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三井不動産に物言う株主

米投資ファンドのエリオット・マネジメントが三井不動産の株式を2%以上取得し、1兆円の自社株買いを求めているとの興味深いニュースがあった。そこで三井不動産についての最近のニュースをまとめてみる。

要約文

米国の投資ファンド、エリオット・マネジメントが三井不動産に対し、自社株の1兆円規模の買い戻しと、保有するオリエンタルランド(東京ディズニーリゾートを運営)の株式売却を要請したことが明らかになりました。エリオットは三井不動産の株式を2%以上保有しており、昨年から株式の買い増しを進めています。三井不動産はオリエンタルランドの筆頭株主である京成電鉄に次ぐ大株主で、現在約6%の株式を保有しています。エリオットは三井不動産のオリエンタルランド株の売却を進め、自社株買いに充てることで三井不動産の自己資本利益率(ROE)の改善を目指すべきだと主張しています。この動きは、三井不動産の株価を上昇させ、東京株式市場で17年ぶりの上場来高値を更新する結果となりました。

自社株買いとROEの関係

ROEは企業の収益性を測る指標で、純利益を自己資本で割ったものです。式で表すと、ROE = 純利益 ÷ 自己資本です。

自社株買いを行うと、以下の2点で影響が出ます。

1. **自己資本の減少**: 自社株買いは企業が市場から自身の株式を買い戻すことを意味します。この操作で使用される資金は企業の内部留保(純利益の蓄積)から支払われるため、自己資本が減少します。自己資本が減少すると、ROEの分母が小さくなります。

2. **純利益への影響**: 自社株買い自体が直接純利益を増加させるわけではありませんが、株式の数が減ることで一株当たりの利益(EPS: Earnings Per Share)が増加します。長期的には、企業が効率的に運用されていれば、市場からの信頼を高め、株価を支援することにより、純利益の増加にも寄与する可能性があります。

要するに、自己資本が減少することで、同じ純利益でもROEが数学的に向上するのです。企業にとって、ROEの向上は効率的な資本の使用と収益性の高さを示す指標となり、投資家にとって魅力的な企業となります。ただし、この手法は企業の基本的な収益力が向上しているわけではないため、自社株買いの効果を過信することなく、全体的な企業パフォーマンスを考慮することが重要です。

都心に木造の高層賃貸オフィス

三井不動産は、東京・日本橋で国内最高層となる木造の賃貸オフィスビルの建設を開始しました。このビルは高さ84メートル、地上18階建てで、2026年9月に完成予定です。ビルの構造材には、1100立方メートル以上の国産木材を使用し、鉄骨と組み合わせています。この取り組みにより、同規模の鉄骨造ビルと比較して建設時の二酸化炭素(CO2)排出量を30%削減できるとされています。木造ビルの建設はコストは高くなりますが、三井不動産はその働きやすさ、省エネ性能、環境配慮をテナントにアピールしています。このプロジェクトは、都心での高層木造ビルの普及という新たな動きの一環として注目されています。

スタートアップ向け出資プログラム

三井不動産が、アメリカの大手インキュベーター企業テックスターズと提携して、スタートアップ企業向けに出資付きの育成支援プログラムを開始することを発表しました。このプログラムでは、選ばれたスタートアップに対してファンドを通じて1社あたり約1750万円を出資し、東京ミッドタウン八重洲を拠点にイベントを実施する予定です。プログラムは2024年7月から10月にかけて実施され、ファイナンスやビジネスモデルの改善を支援すると共に、資金調達のためのプレゼンテーションも行います。三井不動産はこれまでにもコーポレートベンチャーキャピタルとして435億円を出資し、宇宙開発やライフサイエンスをテーマにしたスタートアップ支援を行ってきました。

賃貸契約をSaaS連携で電子化

三井不動産グループの賃貸管理会社、三井不動産レジデンシャルリースは、賃貸マンションの契約プロセスを電子化するために、GAテクノロジーズの子会社イタンジが提供するクラウドサービス「電子契約くん」を導入しました。このシステムを利用することで、契約書作成から署名までのプロセスをオンラインで完結でき、紙の書類の使用を大幅に削減します。顧客はメールで送られた契約書に電子署名することができ、郵送期間や行政手続き、来店の必要がなくなります。三井不動産レジデンシャルリースはこの電子契約システムを年間約7000件の個人契約に導入し、最大で50万枚の紙書類削減を見込んでいます。また、同社は内見予約や契約申し込みの管理も電子化し、賃貸契約プロセスの全体を効率化しています。

24年3月期、宿泊好調

三井不動産は、2024年3月期の連結純利益が前期比で9%増の2150億円になる見込みで、これは従来予想より50億円上回ると発表しました。この利益上振れは、ホテルやレジャー施設の営業回復が想定以上に進み、有利子負債の金利負担が減少したことによるものです。特に、「三井ガーデンホテルズ」などのホテルでは、訪日客の増加により稼働率や客室平均単価が回復しています。また、東京ドームではプロ野球観戦やコンサートイベントの動員数が回復しました。これらの業績回復を受けて、年間配当予想も前期比8円増の70円に引き上げられました。23年4月から9月の期間では、売上高と純利益がいずれも過去最高を更新しており、オフィスやマンション分譲事業も好調です。

YanekaraとカーシェアEV車両のスマート充電を活用した実証実験

三井不動産と東京大学発のスタートアップ「Yanekara」は、柏の葉スマートシティでカーシェア用電気自動車(EV)に対するスマート充電の実証実験を開始します。この実験は、カーシェアEVの効率的な電力利用と電力市場および需給調整市場での経済性を検証することを目的としています。実験では、Yanekaraが開発したスマート充電器「YaneCube」を使用し、電力単価が安い時間帯に充電することが可能になります。この取り組みは、EV充電設備の拡張やV2G事業化を見据えたもので、IoTを活用したエネルギーマネジメント技術の導入と電力系統の安定化に寄与することを目指しています。

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