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絶対に笑ってはいけない「桜を見る会」前夜祭

 いま旬の「桜を見る会」問題、ネットでも大きな話題となっています。この問題を受けたぶら下がり会見での安倍首相の表情が「かなりヤバそう」に見えました。ご本人も自覚がおありなのでしょう。
 現政権を擁護するグループ(「右派」と書くと硬派な民族主義者の方々に失礼ですので、ここで軽々に右・左というレッテル貼りはいたしません)も、ネットやテレビを中心に一斉に動き出しています。

 「批判ばかりで政策論争しない野党はバカ」「くだらないことに大事な時間を使わないで」「被災地の方々は大変な思いをしているのに」などなど。いつも同じような論法なんですね。どんな「表現」にしろ、表現に創意工夫がみられないのは残念なことです。
 ぼくはこれまでのnoteに新聞記事とネット記事の「紋切り型」について触れたことがありますので、そのうち安倍政権擁護グループの紋切り型で1本書いてみようかな。

 紋切り型については後日の話題にするして、今回の件でも感じたのは、安倍政権擁護グループには、安倍政権の問題点はよく理解しているけれど、自らの金銭や出世、名誉などの欲を満たすために(ビジネスとして)現政権を擁護している人々が一定数いるんだなぁと。

 もちろん、業界団体や大企業が与党や与党政治家を支援するのは経済活動の一環であって、自然なことです。
 だからこそ、ずっと与党=自民党とべったりだった業界団体や企業が、民主党政権が誕生した際にあれだけ大騒ぎしたわけですし、小沢一郎氏はその辺を揺さぶるのが非常にうまかったわけです。

 今回の安倍政権の擁護グループに特徴的なのは、業界団体や企業ではなく、芸能人やタレント、文化人(自称も含む)、ネット有名人といった個人事業主っぽい人が目立つことだと思います。
 「与党を応援=補助金をゲットするために業界団体や大企業が行う」という昔ながらの構図に加え、ネット・SNS時代ならではの現象なのでしょう。
 
 そして、そのグループ内でオピニオンリーダー的な立ち位置を確保できれば、有名になってカネを稼げるわけで、そんな様子をみて、政権擁護のブログや動画配信で「一山当ててやろう」という個人も参入してくる。
 ただ、安倍政権擁護で稼げる「お立ち台」の広さには限りがあるので、オピニオンリーダー的な人々は生き残りをかけた仲間割れを定期的に行う。

 この界隈をウオッチするのには、古谷経衡さんの著書「愛国奴」が非常に参考になりました。オススメです。グループの頂点に立つ「煽る人(勝ち組)」と、それ以外の大多数の「煽られる人(負け組)」。なかなか世知辛い世界です。

 話の脱線を元に戻します。どなたかもTwitterで指摘されていましたが、今回の「桜を見る会」問題は、過去の「モリ・カケ」よりも分かりやすいんです。特に前夜祭の方が。
 分かりやすいだけに、話の転び方次第で致命傷になりかねない。何せ「ニューオータニで5000円会費の夕食会」ですから。そこに重ねて、「唐揚げ増量」がぶっ込まれたわけですから。

 笑ってしまいました。後援会の人々を集めた旅行なのに、これでは「政治資金パーティー」みたいではありませんか。

 政治資金パーティーといっても、政治家やゼネコン、業界団体の幹部以外の方にはなじみが薄いと思われますので、ご説明いたします。要は、政治家がお金を集めるために有料で開催する宴会のことです。政治資金規正法で定められております。

 地方回りの新聞記者をしていると、その地域の国会議員や都道府県議、市議の政治資金パーティーを取材することが結構あります。
 「取材」といっても、来賓で来た肩書きある政治家が失言した場合などを除き、ほとんど記事にはならないので、情報収集というか付き合いみたいなものです。

 「自分のパーティーに新聞記者が取材に来た」というのは、地方の政治家にとっては「箔が付く」みたいな感覚もあるようです。そんな経験から、パーティーについて触れます。
 ここ数年はこういう取材をしておりませんので、少し情報が古いことをお断りしておきます。ぼくが見てきた政治資金パーティーはこんな感じでした(ほぼ全て自民党です)。

 ①会費(パーティー券1枚の値段)は、
  ・大物国会議員は3万円
  ・多くの国会議員、大物都道府県議は2万円
  ・多くの都道府県議、それなりの市議は1万円
 ②政治資金として懐に入る収入は、
   収入=会費−(飲食代+会場費+事務費)
  で、料理をショボくするほど実入りは増える
 ③「パーティー券を買って会場に来ない人」が多いほど収入は増える
 ④そもそも始めからパーティー券を売った人数分の料理は用意しない
 ⑤立食形式であれば料理の少なさ・ショボさをごまかしやすい

 秘書や事務所スタッフから聞いた話を総合するに、収入はだいたい「パーティー券の半額より少し低いぐらい」が相場ようです。
 当然、パーティー券の価格が高ければ豪華な料理が並ぶことが多いのですが、「これはケチりすぎだろ」というパーティーもありました。名誉のため、政治家の個人名は挙げませんが。

 で、そういうケチっぽいパーティーで大皿に山盛りになっているのがたいてい、以下の3つなんです。

 唐揚げ、焼きそば、助六寿司

 政治資金パーティーは個人より企業・団体からカネを集めるのが一番の目的であり、集まる人たちも「分かって」いますので、ちょっと料理がショボくても苦笑いで済みます。
 でも、今回話題となっているような後援会の旅行ですと、個人(経費で精算できない個人負担)での参加の方も一定程度いるでしょうから、「安く上げるために唐揚げの量を増やした」と言われると、参加した支持者はあまりいい心象を抱かないかもしれません。とはいえ、首相の後援会の旅行に参加するぐらいですから、そんなことで気分悪くはしないか。

 いずれにせよ、今後、政治家のパーティーや後援会の旅行では、「唐揚げの有無and量」がネタになることは必至です。

 ところで、今回の唐揚げ報道は毎日新聞が発信源のようで、ネットでは「面白いんだけど、本質的な指摘ではないし、スポーツ紙みたい」と違和感を唱える方もおりましたが、ぼくは「毎日新聞よくやった!」という受け止めでした。

 こういう系のネタって、新聞社だと「我が社の報道の品位を下げる」とか内部で異論を唱える幹部が出てきて記事化に至らないケースも多いと思うのですが、よくぞこのトーンで掲載してくれました。
 だいたい「品位」なんて言葉を軽々に恥じらいもなく使う新聞関係者って、第三者に語るべき中身を持っていないんです。

 ここまで書いてTwitterをのぞいてみたら、「ニューオータニで5000円」の部分はもう安倍首相側が逃げを打つ段取りができている可能性が高いので、「桜を見る会」への大量動員そのものを追及すべきだーという趣旨のツイートを複数見つけました。

 こうした「気を緩めるな系」の方たちがぼくの文章を読んだら、「5000円や唐揚げで喜んでいる、安倍首相側の術中にハマった愚かなヤツ」って思うかもしれませんが、いずれにせよ、この問題についてはぼくもぼくなりに注視していくつもりです、とても問題だと思いますので。

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