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【超短編小説】 明日あなたに会えるなら

 やっぱり、仕事忙しい?


 夜も7時を過ぎた頃。
 昼休憩の時に送ったラインには、既読マークすらついていなかった。
 私の今日の昼休憩は夕方頃で、多分、彼よりも遅かった。
 私はトイレから出ると、ため息を呑み込んで店内に戻った。
 中日と言われる今日は客の入りも芳しくなく、細々とした仕事を片付けるのにうってつけの日だ。でも、彼の返信が気になって集中できない。レジでは何度か凡ミスを犯してしまって、お客様にすいませんを連呼した。
 仕事が終わって、すぐにスマホをチェックする。
やっぱり、返信はない。でも、既読マークはついている。
 付き合いはじめは既読無視かと不安になったりもしたが、彼は忙しいとき、誰にもラインを返さない。それを知って、不安は徐々に払拭されていった。
 仕事で大変そうにしている彼を想像すれば、仕方のないことと納得することもできた。
 だから、ワガママは言わない。文句も言わない。彼も忙しさを理由に、私の誕生日をすっぽかしたりはしないから。
 でも彼は今、自分の誕生日をすっぽかそうとしている。
 電車の中で、彼とのラインを見返す。

 決算月だから忙しいんだよ。
 それに、男の誕生日は無理に祝う必要はないよ。

 数日前の返信を目にして、なんだか寂しくなった。
 これはきっと私のワガママだ。

 明日あなたに会えるなら、めいっぱい、おめでとうと伝えたい。

No.4

 


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