。
それってちょっと得した気分。
東京コンプレックスはもうない。 

#東京  #コンプレックス #田舎 #移住 #友達

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