小説家の連載「18歳高3娘の彼氏が35歳?!」第2話

〈前回のあらすじ:仲良く暮らしていた3人家族と愛犬。サラリーマンの父ヒロシと、英会話講師の母アオイ、高校3年生で進路も決定済みな一人娘ノヒナコ。ヒナコは内部進学するので大学進学後も実家暮らしを続行するという。そんな中ヒナコに彼氏ができ、両親は微笑ましく見守ろうとするが・・・。〉

 見守る事を決めたとはいえ、相手がどんな男の子か、両親は気になっていた。塾で知り合った子かな?と勝手に思い、相手の子は受験大変だろうね、と言い合った。
 だがある日の休日、デートに行こうとしているヒナコが洗面所で髪を巻いている時、アオイが何気なく質問した事で雲行きが怪しくなる。
「ヒナコ、頻繁にデートしているみたいだけど、相手の男の子は受験大丈夫なの?あなたは進路決まってるから口うるさく言うつもりはないけど」
 と聞くと、ヒナコはきょとんとしている。
「え、受験?何で?」
「だって、同い年ぐらいの子なんでしょう。あなたと同年代なら受験とか、いろいろあるんじゃないの。それとも年下の子なの?」
「あぁ・・・彼は、働いているから。受験は無いよ」
「えっ、そうなの?じゃあ高卒で就職したの?若いのにえらいわねえ」
「えっと・・・」
 ヒナコは何故か気まずそうに眼を逸らす。
「違うの、彼は・・・年上だから」
「あらそうなのね。いいんじゃない?パパもママより年上だしね。何歳ぐらいなの?まあ二十歳ぐらいなら・・・」
 と母が呑気に言ったところで、ヒナコは遮るように、
「彼は30代だよ。とっても大人で、素敵なの」
 と衝撃の発言をした。
 これには母もびっくりして、
「さ、30代?!ちょっと、どういう事なの?!いくら何でも年上過ぎるでしょ!詳しく聞かせなさい」
 とまくしたてた。
 だが、既にメイクが終わった状態でヘアセットをしていたヒナコは、そのタイミングでヘアセットが完了したので、ハンドバッグをひっつかみ、家を飛び出してしまった。
「電車の時間があるから」
 ともごもご言い訳しながら。
 アオイは後ろから「待ちなさい!」と言うが、もう娘はデートに出発してしまった後だった。
 娘の爆弾発言に動揺したアオイは、リビングでシェパードのシーザーを撫でながらコーヒーを飲んでいた夫の所へ向かった。
「あなた!ヒナコの彼氏がね!」
 相手が30代だという事、娘が詳細を言わずに飛び出して行ってしまった事を伝えると、ヒロシは難しそうな表情になった。とはいえ、彼は冷静な性格なので、どうにか妻をなだめた。
「とりあえず、ヒナコに詳しい話を聞く必要がある。そのためには、俺達が冷静でいる事が重要だ。今アオイがヒナコにいろいろLINEで聞いても、余計に意固地になるだけだから、ここは俺に任せてくれ」
「でも・・・!」
「アオイ、落ち着いてくれ。心配なのは俺も一緒だよ。でも今は情報が少ないし、憶測だけであれこれ言ってしまっても意味が無い。俺がヒナコにメッセージを送るから、ヒナコの対応を見て決めよう」
「・・・わかった。あなたがそこまで言うなら・・・」
 普段家の中では、明るく情熱的な性格のアオイが目立っているが、いざという時はヒロシが主導権を握る。この夫婦はそうやってバランスを保ちながらやってきたのだ。
 ヒロシは娘にLINEでメッセージを送ると、すぐに既読になった。送ったメッセージを妻に見せる。
「ヒナコ、年上の人と付き合っているという話をさっきママから聞いた。パパとママは決して、いきなり頭ごなしに叱るつもりはない。ただ、パパとママはお前の親だから、お前が交際している人に対してきちんと知っておきたい。デートは楽しんできていいから、帰ったら彼氏について話してくれ。パパもママもお前を心配している。今日は外食しよう。ヒナコの好きなお店でご飯を食べながらゆっくり聞かせて欲しい」
 ヒナコは、
「私もちゃんと話さなくてごめんね。わかった」
 と返事していた。
 ヒロシは妻を見て言った。
「とりあえず、外食しながら落ち着いて話そう。ヒナコが帰ってくるのを今は待つしかない。俺が昼ご飯を作るから、アオイはゆっくりしていればいいよ。リラックスして」
 と言うので、アオイはしぶしぶ納得した。
 アオイは犬の散歩に行ったり、海外ドラマを見てゆっくりした。夫が昼食を作ってくれ、そうじもしてくれた。元々家事は分担していたので、普段からよくやってくれる方だったが、動揺している妻の為に心を砕いてくれているのがわかった。
 夕方、ヒナコが帰ってきたので、家族3人は外食に出かけた。自宅の近くのイタリアンレストランで、ヒナコのお気に入りの店だ。ヒナコが小さい頃から家族でよく言っている店だった。長年通っているので、店主とも顔見知り。店に入ると、ヒロシは店主に言って、奥の、観葉植物があって他のテーブルから声が聞こえにくい席にしてもらった。店はまあまあ混んでいた。テーブルについて注文が済むと、ヒロシはさっそく話を切り出す。
「それでヒナコ。相手の人は年上らしいな。いくつの人なんだ?」
 ヒナコは、難しい顔の父親に怯まず答えた。
「35歳の人だよ」
 この問いにアオイはびっくり仰天する。
「何ですって?!35歳!年上過ぎるでしょ!ありえない!」
「何で!別に年上と付き合ったっていいでしょ、おじさんと付き合う若い子は珍しくないじゃん!」
 母親のリアクションに憤るヒナコ。
「ヒナコ。ママが心配するのは当然の事だ。お前はまだ高校生なんだぞ」
 娘を制す父。
「その人とはどこで知り合ったんだ?」
「・・・Xだよ」
 馴れ初めは言いづらいのかぼそぼそしゃべる娘。
「そうか。どうして年齢の違う人と付き合う事になるんだ?」
「それは、悩み相談にのってもらって・・・進路とか」
「どうしてネット上の人に相談する必要がある?パパとママとか、学校の先生とか。友達でもいいだろう」
「別にいいじゃん!」
 ヒナコは逆ギレした。
                             次回に続く
 


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