大切にしたい、小さな書店。
週末、ふと思い立って自宅から2駅ほど離れた場所にある書店に行ってみた。
学生時代、私は実家の近くにあったその書店によく通っていたのだが、たまたまその書店について調べる機会があった。そのなかで現在はどこに店舗があるのかを調べたところ、いまの自宅から2駅ほど離れた場所に店舗があることを知った。
ちなみに、実家の近くにあった店舗は、もう10年以上も前に閉店している。小さい規模のお店だったので、置いている本の数は少なかった。
しかし、目利きの人が厳選したであろうことを強く感じさせる棚作りで、人文系からサブカル系まで、読書好きであれば思わずにやりとしてしまうような本がたくさん揃っていた。
学生だった当時、バイト代の大半はこの書店に注ぎ込んでいたかもしれない。それぐらいに本のラインナップが自分好みだった。
ある1冊を読んで、「これを読んだら、あれも読みたいな」という本が、ことごとく棚にあるのだ。そして、その本からさらに別の本へと、おもしろいように本と本がつながっていく――。当時は、興味の赴くままに、その数珠つなぎのような本の連鎖を楽しんでいた。
いま風にいえば、読書の「沼」にハマっていたということになろうか。それぐらい、その店舗のラインナップに魅せられていた。
* * *
いまの自宅の近くにある店舗も、その当時の雰囲気そのままだった。
お店の規模はこじんまりとしていて、10分もあればすべての棚をチェックできる。そして、ベストセラーや漫画などの売れ筋から、人文系のちょっとマニアックな本まで、さまざまなジャンルの本がまんべんなく揃っている。
この感じである。メジャーな本もたくさんあるが、そのなかにマニアックな本がちらほらある、この感じ。あくまでもメインターゲットは一般的な読者層であって、そのなかにややマニアックな本が適度に混ざる、そのバランスが絶妙だ。
当時とやや異なるのは、目につきやすいところで文房具を扱っていること、子育て世代が多い街だからか、絵本や児童書のコーナーが充実していることだろうか。
小学2~3年ぐらいの女の子がお母さんと辞書を選んだり、まだ小さい子どもを抱えた夫婦が、お気に入りの漫画の新刊を買い求めていたり。近所にお住まいであろうマダムの2人連れが、「あれはいい」「これはダメ」と、小説の品評をしているのもなんだか微笑ましい。
こんな光景を見たのはいつ以来だろう。最近は、大型書店やアマゾンに慣れ切っているから、こういう小さな本屋さんで繰り広げられる(昔はそれこそほぼ毎日見ていたであろう)情景が、妙に響く。
失礼な話だが、この出版不況のご時世に、そんなに儲かってはいないだろう。だが、「好きな本は、この書店で買いたい」と強く感じさせるなにかが、この書店にはある。
今度は、子どもを連れて行ってみよう。
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