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管理職不足の原因と対策について -その2 現実的対応-

今回は、校長の待遇について考える。できるだけ現実的な問題として指摘していきたい。
なぜ校長になりたくないかという理由を考えるときに、これまであまり語られていなかったのは、辞めた後の待遇である。
これも、前回書いたように地域や都道府県によっても違うだろうが、私の勤務していた地域では退職した後は県費の職がほとんどない。
再任用校長制度も昨年度から廃止された。

県費での仕事がないということは、市町費での雇用となり、公民館の館長や教育委員会の会計年度職員などに限られる。そこでの報酬は(信じられないかもしれないが)時給にして1000円~1500円ほどにしかならない。

また、各都道府県にある教職員の互助会などの特典からも除外される。
例えば、互助会等における定期預金の利率は一般の金融機関の数十倍にもなるが、県費から外れた時点でその資格を失う。
再任用制度による雇用も教諭上がりを優先される。
校長にはなかなか回ってこない。

細かいことのように思われるかもしれないが、辞めた後の待遇が悪いことは教員もよく知っている。
「あれだけしんどい目をさせられて、最後は時給1000円?やってられない」と考えるのが普通である。

対策としては、退職後の再任用を教諭より管理職経験者を優先することだ。組合との兼ね合いもあるだろうが、使い捨て状態によって希望者が減っていけば、必ずその影響は教員に及び最終的には子どもに及ぶ。
管理職希望者の減少は管理職の質の低下に直結するからだ。
ときには、「なんでこんな人が管理職になれたんだ」と思うような事態も起こる。
教諭時代に指導力不足が疑われ、職員室で浮いてしまっている者やセクハラで問題になったような者が、居場所を求めて管理職を目指すことさえある。しかし、それは自分たちが管理職になろうとしない結果が生み出した必然なのだ。

私が、地方の教育委員会で課長を務めていたとき、最初の歓送迎会でこんなことがあった。
会が始まる前に、ある校長が私のところに来て言った。「俺は、いままで中学校の勤務をしてきたのにいつまでたっても小規模の小学校ばかりでやらされる。何とか中学校に戻してくれ。力が発揮できない」
私より5歳以上年上のその校長は、教諭時代セクハラ疑惑があり、今なら懲戒免職になっていたかもしれないほどの人だ。

そういう「勘違い男」が校長になれたのである。
感謝されてもいいくらいなのに自分のことしか考えていない。
そもそも、中学校では通用しない(過去の問題は中学校で起こしている)からこそ、今の人事なのだ。
こういう人を生み出さないためにも、校長の待遇を良くして希望者を増やさなければならない。

他の対策として、いわゆる指導困難校に特別手当をつけるべきだと思う。
ただ、困難校の基準の設定が難しいと思われるので、せめて大規模校の管理職に特別手当を支給すべきだ。
児童生徒数が多くなればなるほど教頭の事務量は増えていく。
生徒指導も増えるし、職員の管理も大変になる。
それこそ、慶弔費の出費は馬鹿にならない。
また大規模中学校なら全国大会など遠方の出張も多くなる。
引率の対象となる人数には限りがあるので、顧問を優先して旅費等を充てる。
校長はどんなに遠方でも自腹を切るしかないことが多い。
管理職手当だけでは到底対応できない。

そもそも、そんな細かいことをいうような者は校長になる資格はない、もっと教育に情熱を注ぐ人がなればいいという見方もあるだろう。
しかし、事態はそんな悠長なことを言っている段階ではない。
今こそ、現実的に対応を考えなければいけないのである。

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