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LAST WEEK REMIND~デューンに関する短いフィルム~

LAST WEEK REMIND
~デューンに関する短いフィルム~

3/17-23の振り返り

☆は4点満点

【映画】
・デューン/砂の惑星 PART2(2024)
☆☆☆☆:1というよりも0.5か0.6くらいのストーリーで終わってしまったデューンの一作目。二作目となる今作は、よりディープなテーマと大規模なアクションも相まって圧巻のSF絵巻に仕上がった。砂の惑星ことアラキスの救世主とされる青年ポールは、アラキスの民フレメンと行動を共にし、アラキスでしか採れない貴重な資源スパイスを狙う大領家や、裏で手を引く皇帝に立ち向かう。前作では地中深くを蠢いていたサンドウォームも、盛大にその巨体を露わにして大暴れ。あれに乗るというシーンだけでも大スペクタクルだ。あと、どうやって降りるのかも是非教えて欲しい。今作で大きなテーマの一つとなるのは信仰だ。信仰によってフレメンたちは結束を固め、大いなる脅威へと立ち向かう。そしてそれは何を犠牲にするのか。予知的な能力を得た救世主ポールの葛藤や、やがて危ういほどの力を持ち始める彼の動きから目が離せなくなる。また一方で、その流れを頑なに拒絶するチャニの動きが、異なるうねりを生み出す。ポールとチャニの愛し合いながらも、すれ違う思いが切ない。核を力としてチラつかせるのも現代的だ。いよいよ主人公として輝き出したシャラメを筆頭にゼンデイヤ、ファーガソン、バルデム、ピュー、ウォーケン等の豪華なスター達が、壮大な宇宙オペラに花を添える。ベストは真っ白タマゴボーイと化したバトラーか。一秒先の考えが読めないフェイド=ラウサの狂気を捉えた。あの時間、確かにデューンにいたような感覚にさせた監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ率いるチームの才能(撮影、編集、音楽、音響、美術、衣装・メイクのあらゆる面)と、外の世界からの救世主リサン・アル・ガイブの前途を祝して、ここに唾を吐かせてもらいます。

・テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR (Taylor’s Version)(2023)
☆☆☆:いきなり嬉しい。個人的にテイテイ史上最も好きなアルバム「LOVER」がオープニングを盛り上げるからだ。”Miss Americana & The Heartbreak Prince”、”Cruel Summer”、”The Man”など、まさしくデイライトな陽光の温もりに満ちた曲の数々が会場を温める。このツアーはテイラー・スウィフトが発表してきたアルバムをERA=時代として区切って、その時代を振り返る。テイラーは時計の針をティーン時代へと巻き戻し、会場もまるで高校生に戻ったかのように”You Belong with Me”や”Love Story”を熱唱。テイラーと共に、成長し大人になった観客の青春の手触りが曲と共に感じられる。時代は「FEARLESS」から「EVERMORE」へと移り変わり、柳の木の下で物語を語りかけるテイラー。”willow”や”champagne problems”等をしっとりと歌う。それも束の間、復讐心に燃える「REPUTATION」時代では、会場のエンジンに火を点ける。個人的には思い入れのないアルバムだったが、”Ready For It?”をはじめエネルギッシュな曲たちの新たな魅力を発見した。そこから「SPEAK NOW」と「RED」と会場の一体感を上げる曲が目白押し。”Long Live”の歌詞が沁みます。そして極めつけの”All Too Well”!「FOLKLORE」では再び、伝承の数々を静かに語り始めるテイラー。”the last great american dynasty”に痺れる。いよいよ「1989」時代に突入し、スタジアムはまさしく”Shake It Off”状態に。観客を揺らし、踊らし、ジャンプさせる。アコースティックコーナーに続き、「MIDNIGHTS」で真夜中過ぎの大団円を迎える。スタジアムにいる誰もが歌って、泣いて、笑みをこぼして、大きなサークルを作り出している。このコンサートでは誰にでも居場所がある。街で一番大きな声を持った女性の周りに。

・瞳をとじて(2023)
☆☆☆☆:20年前に映画撮影中の現場から姿を消し、行方知れずとなった俳優。そして撮影中止となったまま映画を作ることをやめた映画監督。親友だった二人の間で止まっていた時計が、時を超えて再び動き出す。キーとなるのは映画だ。そこには映像として記憶を記録として残し続ける映画ならではの力が働く。記憶とシネマの関係性。男の複雑な迷宮の核心に迫る作品にして、ビクトル・エリセによる30年ぶりのマスターピースを目撃する。

・殺人に関する短いフィルム(1988)
☆☆☆:とあるタクシー運転手が若い流れ者に殺される。この衝動的な殺人が起こるまでと、その裁判の結末を描く、クシシュトフ・キェシロフスキ監督による短いフィルム。尺は短いがパンチ力のある作品で、あらゆる意味での殺人を考えさせられる。今にも雨が降り出しそうなポーランドの寒々しい曇天。まるでひとつのキャラクターのように、偶然にも運命が交差する男たちの姿を見つめる撮影が強烈に目に残る。張り裂けそうな心の叫びや後悔が生々しい。映画だと忘れさせるほどのやらせなさを感じる。

・愛に関する短いフィルム(1988)
☆☆☆:殺しの次にくるのは愛だ。キェシロフスキ監督の愛に関する短いフィルムにおける、男と女の主人公たちの愛のコードはのぞき行為と聞いて驚いてはいけない。孤児で名付け親のおばちゃんの一室で暮らす青年は、向かいの棟に住む女に恋をし、毎日のように小さな望遠鏡で、女の生活を覗いていた。郵便やミルクの配達を介して二人の距離は縮まっていくが、とある一件を境に、この関係性が変わっていく。変態的な滑り出しから、人間の心や行動の変化が、愛を思いがけない方へと押し広げる。「愛なんて結局はこんなものよ」に対するアンサーが優しい。

【再視聴】
・DUNE デューン/砂の惑星(2021)
☆☆☆:二作目のため再鑑賞。世界観構築に時間を使い尽くし、物語が大きく動く前に映画が終わってしまうが、それでも入念に描かれる砂漠の惑星の厳しい生活環境や生命サイクルから目が離せない。次のチャプターの土台としてのみ存在する作品。

【TV】
・Mr. & Mrs. スミス 第1シーズン第3話

【おまけ】
・今週のベスト・ラヴィット!
ヨーチェケラッチョ!

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