SNSの使い方から見える地方議員たちの個性

 転勤で地方をあちこち回ってきたため、以前赴任した各地の地方議員の方々との繋がりが今も結構残っています。特に親しい方ですと、電話しあったり一緒に飲みに行ったりもしますが、そこまでの間柄でなくても、Facebookに書き込まれる近況に「いいね!」したり、コメントを書いたりと。
 もう仕事上の「取材する・される」の関係ではないのですが、Facebookのおかげでゆるく繋がり続けることができています。そういう方たちってきっと、SNSが登場する前なら「年に1回年賀状を交換する間柄」みたいな距離感だったのでしょう。

 ただ、ぼくは昔から年賀状が嫌いで、社会人になってからは、仕事関係でもプライベートでもほとんど出したことがありません。だって、普段からお世話になっている方や大切な人には対面した際に「今年もよろしくね」と言えばいいですし、遠く離れた方だって、連絡を取りたいと思ったり取る必要が出てくれば電話やメールすればいいわけですし、第一、会社の上司や同僚と年賀状を交換するのって面倒じゃないですか?誰に出して誰に出さないとか考えるのが。
 「社会人なんだから、嫌でもやらなきゃいけないこともあるんだよ」とたしなめられそうですが、半ば開き直りで「意識低い系新聞記者」を自認しているだけに、取材先の方も社内の人間も基本的に「好きか嫌いか(気が合うかどうか)」という物差しでお付き合いさせていただいております。

 話が脱線してしまいましたが、今回は「SNSと地方議員」についてでした。このテーマで書こうと思ったのは、ある親しい県会議員のSNS(具体的にはFacebook)の使い方が「いつの間にすごくスキルアップしている」と気付いたことからでした。SNSを効果的に活用されている政治家は今や珍しくありませんが、この方はネットやSNSに全く興味がなかったはずなんです。

 この県議、年齢が近いこともあって、よく飲みにも行ってました。そして、その頃に「オレ、そろそろネットをやった方がいいかなぁ」と相談を受けたことがあったのです。

 覚えておられる方もいるかもしませんが、岩手県の県会議員が県立病院の窓口対応について批判したブログ記事が炎上し、その県議が自殺してしまったという「事件」がだいぶ前にありました。いま検索しましたが2013年6月ですね。どうってことのない会話のやり取りだったのですが、相談を受けたのがちょうどその事件の直後だったので、鮮明に記憶に残っているんです。

 当時はまだ、SNSを政治活動に使う地方議員はそれほど多くありませんでした。Twitterの炎上事件が相次いでいて、ネットでは「Twitterはバカ発見器」と盛んに言われていた頃です。

 ぼくに相談した県議は選挙が強く、「若いけどやり手」という評価でしたが、ネットには疎くて、岩手県議の「事件」についても知りませんでした。ぼくは、そんなこんなを説明しながら「現時点では、ネットで票を増やすメリットよりも、炎上などで減らすリスクの方が大きいし、下手すると政治生命すら危うくなる。もともと選挙強いんだし、いま無理にやらないんでもいいと思う」と答えたんです。
 で、ぼくの助言があってかどうか、この県議は従来通りのオフラインでの政治活動を続け、当選を重ねていました。

 これは、ぼくのFacebook内の友達orフォローしている議員だけなのか、全国的にそういう傾向があるのか分かりませんが、SNSを始める地方議員が2年前から急に増えたという実感があります。先の県議をはじめ、若手・中堅はもちろん、ガラケーを使うのすら一苦労という感じだったおじいちゃんセンセイたちすら、Facebookの「友達かも」の欄に次々と登場するようになったのです。

 ことし(2019年)春に統一地方選がありましたから、今から2年前というと、ちょうど選挙準備を始める頃です。選挙コンサルタントか広告代理店かWeb系の企業が地方議員に一斉に営業をかけたのでしょうか。そう勘ぐってしまうぐらい、皆さん時期が重なっていました。

 というわけで、ぼくは日々Facebookを開くたび、旧知の地方議員の方々の政治活動に詳しくなっていきました。以下でそれらの書き込みを分類してみました。ちなみに、議員の活動地域、年齢、政党はいろいろです。保守系(自民党系)の方が若干多く、残念ながら大部分が男性です。

【内容】
・政治活動のみ
・政治活動が主体でプライベートが添え物
・プライベート主体で政治活動が添え物
・バランス良く織り交ぜている
【更新ペース】
・最低でも1日に1回
・週1〜月1ペース
・後援会会合など自身の政治イベントがある時だけ
・他人の書き込みにコメントするだけ
【文体】
・口語体っぽいフランクな感じ
・丁寧な書き言葉が主体だが口語体をうまく織り交ぜている
・少しカタい印象もあるが、論旨が明快で理知的
・役所の作文っぽい(通り一遍なタテマエや一般論が中心で中身が薄い)
【ギャップの有無】
・(良くも悪くも)対面した時と同じ印象
・意外な側面がみえる

 ぼくに相談したことがある県議は、最初はぎこちなかったのですが、いつの間にすごくスキルアップしていました。
 事務所内のスタッフが和気あいあいと作業をこなし、地元の支持者と触れ合う楽しそうな様子などが写真やイラスト、動画などを使って紹介され、随所に議員本人の人柄がにじむような工夫がなされています。もともと魅力的な方なのですが、加えて、かなり優秀なアドバイザーが付いたのでしょう。

 この方は極端に「化けた」例ですが、皆さんの書き込みを総合するに、どなたも「なるほど、いかにも、らしいなぁ」といった感じでした。
 コワモテの保守系議員が文末に絵文字の「?!♪」を多用するのは微笑ましいですし、「バイクでツーリングした」「酒を飲み歩いた」など趣味の書き込みが多い方は「たまには政治のことも書いた方が‥」といらぬ心配をしてしまいます。

 ギャップが大きいのは、主に共産党の方です。堅物でこちらが冗談や軽口など叩こうものなら2時間ぐらい説教しそうな雰囲気の議員が身辺雑記を綴っているのを読むと、「へぇーそんな側面もあるんだ」と。お堅い組織政党というイメージを逆手に取って、各議員はSNSで個性を全面に出す「ギャップ萌え」作戦で支持者獲得を目指せーという共産党本部の戦略かもしれません。いや、冗談ではなく。

 最後に、「これは逆効果じゃね?」と思ったものを挙げてみます。

①文体が「役所の作文みたい」で中身も薄い
 「●●の式典に参加しました。大変有意義な施設が完成したことを喜んでおります。今後も有権者の声を聞いて政治の道を歩んでいきます」みたいなやつです。
 こんな文章を読んで喜ぶ人はいないでしょうし、逆に「こんな中身のないことしか書けないんだ」と有権者から見透かされてしまいます。

②承認欲求むき出し
 議員をやる人ですので、一般的な市民よりも自己顕示欲や承認欲が強いのは当然でしょうが、その欲を恥じらいなく露呈させすぎなのはどうかと。
 「議会での質問が誰かから高い評価を受けた」「こんな手の込んだ料理を作った」「こんな大物・有名人と近い」などなど。その方の支持者(ファン)だったら、「センセイすご〜い!」ってなるのでしょうが、一見さんが読むとだいぶ「引く」と思います。
 
③有権者に議論を吹っかける
 まれにいるんです。地元の市民団体メンバーがSNSで行なった活動報告に対し、コメント欄に「本当にその事業は効果があったとお考えですか?お考えを聞かせてください」と書き込む、などなど。議員からいきなりそんなふうに書かれると「恫喝された」と捉える市民もいるでしょうし、それを読む第三者の心証もあまり良くないでしょう。
 たぶん悪気はなくて、純粋に議論したいだけだとは思うのですが、「政治家なのに人付き合いが苦手なのかなぁ」と気になります。

 ここまで地方議員のSNSについて何だかんだと書いてきましたが、ぼく自身は、「SNSの活用」という点からいくと超初心者です。会社にとやかく言われるのが面倒なので、Facebookはコメント欄に書くか「いいね!」するだけ、Twitterに至っては情報収集オンリーです。

 自分でやらないくせに第三者をああだこうだと論評をするのがいかにも新聞記者らしいと自分でも思います。今の会社を辞めたらSNSを全面解禁する予定ですが、その時のためにも少しずつ練習しなきゃいけないですね。noteを始めたのも、そんな考えからです。

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