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家建ちぬ〜第十二回 それでもそこには土地がある〜

これまでに進めてきていた設計が立ち行かなくなり、非常に残念であるが、設計事務所とお別れすることになってしまった。

施主からは過度な期待をされ、さらにコロナ禍の資材高騰など特殊な状況が重なり、設計者にはこれまでと違った負担もあったと思う。

それでもやはり人生最大の買い物で後悔はしたくない。私自身の建設業界に携わっているプライドと、妻とペアローンで建てることからも、失敗してはいけない。
これらの思いがあまりに強かったのかもしれないが、結局は自分自身へのダメージにもなってしまっている。

さて、設計が白紙になってしまったが、そこには35年のローンを組んで購入した土地は残っている。この場合どういったことになるのか記しておきたい。

まず真っ先に気になるのは銀行である。
土地先行融資の時点でマイノリティな借り入れの方法をとっている上に、設計が途中で止まってしまって着工できないという事例は、銀行に相談しても見当たらないとのこと。

そりゃあそうだろうなと。
ではどうなってしまうのか。

代償について

土地の借り入れから建物の竣工までの支払いは、
①土地の購入から建物の引き渡しまで毎月、土地購入時の借入金額の金利分の金額を支払う。
②引き渡し後は、土地建物を合わせて金利と元本分を支払う。いわゆる住宅ローンがスタートする。
①+②の条件となっていたはず。

そのため設計及び工事期間は、①の金利分の支払いだけであったのだが、これには適用期間が決まっていて、設計+工事が一年を超えると金利に加えて元本の支払いが始まるようになる。

つまり、今回の件は土地の購入が2021年5月になるので、2022年5月までの間には、元本も減らない金利のみの支払いとなる。
その後2022年6月からは元本の返済も始まる。
ローン控除の計算とかどうなるのかは、最早素人にはまず分からないであろう事態となった。

土地の借入金額はおよそ1500万円で、これまで支払ってきた分と、これから竣工までの間に支払う分(今現在は竣工予定までたっているので、23年1月を最終月とする)を計算すると、、、
45423円(約低利息+元本返済額)
23688円(約低利息のみ)
89246円(ボーナス月払)
23688×12+89246+45423+45423+45423+45423+45423+89246+45423=272538+284256+178492=735,286円

当初支払うはずであった金額を考えると、ほぼ土地の契約から5ヶ月が設計期間、7ヶ月が工事期間を想定していたため、正しいのかは分からないが、23688円×12ヶ月で284256円となる。元本の返済が始まってしまっているため、正しい計算は分からないが、何となく30万円位の高級なソファが購入できる金額をただただ銀行に差し出していることになりそうである。。。

それだけでなく今住んでいる賃貸の賃料や駐車場代、そのほか諸々の経費など積み上げていくとキリがない。。。多分きっと100万近くのロスになってしまったことは想像できる。

白紙撤回になってしまう事は、施主にとっても設計にとっても大きなダメージしか残りません。家づくりの舵取りは正直失敗してしまった。

それでもそこには土地がある

土地がある以上何も建てない選択肢は当然ない。次の手としてどうするべきか。やはり安定の設計施行を任せることのできるハウスメーカーを選ぶことが頭をよぎった。
その為ここにきて初めて、住宅展示場というものを回ってみた。

ヘーベルハウス

ヘーベルハウスさんの家はすごい。
デザイン性もさることながら、耐火性能と断熱性能を有するヘーベルボードの性能が突出している。工事屋さんの感覚で言うと、施工品質をしっかりと確保できれば、鉄骨造で断熱性能が高い建物が作りやすいと感じた。

住友林業

住友林業さんの家もすごい。
建具の仕様も豊富な選択肢があり、費用対効果も優れている印象で、各所のデザイン性も高く上質な空間を作っている。
前職の時代に基礎業者から、うちはスミリンの仕事をもらっていたんだからと誇らしげに言われたことを思い出す。

一条工務店

住宅は性能。断熱性能へのこだわりが強いことは有名だが、説明を聞くと非常に高いクオリティで細部まで作り込んでいることが理解できた。
また、浸水対策として外部配管の復旧を前提に、建物が浮き上がって破断してもすぐに差し直せるジョイントなど、そこまでするか?といったことまでやっていることに好感が持てた。

その他展示場内のメーカーをローコスト住宅のメーカーも含めほぼ全部回った。

転んでもただでは起きたくない

今回の件ではっきりしたことは、どうやら大変な部類の客であるようだ。
諦めが悪く、そしてどこまでもこだわる。我ながらめんどくさい性格である。
とは言え、各ハウスメーカーの営業さんと会話をしたが、私がこだわりたかった建具の取手が〜とか、窓サッシの周りのシールは〜とか、空間が〜とか、そういった要望と会話が噛み合うことは難しい。欲深く諦めの悪い私は、再度設計事務所を探すことを決めた。

体力の必要な客についてこれる、タフな設計事務所を探すことにした。

次回再出発。

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