バナナキャラクター
ワシは、「こりごりだ、こりごりだ、あ〜もう〜こりごりだ〜♩」と歌っていた。
すると、上司がバナナでワシの頭を叩いて怒鳴った。
「仕事中に何だその歌は!?ゴリラがなんだって!?ゴリラなのだったらこのバナナをくれてやる!」
「いったーい!何でベネァネァで殴るのです?これがベネァネァの叩き売りってやつ?それにこのお歌を歌うことでワシの場合は効率が上がるのです!どうかお許しを!」
「うるさい!効率が上がったってお前、いつも難しいことや責任ある仕事は全部他人に頼って、単純作業みたいなことしかできてないだろう?そんなの猿でもできるんだよ!お前は猿だから、これからお前の給料はバナナで支払ってやる!」
「まじか!黒くなってないやつで頼んます!」
「おけ!」
上司は言いたいことを言い終えたのか、自席に戻っていった。
ちなみにワシは英語のネイティブスピーカーなので、英語の発音がやたら良いため、バナナではなくベネァネァとなってしまう。
すると、同僚の堂陵(どうりょう)君がくくくっ…と笑いに耐えていた。
「おい堂陵君、何がおかしい?」
「わはは。だってお前さ、給料がバナナになるんだろ?どうやって貯蓄すんだよ。バナナだってずっと保存しておけるわけじゃないんだぜ?老後とかどうすんの?」
「あっそうか!やば。」
「あっはは。お前ってやつは。…あれ、てか今日、給料日じゃないっけ?もうすぐ振り込まれるんじゃねえか?」
ワシは老後が心配なこともあって顔が真っ青になった。
ワシはATMに駆け込み残高照会をすると、既にバナナが振り込まれていた。
とりあえずATMの中ではバナナは傷んでしまうと思って、全バナナを引き出した。
ワシは大量のバナナを袋に詰めて職場に戻った。
とりあえず置き場所がないので、机の上にどさっと袋を置いた。
すると袋から溢れて隣の人の席にも雪崩れていった。
「ちょっと!何このバナナ!」
「あ、すみません。ワシの給料でして。」
「だったら大事に保管しなさいよ!」
「あのさ!ベネァネァがいつまでも保存が効くと思ってんの?老後どうすんねん!?」
ワシはカッとなって少し大きい声を出してしまった。
フロアが静まり返る。
「…すんまへん」
ワシはそう言って席に座った。
非常にバツが悪い気分になってしまった。
それもこれも、給料がバナナになってしまったせいだ。
もうこんな会社じゃやっていけない。
ワシは退職願を提出し、会社を辞めることになった。
最後の出社日が終わり、職場を出ようとしたとき、上司と課長の話し声が聞こえてきた。
「おい、いくらなんでも給料をベネァネァにするなんてやりすぎじゃないかね?」
「いえいえ課長。奴は猿ですから、きっとバナナを貰って‘‘ウキウキ’’してるはずですよ」
「haha! 腕を上げたなお主ぃ〜!」
「師匠ほどではございませんよぉ」
ワシは悔しかったし、イライラした。
ストレス発散のため、そのまま一人カラオケに行った。
「こりごりだ、こりごりだ、あ〜もう〜こりごりだ〜♫」
歌っていると、ふと思いついた。
ワシには歌の才能があるので、歌で生きていけばいいじゃないか。
歌の世界なら、嫌な上司にいびられることもないし、好きなことをしてお金を貰える。
ワシは早速、歌手デビューのオーディションを受けに行った。
「お前が今日応募してきた奴だな?」
試験官は何やら凄腕プロデューサーだかなんだかで、やけに偉そうな態度で、気難しそうな表情をした男だった。
「はい。ワシは本気で歌手になりたいです」
「なら、歌ってみろ。俺の採点で80点以上なら面倒を見てやる」
「分かりました…。では、行きます。こりごりだ、こりごりだ、あ〜もう〜こりごりだ〜♫♩♬」
試験官は気難しそうな表情を変えないまま言った。
「声の伸びはないし、音程も完全ではない。表現力もまだまだ低レベルだな。…まぁ、ぎりぎり80点ってとこだ。この俺がプロデュースしてやる、ありがたく思え」
「きも。」
「え?」
「きもー。いつからそういうキャアリクタァなん?え、いつからそのキャアリクタァの路線で生きていくことにしたん?え、だって赤ちゃんのときはバブバブ言ってマァムにご飯もらってたでしょ?中学生くらいで何かあってこじらせたん?性格がきもいわー、怖いとかじゃなくてきもいわ。それはさておき先生、これからよろしくお願いいたします!!」
「ふ、ふざけるな!誰がお前のような無礼な奴の面倒を見るものか!帰れ!」
「きも。」
「え?」
「きもー。80点取ったから面倒見るって言ったのに今度は無礼だから帰れって…。自分は横柄な態度してるのに。絶対他人には色々指導する癖に自分のこととなるとわがままになる奴じゃん。てか愛嬌あって素直な性格の子がアーディシャン受けにきたら歌下手でも見込みがあるとか言って面倒見ようとするツァイプじゃん。きもー。まあええわ。帰るわ」
ワシは袋からバナナを一本取り出して、パクリと食べながら帰路についた。
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ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。