トラッキーのきまぐれ

元小学校及び中学校校長 今は自由人。学校の先生がほんのちょっと元気になる言葉を探してい…

トラッキーのきまぐれ

元小学校及び中学校校長 今は自由人。学校の先生がほんのちょっと元気になる言葉を探しています。老害にならない程度に、発信しようと思っています。阪神タイガース大好き。ときどきタイガースネタあり。書くこと大好き老人。

マガジン

  • リンゴがリンゴであるために 子どもの今に寄り添う

    年々厳しくなる学校現場の先生方に贈る、ほっこりしたメッセージが中心です。ちょっと視点を変えてみたい人にぜひ読んでもらいたいと思っています。

  • 評論風フィクション「学校教育史-近未来編-」

    現代の学校教育にはさまざまな課題が、長い間解決されないままになっています。今すぐにでも本気で改革を進めなければ、この作品にあるような学校が現実に現れるかもしれません。最悪のシナリオを避けるために、敢えて最悪のシナリオを書いてみました。

最近の記事

なぜ伝わらないのか

 学校現場で、子どもたちや保護者に接しているとどうもこちらの言うことが伝わらないと感じることがあります。 教員にとって至極当たり前のことがなかなか通じない。 例えば、私たち教員は、目標を持つことやそれに向かって努力することの素晴らしさは、疑いようのない真実であると思ってきました。 その「当たり前」が通用しなくなっています。 生徒の心に響いた瞬間というのは目に見えませんが、その場の空気で感じ取ることができるものです。 伝わったという実感が湧いてこないのは、私たちの話が生徒の心

    • これからの学校はどうあるべきか-制度疲労への挑戦-

      今、学校が抱えているさまざまな問題は学校というシステムが制度疲労を起こしているところにあると思います。 中でも公立学校における学級制度は明らかです。 学校の基本単位として「あって当たり前」のものとして学校の中核に位置する学級ですが、多くの矛盾を抱え、深刻な問題を発生させているのに改革の手が入らず、 そのことにとってさらに矛盾が大きくなっています。こうした学級は公的にはその存在を疑われることもなく、自明のものとされ、すべての公立学校で学級を編成することを前提とした教育活動が展開

      • 「伝える」と「伝わる」

        指導主事をしていたとき、数多くの講師を招いて研修を計画・実施しました。 講師はそれぞれに個性があり、話し方や伝え方も千差万別でしたが、心に響く講義をしてくださる講師にはいくつかの共通点がありました。 一つは、事前の情報収集です。この講義がどういう目的で実施されるのか、受講者が何人くらいなのか、参加者のおおよその教員経験年数や主な受講理由などを確認されます。 なかでも、この講義(講演)が自分で希望した人の集まりなのか、官制研修や動員などで義務として参加しているのかはとても重

        • 私がやった道徳の授業-「赤ん坊」で揺さぶる-

          中学生が、道徳の授業を面白くないと感じるのは「最初から答えが決まっえている」というのが、その大きな理由だと思います。 それを打破するためには生徒の心を揺さぶる発問が必要です。 私は過去に何度か「赤ん坊」という言葉を使って揺さぶりました。以下にいくつか例を挙げてみます。 (ここに挙げる例は、今から20年~30年前に実践したものです。また、授業の内容については、具体的な資料が残っていないものも多く、私の記憶を頼りに書いている部分も多々あります。もし、この記事を参考に道徳の授業を

        なぜ伝わらないのか

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        • リンゴがリンゴであるために 子どもの今に寄り添う
          50本
          ¥500
        • 評論風フィクション「学校教育史-近未来編-」
          9本
          ¥500

        記事

          職員の不祥事に対する管理職のクライシスマネジメント その1

          職員の不祥事はあってはならないことです。 しかし、管理職がどんなに注意していてもすべて防げるとはかぎりません。明らかな犯罪行為で学校が言い訳のできない場合は、地域住民やマスコミも攻撃しやすくなります。 子どもが命を落とすような事件に比べれば、まだましとはいうものの、学校の信頼は一気に崩れてしまいます。 この手の話に関しては、リスクマネジメント(事前にリスクを減らす)は、しばしば紹介されていますが、具体的なクライシスマネジメント(事後の対応)についてはあまり語られることはありま

          職員の不祥事に対する管理職のクライシスマネジメント その1

          絵画教室で感じたこと

          昨年、生まれて初めて小学生対象の絵画教室を参観しました。 テーマは風景画かポスターのいずれかを子どもが選ぶというものでした。 参加児童は高学年を中心に20名弱というところでしょうか。 子どもたちは夏休みの絵の宿題に助言を求めて集まっていたのです。 テーマが複数ある上に子どもたちはそれぞれに違う絵を描いているわけですから、助言する方も大変です。 しかし、70代の元小学校教師の講師は一人ひとりに的確な助言をしておられます。 そこからは、かなりの経験や技術、アイデアをお持ちの方だ

          絵画教室で感じたこと

          調査書改革から考えるこれからの学校

          2023年度から広島県は「調査書(内申書)は簡素化して学習記録(内申点)だけの記載に改め、ボランティアやスポーツ、生徒会活動などの記録欄を廃止する」という方針を打ち出しました。 具体的には「教員が定期テストの点数などを基に評価した9教科の「学習の記録」と、名前などの基本情報に絞る。 欠席日数の記入欄も入試に必要ないとしてなくす」方針を固め、「全ての受験生に面接のような形で自身をアピールする「自己表現」を課す」というのです(中国新聞デジタル)。 広島県と言えばかつて「「教育の

          調査書改革から考えるこれからの学校

          見えない「心」をどう育てるのか

          心は見えない。 その見えないものを簡単に「育てよ」という人がいる。 例えば、いじめの問題は子どもたちの心が育っていないからだと言う。 簡単に言ってくれるが、そんなことなかなかできるのではない。 そもそも、そういうことを言う人が、自分の子の心をしっかりと育てた上でそういうことを言っているとは限らない。 むしろそういう人ほど、心ってなんですかと聞いてもはっきりと答えられない気がする。 だから、何ものかわからないものを育てよと安易に言う人は信じられない。 心理学では、心という言葉

          見えない「心」をどう育てるのか

          管理職不足の原と対策について -その4 健康管理の難しさ-

          これまで、3回に渡って管理職手不足の原因を挙げてきたが、最も厳しいのが管理職の健康管理の難しさである。 これまで、何人も教頭や校長が体調を崩して長期療養に入るのを見てきた。それは、管理職は教諭と違って長期療養に入っても、代替の管理職が用意されないことに大きな原因があると思う。 「辞めない、休まない」ことを前提にしている今の制度では、「代わりがいない」というプレッシャーで、かなりの無理をしてしまう。 ある人は教頭のとき、校内マラソン大会の練習時に突然倒れ、一時心肺停止状態に陥

          管理職不足の原と対策について -その4 健康管理の難しさ-

          管理職不足の原因と対策について -その3 責任の範囲-

          管理職の責任の範囲は年々広くなっている。 コロナ禍では特にひどかった。 学校の行事をするかしないか、するにしてもどこまで縮小するか、職員も経験がないことだからすべて校長に判断を迫ってくる。 校長が決めればそれに従いますという単純なものならいいが、そうはいかない。 コロナの状況が最悪の時期にあっても「教育的意義」を掲げて何があっても例年通りの実行を迫る者がいるかと思えば、少しでもリスクを避けたくて中止にせよという声も上がる。 中止にした方が楽だと考えている人もいた。 しかし体育

          管理職不足の原因と対策について -その3 責任の範囲-

          管理職不足の原因と対策について -その2 現実的対応-

          今回は、校長の待遇について考える。できるだけ現実的な問題として指摘していきたい。 なぜ校長になりたくないかという理由を考えるときに、これまであまり語られていなかったのは、辞めた後の待遇である。 これも、前回書いたように地域や都道府県によっても違うだろうが、私の勤務していた地域では退職した後は県費の職がほとんどない。 再任用校長制度も昨年度から廃止された。 県費での仕事がないということは、市町費での雇用となり、公民館の館長や教育委員会の会計年度職員などに限られる。そこでの報酬

          管理職不足の原因と対策について -その2 現実的対応-

          管理職不足の原因と対策について -その1 序章-

          小中学校の管理職不足が深刻になっている。 神戸市では2009年に小中学校教頭の昇任試験を受けたのは300人だったが、2019年には98人にまで落ち込み初めて倍率が2倍を切ったという。 それを受けて神戸市は2020年から昇任試験を廃止している。 「本人の意向調査と面談を経て引き上げる方針で、適任者がいれば「30代の教頭先生」もあり得る」1) としているが、その後本当に管理職は十分に確保できたのだろうか。 全国初の思い切った方向転換を断行した勇気は認めるが、「試験」をやめて、適任

          管理職不足の原因と対策について -その1 序章-

          本当の勝利至上主義とは?

          今年もセンバツが終わりました。 群馬県に初めて春の優勝旗をもたらした、健大高崎高校。 素晴らしい試合でした。 少し古い話になりますが、令和4年度の高校野球選手権は、悲願の東北勢初優勝で幕を閉じました。 優勝したのは仙台育英高校。準優勝は下関国際高校。 両校とも私立高校です。 私立高校は、全国から優秀な選手を集められます。 これが批判の的になることがあります。 高校野球では地元の代表という意識がファンの中にはまだまだ根強いので、メンバーの大半が県外からの「越境組」となると、県

          本当の勝利至上主義とは?

          ある店舗でのこと-新しい教員研修のかたちへ-

          昨日、ある保険関係の店舗に行きました。 すると、入口を入った右側、フロアの隅に7、8人の従業員が仕事用のスーツを着て一つの机を囲むように集まっていました。 最初、一部の人しか目に入らなかったので、「結構クライアント(顧客)がきているんだ」と思いました。 それにしては結構大きな声で話す声が聞こえてきます。どちらかと言えば白熱した議論をしているかのようでした。 後で聞いたら、それは顧客への対応を互いにシミュレーションしている「研修」だったらしく、同じ社員同士、しかも若い人同士で

          ある店舗でのこと-新しい教員研修のかたちへ-

          野球の神様

          教諭時代、16年間野球部の顧問をさせていただきました。 私は、中学時代は控えでしたし、高校時代はケガで退部しました。 大学ではソフトボール部で、チームは毎年のようにインカレに出場していましたが、レギュラーにはなれませんでした。 もちろん野球の指導については素人ですし、実績(戦果)にも目立ったものはありません。 新人戦では、県大会ベスト8が1回だけありましたが、後は夏の大会で10年連続1回戦突破したことくらいです。 でも、自分の中で誇りにしていることがあります。 それは、姑

          「守る」と「かばう」 ―教員の不祥事について考えるー その2

          私は、現在の学校の多くの問題は学校の制度疲労が原因だと思っています。まじめな教員ほど、制度疲労を起こした学校制度と現実に起こる問題との狭間で苦しんでいます。 特に、学級制度はもう限界に達しています。 学級は、明治24年(1886年)の「学級編成ニ関スル規則」で初めて現在とほぼ同じものとなりました1)。 今もこれを根拠としているかどうかはわかりませんが2)、このときにそれまで採用されてきた「等級制」を廃止してほぼ今の学級の形が成立しました。100年以上同じシステムが続いている

          「守る」と「かばう」 ―教員の不祥事について考えるー その2