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大麻栽培の起源


大麻が最初に栽培されたのは東アジアの新石器時代初期であり、現在の繊維用と嗜好用の栽培品種はすべて、中国の野生植物と在来種から分岐した可能性がある。その根拠を示すため、以下の論文を紹介する。


①大麻は4つの群に分けられる

図1 大麻属の集団構造

104の大麻品種から、12,010,905個の単一塩基多型(SNP)を同定し、最大尤度(ML)系統樹(Humulus lupulusを根源とする)を使用して、すべての大麻品種間の遺伝的関係を特徴づけた。

その結果、大麻品種は4つの明確に区別された遺伝的集団に分類されることが示された。

・Basal Cannabis(原始的な大麻;黄色)
中国および米国から収集された14の野生植物とランドレース2つが含まれており、19世紀の中国の在来種から派生したと考えられる。このグループは他のすべての大麻品種の起源である可能性がある。

・Hemp Type(繊維用大麻;緑)
世界中に分布する麻の品種が含まれる(野生植物5、在来品種13、栽培品種20)。

・Drug Type Feral(野生化した嗜好用大麻;水色)
南中国で収集された野生植物3、ヒマラヤ山脈の南にあるインドとパキスタンで収集された野生植物11、およびインドからのドラッグ栽培品種1が含まれる。

・Drug Type(嗜好用大麻;赤)
世界中に分布する栽培用の嗜好用品種35が含まれる。

Large-scale whole-genome resequencing unravels the domestication history of Cannabis sativa


②大麻の年表

大麻の歴史
参考文献を参照し作成

ゲノムの年代推定によれば、原始的な大麻から約12,000年前(95%信頼区間:6458年から15,728年前)に繊維用と嗜好用大麻の祖先に分岐し、新石器時代初期にすでに栽培されていた。

これは、南中国と台湾から見つかった紐付きの陶器(約12,000年前)、および日本見つかった陶器に関連する種子(約10,000年前)の年代と一致する。

中国と日本では、約7500年前から一貫して大麻繊維の遺物が見つかり、中国では、約5000年以上前の栽培大麻由来の花粉が見つかった。

初期に家畜化された大麻のわずかな品種が生き残り、約4000年前に、繊維と嗜好品タイプに分岐し、拡大したと考えられる。

少なくとも約2500年前の西中国で、大麻の儀式的、嗜好品的な使用の痕跡が見つかっている。

インド亜大陸では、約3000年前に他の作物とともに中国から導入されたと考えられている。また、約2000年前には、大麻が嗜好品としてのみ利用されていたことが記録されている。

次の数世紀にわたり、嗜好用大麻はアフリカ(13世紀)や、ラテンアメリカ(16世紀)など、さまざまな世界地域に広がり、20世紀初頭に北アメリカに到達し、その後、1970年代にはインド亜大陸から大麻が普及した。

Large-scale whole-genome resequencing unravels the domestication history of Cannabis sativa


③感想

中国人が大麻の起源は中国西部であると主張する論文。直感的に、結論ありきでデータを選んでいるのかと思った。怪しさは感じるものの、大麻の塩基配列の類似性からこの結論が導かれているので、なかなか反論も難しい。

考えられる可能性として、中央アジアなどの別地域の大麻品種で、本論文では解析されていない品種が繊維用、嗜好用の先祖に最も近い可能性がある。その他、繊維用、嗜好用の先祖が既に絶滅していて、それに最も近い品種が中国の野生の大麻である可能性なども考えられる。

大麻の起源が中国説は1つの説にすぎない事に留意したい。

参考文献
Large-scale whole-genome resequencing unravels the domestication history of Cannabis sativa

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