見出し画像

MASC設立のきっかけ

DVDに字幕が無いと私はこの映画を死ぬまで見られない

2005年頃、ある聴覚障害の方が「このDVDに字幕を字幕を付けて欲しい」と署名活動をされているのをネットで見つけた。私はその方に会うことにし、筆談で話をしてみると「字幕が無いと死ぬまでこの映画を観ることができない」と、その切実さを知った。当時、ポストプロダクション、キュー・テック(レーザーディスクを世に出したパイオニアグループ)でDVDの技術支援の部署に居て、字幕を付けての再発売はまず不可能なので、ネット経由で字幕を付ける方法が無いか、模索を始めた。

調べてみると、PCでDVDを再生させ、ネット経由で字幕を表示する方法があることを確認。早速プログラムの開発に入り、実現させた。これにより発売済みのDVDに字幕が無くてもネット経由で字幕が表示できるようになり、
「Web-shake 字幕をつけ隊!」という会社のプロジェクトがスタートした。
(現「おと見」https://otomi.link/da/modules/d3downloads/

著作権の壁

字幕の配信について、著作権を調べてみると「送信可能化権」という権利があり、脚本家、原作者、監督、JASRACの著作権処理が必要だと分かった。
(DVDのような二次著作物に対しても一定の料率で支払われていた)
私は「日本脚本家連盟」「日本シナリオ作家協会」「日本映画監督協会」「日本文藝家協会」そして「JASRAC」と契約を結び、事業収入の一部を支払うことで字幕の配信を始めた。1作品ごとに権利者を調べで処理することになったが、協会・団体に属さない個人の方も居り、その場合は個別に契約書を作成した。
(現在、権利制限によって、文化庁認証団体であるNPO MASCの事業では著作権処理は不要となった)

「バベル」字幕の願いをつなぐ市民の会 発足

2007年公開映画「バベル」は洋画ではあるが、ろう者が協力して撮影を行った日本のシーンが多数あった。しかし公開してみると、洋画なので全編翻訳字幕はあるが、日本人が話すシーンには字幕が一切無かった。公開を心待ちにしていたろう者は観ることができず「バベル」字幕の願いをつなぐ市民の会が発足され、署名活動が始まった。私は字幕付きフィルムを再度作るのは困難だと考え、字幕メガネの構想を始めた。
署名は42389人集まり、配給会社は全フィルムに字幕を付けることにした。この署名の意味は、日本の映画に対する字幕付けの想いも含まれており、この問題が大きく表面化した。
*「硫黄島からの手紙「ラストサムライ」等、洋画に出てくる日本人の日本語には未だ字幕が付いていない。

障害者権利条約への署名

2007年、日本政府は、国連総会で採択された「障害者権利条約」に署名をして、国内法である「障害者権利条約」の制定に向け動き出した。

MASC設立へ

「Web-shake 字幕をつけ隊!」が動き出し、DVDに字幕を付けなかった権利元に「聴覚障害者のために字幕を配信したい」と申し出ても、断られることがあり、がく然とした。権利元から対応費用はもちろん頂かない話。字幕対応をして、DVDが売れれば権利元にはお金が入るのにどうして??ある有名なアニメの権利元からは、逆にお金を払えば字幕を付けてもいいと言われる始末。
私は無力感に打ちのめされ、映画・映像業界全体で動かなければこの問題は解決しないと確信。映画・映像業界、障害者団体、支援団体にも声をかけ、会社内でNPO設立を提案し、MASCの設立に至った。
*ロゴマークの「虹」は懸け橋の意味がある。

よろしければ、サポートをよろしくお願いいたします。 バリアフリー映画の普及に使わせて頂きます。