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やっちゃば一代記 実録(42)大木健二伝

やっちゃばの風雲児 大木健二の伝記
 小野総料理長
当時、小野氏が入れ込んでいた野菜のひとつが【ビーツ】だった。
婚礼の宴会に出すサラダにビーツを添えて縁起の良い紅色を演出していたのだ。サラダ用のビーツの処理は一度茹でて甘塩に漬けておくのだが、サラダにするタイミングを間違うとビーツの紅色がほかの野菜に移ってしまうのだ大木はそのサラダの彩りに魅せられ、愛用のカメラを持って厨房に侵入したことがある。それを見つけた小野氏は注意こそしたが、目は細めていた。
 オークラの小野総料理長はフランス料理の著名シェフだが、ホテル経営については米国仕込みの手法でホテル業界に新風を吹き込んだ。
経営の中心に料理を置き、宴会では代表シェフがお客に挨拶する慣習を取り入れたのもこの人である。
パリ・アングラジュマン勲章、ジューヌ・デ・ロティスール金賞など本場フランスから名誉ある賞を受賞しているほか、勲四等瑞宝章、現代の名工にも選ばれている。平成九年二月に亡くなったが、大木にとって小野氏は食材のこだわりを痛烈に教えてくれた恩人であり、また同じ食べ物に目のない食いしん坊仲間であった。
 

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