ボヘミアン筋金入り

ワシは筋金入りの名医だ。

そして、年に一度のハワイでのバカンスから帰る飛行機に乗っている最中である。

医者とは言えど、性格がケチんぼだもんでエコノミークラス。

お隣さんとの距離はぎゅうぎゅうだ。

たまに腕が当たったりして、すみませんと会釈をする感じだぁりら。

ワシはすることがなくて暇だなと思った。

最近、ボヘミアンラプソディーという映画を観たばかりで曲が頭に焼き付いていたので、とりあえずボヘミアンラプソディーを歌うことにした。

「ママ〜〜!! ウウウウ〜〜!!」

ワシの美声に機内がどよめく。

ワシは気を良くして、歌い続けた。

隣に座る男性がどういうわけか苦い顔をして、「ゥンン!」と咳払いをした。

ワシはピタリと歌うのをやめ、男性の体調が悪いのではないかと心配して声をかけた。

「あの大丈夫ですか?」

そう問いかけたが、男性は外国人で、英語で何やらまくし立ててくるがよくわからない。

まあ何となく元気そうではあるので、無視して歌を再開した。

しばらく歌っていると、後ろの席の方から何やら慌てた声が聞こえてくる。

見てみると、乗客の一人が体調を崩しひどく苦しんでいる様子だった。

ワシは医者だ。

患者を助けようと近づいていった。

しかし、患者もまた外国人だったので英語で話さなければならない。

ワシは実は英語がほとんどできない。

医者になるくらいなら英語も多少はできるだろうと思うかもしれないが、そんな浅はかな人間は願い下げ。

ワシはあらゆる筆記試験で必死に鉛筆を転がして満点を取り続けた努力型人間なので、語学センスはない。

ただ、できないとばかりも言ってられない状況なので、とりあえず話しかけた。

「I'm a doctor. 」

そう言うと、患者は振り絞るような声でヘルプミーとほざいた。

ワシは安心させようとまた話しかけた。

「I'm a doctor in Japan and you are OK in 飛行機.」

それでも患者は苦しそうに顔をしかめてこっちを見ている。

まずはどうにか落ち着かせなければならない。

でも英語がわからない。

あ、そういえば最近ボヘミアンラプソディーを観たから、Queenの歌の英語ならわかる。

とりあえずワシは、ドンドンダン!ドンドンダン!と足と手拍子でリズムを刻み始めた。

周りの乗客が驚いてこっちを見ている。

ワシは「come on! I'm a doctor!」と言って周りの乗客にもリズムを刻むのを促した。

周りの乗客も戸惑いながらリズムを刻み始め、かなりいい感じで盛り上がってきた。

ドンドンダン!ドンドンダン!

苦しむ患者をみんなで取り囲みながらとにかくリズムを刻む。

そしてワシが歌う。

「We will we will rock you!!」

ドンドンダン!ドンドンダン!

「We will we will rock yon!!」

「さん、ハイ!」

『We will we will rock you!!!!!』

みんなも歌い出して、患者以外のみんなに笑顔が溢れてきた。

「よっしゃラストぉ!!」

『We will we will rock you!!!!!!!!!!!!!!』

ドンドンダン!ドンドンダン!!!!

イエーーーーイ!とみんなでハイタッチをして盛り上がった。

患者は意識が遠のきながら「mama...ohh...」
とか言って唸っていたのでウケた。

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ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。