見出し画像

発達障がい|カミングアウトのこと

私は発達障がいに対して、かなり前向きにとらえている部類だと思う。
 発達障がいという名前がついているだけで、私の性格の一つに過ぎないし、その名前が私の何かを損なうことはない、と思ってるくらいである。

 ただ、そんな簡単なことでもなく、それなりに辛い思いもした。

 あんまり己が発達障がいの診断を受けていることを重く受け止めていなかったころ、当時の彼氏に「あ、障がい者手帳あるからそこ安くなるよ」と言って「え、さよはやっぱりそういう診断出ちゃってんの?」と言われたことは「あ、社会的にはこれはマイナスなんだ」と知ったきっかけになったし、その後ヘルプマークを付けだしてからもいろいろあった。
 (私がヘルプマークをつけだしたのは高校生からだった)

 一番大きかったのは、やはり彼氏がらみだ。
 その人には発達障がいということは伝えていなかったにも関わらず、「ヘルプマークつけているような子とは仲良くするのやめなさい」と親に言われたんだ、と言われたことだ。
 そんなことを言う人は無視すればいい、なんていう理論はもちろんわかっていたが、高校生の私はかなり凹んだ。
 しかも、彼氏自身はそれでも関わろうとしてくれているんだから、文句は言えず、誰にも言えず、一人で泣くしかなかったのを覚えている。
 それでも、ヘルプマークをつけるのはやめなかったし、怖いときもありながら、私の特性の話をしたりしていた。

 ただ、「発達障がい」という名前を出すと、それだけで萎縮したり、拒否したりする人がいることがわかって、できるだけその言葉は言わないようにした。
「私はこういう特性があるんだ」「難しい特性を抱えているんだ」とは言っていたし、少しでも知識があれば明らかに発達障がいだとわかったと思うが、今でも診断名を伝えていない友達は多い。
 まあたぶん、なんとなく察していると思うけど……(笑)。

 だから、高3が始まる前、担任に「発達障がいで、こういう特性があって……」ということを自己紹介で言ってみないか、と提案されたとき、「発達障がい」という名前を出すのはやめたい、と伝えた。
 
 私が通っていた高校はかなり民度が良かったので、それでいじめが発生することなどは心配していなかったが、レッテルをつけると、私から壁を作ってしまったように感じられる可能性があったし、「発達障がいなんだから許してよね!」という圧になる可能性もあったからだ。

 結局、「私は難しい特性を抱えていて、授業を途中で抜けたり、ちょいちょい学校を休んだりします。でも、この特性についてネガティブな感情はないので興味ある人は全然ドストレートに私に聞いてくれていいです。迷惑かけたらごめんなさい」というようなことを言った。
 実際、自己紹介後の休み時間に、「え、大丈夫なん?」「なにがしんどいん?」と聞いてくれた子もいた。
 特性を自分の口で、それほどまだ仲良くない多くの人に言うというのは私にとって結構大きいことだったが、やってよかった。
 あの提案をしてくれた先生には心から感謝している。
 それと同時に、「発達障がい」という名前を出さない、という選択をした自分も、えらいと思っている。

 レッテルというのはかなりの力を持っていて、「私は○○に属しているんです」という言葉は暗に「あなたたちとは違う」という意味を含みうる。
 違いがあれば遅かれ早かれわかるはずだし、最初からそうやって線引きすることを私は好まなかった。
 己の魅力で友達を作りたかったし、誰かに嫌われたら、それは障がいのせいではなく、私の性格のせいだ。
 学校を休むことがずるいと思っても「さよちゃんは発達障がいだし仕方ないか……」と我慢されるよりは、「ずるい!」と言ってもらう関係でありたかった。
 
 学校とか、先生とか、組織に属するときに理解してもらうときには診断名は楽だし、私もめちゃくちゃ使った。
 でも、一対一の人間関係のときに、自分に貼られたレッテルを使って理解を求めるようなことはしたくなかった。
 私の特性の一部に名前がついていて、その名前がどうであれ、私は一個の個人だから、そう接してほしい。
 そう思っているから、発達障がいということを組織に対してはびっくりするほどオープンにするし、自分でも全くネガティブにとらえていないにも関わらず、私はあまり、友達には言わない。
 「さよって変よな」「めんどくさいよな」という言葉で片付けてもらっている(笑)。

 発達障がいという観点から話したけれど、これは昨今よく取り上げられるセクシャルの問題にも当てはまると思う。
「私、レズなんだ」なんてわざわざ言わなくていいだろう。

 もし仲良くなって、「誰が好きなの?」と聞かれたら、そのとき答えればいいんじゃないだろうか。

 たくさんのレッテルが貼られる時代になった。
 でも、そのレッテルを使うべきところと、そうでないところをきちんと見極めていかねばならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?