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できる事ならプロも使いたくない~漂白剤の使い方

今回は、ご家庭でもできる漂白処理について書いてみます。汗じみの黄ばみや黒カビのしみ、サビなどは、上手に漂白をすればかなり綺麗に取り去ることができます。
でも、正直言って、漂白剤は難しいです。
たかが洗剤などとなめてかかってはいけません。
痛い目を見ます。
クリーニング師(クリーニング店を開業するための国家資格)の試験問題にも、漂白剤は取り上げられていたと思います。

漂白剤がなぜ難しいかというと、事故を起こしやすいからです。
衣類の色を脱色することがある。これが一番恐ろしい。
クリーニング店は、お客様の大事な衣類をお預かりするサービスです。
その大事な品物を、破損させたら大変です。

他にも問題があります。
衣類の繊維を弱めることがある。
白色を黄ばませてしまうことがある。

ではそれをさけるにはどうすれば良いのでしょうか。
ここでもまずは孫氏の兵法

敵を知り己を知れば百戦危うからず

漂白剤には大きく分けて3種類あります。
小さく分けるとどうなるのかは、クリーニングの教科書にも書いてあるけれど、化学記号やらなんやら難しすぎてここでは割愛。
この種類によって取り扱いが違います。

酸化漂白剤 酸素漂白 塩素漂白 還元漂白剤


まず、酸素系漂白剤
これは、反応が比較的穏やかで、脱色されにくい。
つまりご家庭でも扱いやすいということになるのでしょう。
市販されている商品名で言うと「ワイドハイター」などがこれに当たります。

塩素系漂白剤
次亜塩素酸ソーダが入っています。業者は次亜塩と呼んだりもします。
漂白する力は強力です。色柄物を脱色してしまいます。
「アロマ」「ハイター」「ブリーチ」などの名前で出ています。
む~かしの名前で出ています~♪(今の人には、小林旭はわからないですかね)
羊毛や絹は、生地をいためるので使ってはいけません。色柄物は脱色の恐れがあるので使用しないでください。
漂白剤のボトルにも、「綿、麻、ポリエステルに」と書いてあり、さらに「白物専用」と書かれています。
酸素系漂白剤と混ぜると塩素ガスを発生させるので、容器には「混ぜるな危険」と書いてあります。
たまには重要なことも書かれているんですね。
わたしはまた、ラベルには大げさなキャッチコピーばかりが書かれているのかと思っておりました。

ここで、プロの入れ知恵です。
この漂白剤で濃度を間違えると、衣類が黄ばんでしまうことがあります。
塩素系漂白剤を中和させるのには、ハイポというものが使えます。
水道水で金魚を飼うときに、塩素を中和させるのに用いる薬品です。
塩素系漂白剤を中和させ、黄ばみを元に戻す効果もあるので、困ったかたはお試しください。うまくゆけば黄ばみが消えて元に戻ります。

次に還元漂白剤
酸素を奪うことによって、脱色します。サビなんかも漂白します。
おっ!便利そうだなと思ったあなた。
やはり色物も脱色してしまいます。ご注意ください。
「ハイドロハイター」という名前で売られています。

結論として、漂白にはできるだけ事故の少ない、酸素系漂白剤を使われることをお勧めします。色物用漂白剤と呼ばれたりする所以です。


そしてどうしても取れない、さびや黒カビなどにほかの漂白剤を使います。
しかし、脱色の恐れがあることを考えると、やはり使うのは白い布地に限定しておくべきでしょう。

使い方としては一般的に次のような方法が用いられます。
40度のお湯に漂白剤を溶かしこむ
30分程度漬けておく
よくすすぐ
するとあら不思議、気になっていたシミがきれいに消えてしまいました。
うまくゆけば……
墨や油など、漂白で取れないしみも多くあります。

作業時の注意点としては
服につけない。⇒服が水玉模様に白くなってしまいます。
手袋をする。⇒お肌が荒れてしまいます。
漂白剤を入れすぎない、時間を置きすぎない。⇒繊維を傷めます
昔の人はこれを、

過ぎたるは及ばざるがごとし

といいました。

また、反応を良くしようと他の薬品を混ぜてはいけません。欲張りすぎがいけないのは、お宝鑑定団といっしょです。

私たちも、漂白処理は繊維の種類と染色の種類をにらめっこしながら、慎重に作業をします。
どの薬品を使って、濃度は?時間は?温度は?と自分に問いかけながらの作業です。
ご家庭ではできない、危険エリアに侵入することもあります。
ここが難しいところです。
あと少しで、綺麗になりそうだと、深追いしすぎてはいけません。
危ないなと思ったら、お客様にはっきり、危ないのでこれ以上深追いできませんとお伝えすることもあります。
この作業は、当店(宅配クリーニングのリンピオユキト)でも一番漂白作業に慣れた職人が、経験をもとに作業をします。

じつはクリーニング店には、この一般的な漂白の外にも、様々な手段での「染み抜き」と呼ばれる手法があります。
それには設備も、様々な薬品も、経験も必要になります。
ご家庭向きではないのでここでは申し上げません。いわゆる、企業秘密というやつだと思って、あきらめてください。
但し、魔法ではないので、とかげのしっぽや蚊の目玉は使いません。


そして、魔法でない以上、染み抜きにも限界はあります。
無理でしたとご報告申し上げることもありますが、どうぞご容赦ください。

魔法の使えないかたや、漂白はめんどうだ、手に負えないなと思われるかたがいらっしゃいましたら、事故をする前にお近くのクリーニング店へどうぞ。
結局、大事な衣類をだめにしてしまうより安上がりになります。

魔法が使えるかたは……ご連絡ください。
私が弟子入りします。

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