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家族でぶっとびカードを使って南阿蘇村に移住した話

桃鉄には様々なカードが用意されてますが、ワクワク感MAXなカードを1枚選べと言われたら「ぶっとびカード」でしょう。「ここではない、どこかへ」行くためにランダムな物件駅にでぶっ飛んでしまうというシンプルかつ不確実性のかたまりのようなカードです。

コロナ禍をきっかけとした社会の劇的な変化に揉まれながら、我が家も去年の春から真剣に移住を検討していました。

結果的には、当初の想定には全くなく東京・目黒区からの直線距離は800kmを超える「熊本県南阿蘇村」に移住したのは、ぶっとびカードをリアルに使った感覚があります。

友人に「南阿蘇村に引っ越したよ」と報告すると「なんで?」と即レスで質問をいただきます。我が家の経緯や考えをまとめるためにも、このnoteにつづりたいと思います。

夫婦でフルリモートになっちゃった。どこでも住めるじゃん?

転勤族の家庭で育った僕は中学校に上がるまでの間に5回引っ越しました。仙台→青森→札幌→仙台→広島→名古屋を経て、大学からは東京生活。数えてみると2007年から丸々13年間、大都会・東京に暮らしていたことになります。

その後、2017年に妻と結婚し、2019年には娘が生まれて、家族3人で目黒区・武蔵小山の暮らしをしばらく満喫していました。武蔵小山は昭和からつづく下町の濃さと、都会の便利さが混ざるとてもいい街でした。

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武蔵小山駅前の風景 photo by Michael Vito / CC BY-NC-SA 2.0

結婚当初から妻とは「いつか移住したいね〜」とぼんやり雑談をしていたのですが「いつ、どこに移住するのか、それが問題だ」という現実的な議論になったのは、初の緊急事態宣言が発令されてからでした。

我が家は夫婦共働きです。僕はWEBメディアの仕事、妻はITスタートアップということで、二人ともインターネットな仕事をしています。もともとリモートでもできる業務が多いですが、オフィスもあったので定期的に出勤し、クライアントワークも基本は対面会議で行っていました。

しかし、コロナ禍をきっかけに社内外のあらゆる会議がオンラインになり、出勤もなくなり、チームワークはSlackとZoomを駆使すればなんとかなるという予想だにしない変化が訪れました。妻の会社は早々にオフィス解約。

そんな変化がじわりじわりと進行するなか、我が家の生活様式も変化。朝に娘を保育園に預け、昼間は夫婦ふたりで家の中でリモートワークして、ランチも二人で食べるような生活が続きました。会社は違えど、なぜか同僚のように毎日同じ空間で働く夫婦。おのずと会話量も増え、ランチ時には「いつ、どこに移住するのか」という議論が具体的に進んでいきました。


大自然があり、水が湧き、美味しいパン屋もある場所を求めて

「議論ではなく、足を運ぼう」ということで2020年夏から移住先の候補地めぐりを始め、日本各地に暮らす友人を訪ねるかたちで気になるエリアに足を運びました。(感染症対策には十分配慮しながら)

「東京近郊エリア」から「陸路で2〜3時間くらいのエリア」まで。コロナ前からたまに行っていた移住検討ツアーを数えると、家族で計8地域に足を運んだことになります。

現地を実際に訪れつつ友人たちに土地のことを教えてもらうことができ、どの地域にもそれぞれの豊かな暮らしがあることを体感しました。日本ってやっぱ凄い。

どこも素晴らしい場所ばかりでしたが、いくつかのエリアに家族で足を運ぶごとに「我が家はどんなところに住みたいか?」というキーワードが湧いてくるようになりました。我が家の移住地選びの必須項目をまとめると、こんな4項目に。

①「the Earth(ジ・アース)」を感じられる大自然がある場所
②滾滾(こんこん)と水が湧くような場所
③景色のいい場所
④美味しいパン屋がある場所

細かいものを含めるともっとあるのですが「これは外せない」という重要項目はこのようなかたちに。そんなことがおぼろげながら固まって来た時に出会ったのが、熊本県南阿蘇村でした。

南阿蘇村ってこんなところです。

熊本県南阿蘇村は、阿蘇カルデラの南部に位置する人口1.1万人の村です。環境庁の「日本名水百選」に選定されている白川水源をはじめとして多くの湧水地があります。「水の生まれる郷」として観光客にも人気のエリアです。

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車を使えば熊本市内から1時間、阿蘇くまもと空港からは30分という立地です。飛行機で来てしまえば結構アクセスがいいので遊びに来てね。

2016年の熊本地震と豪雨災害では多くの被害が出てしまいましたが、被害に合われたお店や宿も現在は多くが復活され、村には活気が戻っています。

さて、ここからは先ほど紹介した4つの項目に沿って、紹介していこうと思います。

①「the Earth(ジ・アース)」を感じられる大自然がある場所

夫婦ともに東京生活が長かったので、せっかく移住するならその対局にあるような地域で暮らしたいという思いから「the Earth(ジ・アース)」を感じられる場所を探してました。

新型ウイルスや気候変動の影響を肌で感じつつ「うちら人間は、もっと地球ならびに生態系の一部だと認識すべきではないか」と夫婦で真面目に話すようになっていたことも大事な理由です。

「the Earth(ジ・アース)」が感じられるエリアとは、具体的には活発な火山活動がある土地だったり、豊かな生態系のある土地のことです。

そのなかでも阿蘇は、27万年前~9万年前にかけて4度にわたる大噴火を起こした場所です。最後の4回目に至ってはケタ違いの大噴火で、火砕流は九州〜西日本に到達し、火山灰は北海道や朝鮮半島にまで到達。あらゆる動植物に死をもたらしただろう噴火によってできた直径20kmのカルデラ内に、現在は約5万人が暮らしています。(阿蘇市、高森町、南阿蘇村の合計)

そして、かつての大噴火によって現在もたらされているのは、豊富過ぎる湧き水と豊富過ぎる温泉です。阿蘇エリアだけで600源泉あるそうです。

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こちらが近所の風景。「ここはかつての大噴火の跡地なんだよなぁ」と考えながら散歩してると地球活動のスケール感に圧倒されます。


②滾滾(こんこん)と水が湧くような場所

日本のいくつかの地域を巡りつつ、夫婦である仮説を唱えるようになりました。それは「水が湧く場所には、人も集まり、文化も栄える」ということです。縄文時代よりはるか昔から、人は水資源が豊富なところに集まって暮らしてきました。生きる上でなくてはならない「水」という資源が豊富であることは、土地の力があることを意味していると思います。

全国を旅するなかで夫婦でそんなことに気づき、妻が「水が湧く場所」でGoogle検索して見つけたが「南阿蘇村」でした。(ここだけ聞くと頭が悪そうです笑) 

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白川水源 photo : 南阿蘇村移住サイト

村内にある「白川水源」は毎分60トンもの地下水が湧き、そのまま川となって流れている光景は、心を奪われます。

そんな白川水源を筆頭に村内には11ヶ所もの「湧水スポット」があります。

どうして、そんなに水が湧くかといえば「奇跡的な自然の産物」と「人の営み」が組み合わさっているからだそうです。かつての噴火によって水が染み込みやすい地層になることでカルデラの地形が「水瓶」の役割を果たす。1000年続く野焼きや、あかうしの放牧、水田といった人の営みによって、さらに水が地層に染み込みやすくなるといった効果があるそうです。(詳しくはこちらの動画をご覧ください)

そんな豊富な美味しい水を求めて、全国から農家さんや、料理人などが集まっています。

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イチオシ温泉は地獄温泉 青風荘.さんの「すずめの湯」です。水風呂も冷泉というこの露天風呂での交互浴は最高 of 最高すぎて、年間パスポートも買ってしまいました。

③景色のいい場所

リモートワーク生活で50cm先のパソコンとにらめっこしてる時間の方が長くなる日常において「景色の良さ」も外せない要素になりました。

南阿蘇村は阿蘇山と外輪山に挟まれた「南郷谷」の中に位置するため、基本的にどこにいても山に囲まれていますが、開けた平地が広いためどこでも見晴らしがいいです。平地部分には美しい水田が一面にあり「空ー山ー水田」という、日本の原風景を味わい放題です。

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家を出ればすぐにこんな景色に出会えるので散歩が楽しくなりました。

山の方に車で20分ほど登ればそこには国立公園として管理される「草千里ヶ浜」の絶景があります。これは阿蘇エリア全体にいえることですが、豊かな自然環境に対して、野焼きをはじめとした持続可能な人の営みが関わることで生まれる美しさには心を奪われるものがあります。

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草千里ヶ浜 photo by 浅川浩二さん / CC BY 3.0

④美味しいパン屋がある場所

仕事柄、全国各地のローカルプレイヤーの方にお話を聞く機会が多いのですが、複数名の方から聞いた話で心に残ってるのは「いいまちには、いいパン屋がある」という言説です。

都会の真ん中でパン屋さんを開業する際には徒歩圏内の「商圏」が味方してくれますが、田舎で開業するとそういう訳にもいかない。美味しいパンを求めて通ってくれる「パン食」な住民がそのエリアに一定数のボリュームでいないと商売がなりたちませんし、開業したとしてもわざわざ車で買いに来てもらえるくらいの美味しいパンを焼かないといけません。

「田舎でパン屋が成立する」というのは、移住世帯も含めた比較的若い世代の住民がいるということ、パン職人の腕が確かなことの2つが両立しないとなかなか難しいことのようです。

そんな言説をもとに人口1万人の小さな南阿蘇村内を見渡すと、なんと7つもパン屋さんが営業しています。我が家はまだすべてのお店には足を運べていませんが、買いに行けた4つのパン屋さんはどこも目が覚めるくらいの美味しいパンを焼いてくれています。

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南阿蘇パンマップ2021

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「Dacco bread +cafe」のピーナッツバターパンが推しです(photo : 南阿蘇村移住サイト

カフェ併設で美味しいコーヒーも提供してくれるお店も多く、美味しいコーヒーとパンなしには生活が成り立たない(?)我が家のような家族にとっては本当にありがたい限りです。

南阿蘇村になぜここまでパン屋さんが多いのか?ひとつの理由としては、地域のお客さんだけではなく、熊本市内から通われる観光の方も多いことがあります。地域の商圏だけではなく、観光客層の分厚さが、パン屋さんをはじめとした美味しいお店の成立を下支えしているのだと思います。

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というわけで、我が家がぶっとびカードを使って移住した経緯と、南阿蘇村を紹介させていただきました。まだまだ推しポイントは阿蘇の山のようにあるのですが、それはまた別なnoteで!

去年から続いた我が家の移住検討にあたって、本当に多くの方にお世話になりました。改めてこの場を借りて感謝をさせてください。ありがとうございましたm(_ _)m

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最後に南阿蘇村の魅力を、僕なんかよりはるかにわかりやすく伝えてくれる連載やサイトを紹介します。

南阿蘇村鉄道の駅舎で週末だけ古本屋を営まれている「ひなた文庫」さんのコロカル連載です↓

阿蘇エリアの住まいや暮らしの魅力を発信されている「阿蘇hi暮らし」の公式サイト。最近出たタブロイドのフリーペーパーも素敵なので、村内で見つけたら是非ゲットしてください。

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https://asouto.jp/

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