遥かいにしえより夏に涼をもたらして参られた扇風機様のご降臨

久しぶりにただの雑記を書こうと思う。

正直に言えば、毎週ショートショートのお題に対するネタがまるで浮かばなかったということだ。みんなで集まったときには浮いてばかりいるというのに。

もしかしたら暑さのせいかもしれない。
だいたいなんでも暑さのせいで済むかもしれない。

そういえば、今年、新しい扇風機を買った。

なんか、この酷暑だというのにのんきなこと言ってんなって感じになってない?
は? 扇風機? いつの時代の遺物?
時代はもう地下シェルターだよ、地下シェルター。暑さをしのぐの地下シェルター♪ 雨、風、こないよ地下シェルター♪ 酷暑なんかにゃおさらばだ♪ ああ、我らの我らの地下シェルター♪ セリフパート「君も一緒にこもろう!」
というCMでおなじみのあれね。

私は北海道に住んでいるので、強烈な酷暑に見舞われているというほどではない。しかし、それでもリビングにはエアコンがある。エアコンの清涼なる神の息吹が届かない部屋用の扇風機だ。
北海道の夏も暑くなったもんだ。最近何度くらいあったのだろう。今調べてみたら、43.062087 / 141.354404だそうだ。これ、温度じゃなくて緯度経度だった。
 
 
昨年の夏をもって、長らくお世話になった扇風機は鬼籍に入られた。
晩年の扇風機といったら、カタカタカタカタと音が鳴りっぱなしだった。風鈴のチリンチリンやセミのミンミンと一緒に扇風機のカタカタも夏の風物詩入りかと思われたが、ただうるさいだけだった。
たしか十年くらい使った。
つまり、最後に扇風機を買ったのは十年前。十年一昔とよく言うので、最新の扇風機はさぞかしすごい機能があるはずだ。
新搭載された機能によっては、即買い、複数買いもありうるぞと期待しながら家電量販店へ。
 
売場につくやいなや、何台もの扇風機が私に風を浴びせてきた。両足を踏ん張り、右腕で顔を隠しながら前へ進む。飛んでくる新聞紙をかわし、飛ばされた仔猫をキャッチ。などという妄想を繰り広げながら一台一台性能をチェック。
回転する羽にそっと顔を近づけ「われわれは……」とやってみる。ううむ。どうもいい音が出ない。エフェクトかかってる? 数台試していくと、驚きの機能を持った扇風機を見つけた。
私が例によって「われわれは宇宙人だ」と声をかけると、扇風機側から「イヤ、ワレワレガ宇宙人ダ」と返ってきた。
こんなこと言われて黙っているわけにはいかない。私は負けじと返す。「いいや、われわれが宇宙人だ」この時点で、声の震えは及第点といったところか。欲を言えば、背後にレーザービームの発射音などがほしいところではあるが。
 
扇風機はまた口を返してきた。
「地球人、ワレワレヲ馬鹿ニシテイルダロ」
さすがの私もこのあたりで妙だなと思い始めた。
「ワレワレガ本気ダセバ、一発デ地球消滅」
「違う! そうじゃない! 落ち着くんだ!」
「ワレワレハ宇宙人ダ。絶対ニソウナンダ」
「自分の姿をよく見るんだ!」私はスマホのカメラ機能を立ち上げた。「君たちは、扇風機じゃないか!」
 
と、だいたいこの辺までやったところで、遠巻きにだが店員さんの目が刺さるようになってきた。
 
結局、自然の風に近い送風が可能だという扇風機を購入。
音も静かで快適だ。
 
 
ちょっと今、ここまで書いたやつを読み直したんだけど、なにこれ。
なにを書いているの。
 
きっとこれも暑さのせいだ。
いや、待てよ。ひょっとすると、この暑さ自体が宇宙人からのファーストアタックという可能性はないだろうか……と書いたところで、やっぱりないかと冷静になったので筆を置く。

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