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トークンエコノミーについて考えてみたら、ライブアイドルが実は最新型なんじゃないかと気付いた

最新のテクノロジーとか手法で、何か解決出来ないかと考えるのが割と好きなので、トークンエコノミーとかフィンテックとかぐるぐる考えてた時に思いついた話だ。

少し話題になっていたが、承認欲求型のSNSは廃れるんじゃないかという話がある。今はみんな、いいねを押しているが、少しずつ疲れ始めていて、もっと自己実現的なSNSやクローズドコミュニティに変容するんじゃないかという話題である。

この2年くらい、重要な話題や情報がオープンな場所に出なくなっているというのは現実的に存在して、例えば、現在で言うならオンラインサロンという存在が、小さなコミュニティを形成している。これが1000人程度の規模になると、大概何かの技術や余剰を持った人間が出てきて、みんなそれぞれ何かを出せば、"価値"の交換が成り立つと言われている。

"お金"や"情報"の移動コストをテクノロジーはどんどん下げている。"価値"を基準にした新しい構造をアイドルに置き換えてみたらどうなるか、考えてみた。

 

【"価値"を基準にする、とは】

今、社会は法定通貨が安定的に存在する原則の上で生活をしている。例えば、それは労働の対価として法定通貨を得て消費をする、といういわば当たり前の世界の話だ。

これに対し、"価値"を基準にすると、何かスキルを持っているとか人脈があるという事を評価した時に、『トークン』をあげる。そのもらった『トークン』をまた違う誰かに使うことで、コミュニティの中で法定通貨ではない、独自の循環が生まれることになる。

アイドルに置き換えてみよう。

例えば、A-sideというアイドルイベントがあり、そのイベントに参加したアイドル、運営、ファンにアプリを入れてもらい、A-Coinという『トークン』を発行する。ファンはパフォーマンスなどが良ければアイドルにA-Coinをあげることが出来る。アイドルはそれを使って運営からイベントの時間を買うことが出来る。運営は来てくれたファンにA-Coinを渡す、という図だ。

ここで言う価値は

アイドル-パフォーマンスや握手などの接触の満足度という価値

運営-会場のライブ時間という価値

ファン-足を運んでくれるという価値

というそれぞれの価値に対して、A-Coinという形で循環をさせている。

 

トークンエコノミーの考え方として、これまで法定通貨では正しく"値段"がつかなかったものに対して、評価をして"価値"を認めていくという前向きな姿勢がある。

アイドルの持つ"価値"というのが、前回記事で書いたように分断の上位におけるビジネスとして資本が動いていることを評価軸としてしまうと本人も幸せではないんじゃないかという疑問と、歌がうまいとかダンスがうまい、かわいいという言語化しやすいレベルじゃない何か、をこの『トークン』で顕在化させることでもっとアイドルというコミュニティを安定させれるのではないかと思ったのだ。

それに気付いたのは、ライブアイドルの特殊性だ。

 

【アイドルビジネスの源流にあるもの】

前回記事で、分断の下位を見た時に年齢や会場規模の拡大といった「成長の物語」から外れたライブアイドルという層をマーケティングで語る時に除外していないか、と語った。

地下アイドルの中でも、ライブアイドルと呼ばれる人達は"売れたい"、"承認欲求を満たしたい"というような、よくアイドルを分析する上で出てくるような言葉とは別次元のクローズドなコミュニティ内にあると考えている。

アイドルというパフォーマンスに対して真摯であり、それを応援するファンもCDが何枚売れた、オリコンのランキングに入ったという評価軸を持っていない。その証拠に宍戸留美が行ったクラウドファンディングでは、音楽配信用楽曲、MVの制作に対し、成功をしている。これはファンとの"信頼"、"価値"を評価されているから、上手くいったという訳だ。

 

地下アイドルに限らず、アイドルの多くが自分の価値を見失ってつまづく。そして、平日も休日もチェキや握手券を売って、法定通貨を得る。この画一的な価値観から抜け出す=ライブアイドル化することで、アイドルという文化そのものをアップデート出来るのではないだろうか。

今は、ライブアイドルという構造には、アイドルとファンの間に信頼というゆるい繋がりだけが存在している。そこにトークンエコノミーを持ち込むことで、コミュニティ内に新たなゆるい結束が生まれるのだ。

 

【トークンが生み出す結束】

自分が、トークンエコノミーやシェアリングエコノミーに期待しているのは、"ゆるい結束"にある。

B2BやB2Cのような売買を元にした関係性ではなく、C2Cの上に存在して、価値や思想の元に繋がる関係性のゆるさ、というのは、かつて近所に醤油を借りに行けたぐらいの、何かが余っているならそれを循環させていくという社会の再構築に繋がる。

例えば、A-Coinというものを考えてみたが、ファンからもらったA-Coinを溜めたアイドルが貸し切りワンマンをするのもいいだろう。そこでアイドルから大量のA-Coinを受け取った運営は別な日にA-Coin付与3倍デーを作って、そのアイドルとは別な子にA-Coinを循環させることも出来る。

これを繰り返すことで、見えなかった"価値"がコミュニティに属する中でA-Coinと共に嬉しいコトを循環させていく、と結束へと繋がっていくのである。

 

【クローズドコミュニティの質を上げていく】

ライブアイドルというのが、クローズドコミュニティであるという話をしたが、得てしてディープな趣味のように語られがちではないだろうか。確かにAKB48のようなマスアイドルに対して、ライブハウスなどでの活動、地上波に出ない地下化した、という形容をもってすると、深化は正しいのかもしれないが。

しかし、言い換えれば、ライブアイドルの先駆けである水野あおいの文脈は桃井はるこによって秋葉原に持ち込まれ、電気街からアイドルの街に変えたことを考えると、ライブアイドルというのはある種の本質である、というのが持論だ。(これについては同時に、田村ゆかりによって声優界にも波及して、後のディアステージにも繋がる話だ)

例えば、最初の段で、重要な話題や情報がオープンな場所に出なくなっているという話をしたが、そのコミュニティメンバーと一緒じゃないと入れないとてつもなく美味しい寿司屋の情報は”価値”が高い。昔、仕事で某グルメサイト関連の方と話した時に、行ったお店の情報を自社サイトではなく競合サイトでも見て、本当に評判いいんですねと言ってたのは笑い話だが、もはやそう言ったサイトを店側が掲載拒否して出てこない情報である。

これをアイドルのクローズドコミュニティの質に置き換えた時に、本人達のパフォーマンスの質、観客の応援する質、開催する箱の質、スタッフ、音響、照明の質………色々な捉え方が出来るが、もっと価値を向上出来る気がするのだ。コミュニティのライブに初めて参加したアイドルが、チェキの売上げ枚数ではなくA-Coinで自分の価値を可視化出来て、歌を頑張ろうと思ってくれたら、それがコミュニティの価値の向上にも繋がるという上向きの流れが起きる。

シェアリングエコノミーの考えに則すのであれば、質の高いスタッフのいる秘密のライブハウスをコミュニティでシェアして、コミュニティ限定ライブで使うというのも、クローズドコミュニティの質の高い情報になり得るかもしれないのだ。

 

"情報"に値段をつけて売る時代は終わろうとしている。サブスクリプションはまさしく1曲いくらの時代に終わりを告げた。そしてライブに関する収益が上がっているのは、体験の"価値"にみんながお金を払い始めているからだ。

だから、ここでアイドルのライブの"価値"をもう1度考え直すべきだ。握手券の売れ行きや売れたCDの枚数ではなく、ステージの振る舞いに立ち戻るべきではないか。そして、その"価値"に新しい時代の評価を加えれば、アイドルの文化だけじゃなくて、社会構造全体にも繋がる可能性があるのである。

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