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水の中で泣いている人の涙

前回の記事 → 夏休み合宿 報告・①

「全てが自由時間」「ハイレベルな自治」
前回のレポートではこの2つのフレーズの意味や狙いなどを書きましたが、今回は実際の合宿報告になります。

On the pitch(サッカー)と Off the pitch(サッカー以外)両方について。

【 1日目 】朝・5時半
日吉コーチが朝の5時半に久保田の自宅まで車で迎えに来てくれました。
2人とも起きれて良かった。自分は4時に起きたけれど、きっと日吉コーチはもっと早くに起きてくれたはず。あぁ、ありがたやありがたや。
ここから、合宿で使う多くの用具や荷物を載せてマイクロバスの駐車場まで。

8時に「しんよこフットボールパーク」集合・出発。
体調不良で合宿当日急に休み、なんて子が出るのは合宿あるあるだけど、全員無事に元気に参加。本当に良かった。

みんな身軽な格好で集合。サンダルもあり。いきなりビーチボールを膨らませてバレーボールも始まった。お菓子もたくさん持ってきてる。

一般の「ザ・よくある合宿」に慣れた世間の怖い指導者さんからしてみたら「何をふざけたことを!」「チャラチャラすんな」と怒られるのかもしれないが、うちではこういう姿がデフォルトでありたい。

合宿は心身を鍛える場所ではないし、修行や訓練の場所でもない。本気で楽しみ、本気でサッカーに取り組む場所。その結果として、成長した姿で帰って来れる。もしくは成長のきっかけになれる機会。いい思い出もつくりたい。

バスの中でもそんな感じ。みんなHappyである。
湾岸線でディズニーランドが右手に見えたらみんな歓喜で写真撮ってるし、
サービスエリアでは、スタバがあることにやはり歓喜して最新のなんとかフラペチーノを買って喜んでいた。これでよい。

「お前ら今はそんな元気かもしれないが帰りのバスでは口をおっぴろげて爆睡することになるからな。その顔を写真に撮ってやるからな楽しみにしとけ」と内心で思いましたがそんなこと怖くて言えないので黙ってました。

東関道を降りて、佐原の道の駅へ。
「水の郷」というだけあって広い利根川沿い。
「あの向こうがディズニーシーだよ」と言ったら「え!」と信じて走って見に行った中1ふたりがいました。疑うことを知らないその純粋な心をいつまでも持っていてほしい。きっと9月になった今でもまだ信じてる気がする。

そして波崎海水浴場へ到着。ここでお昼ごはんという予定だったけれどほとんどの子がその前にバスの中で食べてた。ビーチサッカーやろうかと思っていたけれどそんな空気でもなかったので「遊んでこい!」と海へ解き放ったらみんな一目散に波打ち際まで消えていった。予定はそのつど空気を見て変わっていくものです。空気って大事です。しかしこの海岸、砂浜が広大すぎて海までが遠い!
ほぼ砂丘レベル。波崎砂丘である。そして風車がデカい。

海でたっぷりと遊んだ後、ハワイに一番近い宿・ミンションやまざきに到着。
ゆっくり休んでからグランドへ出発し、天然芝グランドにてサッカー開始。
その前に、練習用具や荷物を運んだりドリンクの準備などを率先してやってくれている子、それに気づけない子、気づいているけどたぶん見て見ぬ振りしている子など様々。

この時点ではまだ「自由」も「自治」の話をしていないので、向こうで遊んでいる約半数の面々にキレそうになりながらもジッと我慢。

その後「全てが自由時間」の話、そしてこの合宿でのサッカー面での狙いや取り組んでほしいことなども伝えてから、いよいよトレーニング開始となりました。

① コントロールでもキックでも、立ち足に重心を残したままではなく蹴り足でボールに力を伝えるように重心を乗せること。
これだけで、動きの速さ、しなやかさ、スムーズさ、美しさが変わってくる。
これを標準装備としてこの3日間で備えさせたい。
そして
② 後ろ向きでパスを受けたのならば自分で無理してターンせずに前向きの味方に預けて自分は次を目指す「レイオフ」

①も②も実際にそのためだけの練習も冒頭にやったけれど、これを切り取った練習を何回もするよりは、ゲームの中でそれぞれが意識したり、また味方と繋がることが当たり前になってくれば自然にそうなるというほうがきっと強いので、実際にこれ以降は全てゲームの時間となりました。

そしてこれは本当にそうで、結局2日目も3日目もほぼゲームで終始したけれど、自然とボールに力を乗せられる子は増えたし、味方との繋がりは合宿前と比べたら本当に雲泥の差。終始伝えたことは、レイオフに限らず、味方をもっと信用すること。だって仲間だろと。
サッカーにおいて仲間の大切さは、前回のレポートでも書きました。

自分が見えていないのならば見えている味方に頼ればいいし、そうやってボールはみんなで繋いでいくもの。だから逆を言えば、味方がボールを持ったら必ず「後ろ」でサポートしてあげること
(できれば横も。そして前向きで味方がボールを持ったのならば縦や裏へのアクションも)

なども織り交ぜながら、そのうち自然に「味方」がキーワードとなっていくゲームを初日からとことんやりました。

「自ら意識することで変わっていく」
「無意識に自然に変わっていく」

選手の成長には、この2種類があります。訓練のように無理やりやらされて無理やりできるようになったことは成長とは呼びません。それは一過性で終わってしまうから、少なくともうちではナシ。

味方を意識する。味方をサポートする。意図を持ってプレーする。
これを皆が意識していくことで、プレーの質が上がってく。判断が良くなることで速さも備わってくる。その結果として、守備の強度も速さも粘り強さも自然にそして必然的に勝手に上がる。守備以外でも、いろいろと。

意識と無意識がこうしてミックスされて選手が変わっていくのが理想であって、その理想の姿のほんのさわりくらいがいきなり見られた初日でした。

移動で疲れてグダってしまうかなという不安もちょっとはあったのだけれど、そういう姿は本当になかった。みんな全開でやっていたのが本当に嬉しかった。
ある人はゲーム中に歯が自然に抜けて、そしたらなぜか途端に動きにキレが増していた。歯って大事なんだな

途中、思うようにいかなかったり自身にしかわからないような葛藤もあったのか、ゲームの合間、泣きながら僕にその葛藤をぶつけてきた子がいました。

彼女のそんな一面を見たのは初めてだったから正直びっくりしたけれど、そうやって涙を流してでも自分の思いをちゃんと伝えてくれたことで、僕自身も改めて「誰ひとり諦めない、誰ひとり見捨てない」という思いを胸に刻んだ機会になりました。当たり前ですけどね。

涙を見せる子を放っておけないのは当たり前だけれど、そうやって表に出さず口にも出さず、心で泣いている子もきっといるかもしれない。そんな子に気づけていたのかいなかったのかは自分ではわからないけれど

「水の中で泣いている人の涙に気づける人になりなさい」という言葉をあるときある人に聞かされて以来、選手の頭と心の中を常に覗いていたい、と、その思いだけはいつでも強く持っています。そのぶん、彼女たちには「ウザ絡みしすぎやお前」と思われているかもしれないけれど。

水の中で流れている涙に気づけていたのかいなかったのかはわからないけれど、初日から全開で取り組んでくれたみんなには本当に感謝したいし、彼女たちのこの初日の姿を見て、2日目以降はもっと良くなる、この合宿はきっと成功するという確信も持ったのでした。手前ミソながら、長年の間に培ったこういう勘だけはほぼ当たるのだ。

トレーニングを終え、ハワイに一番近い宿(しつこい)に帰還。
それぞれのペースで過ごしてもらう、宿での「自由時間」がいよいよ始まりました。

この夜に彼女たちが見せた「自由と自治」があまりにも型破りでエキサイティング過ぎたので、それは次回に書くことにします。
コーチ生活も長いけど、こんな合宿、そしてこんな選手たち初めてや
(いい意味)

次回 ↓↓
合宿報告 ③ 自由と自治を満喫しすぎやねん


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