長井りんご

京都のしがない大学生(だった) 虚実ないまぜでお送りしています

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カロリーメイト強く噛む

食事のこと、生命維持活動としてしか見ていない。 『今日は晩ご飯にこれを作る!』とか『旅行に行ってこの地方のこの料理を食べてみたい!』とか、そういう食を楽しむ欲求が全然ない。 美味しいものを食べて何も感じないわけではない。人とご飯に行くのは楽しいし、大抵のものを美味しいと思う。ただ、一流シェフが作った最高の料理を口にするときも、家で冷凍ご飯をチンして食べるときも、殆ど同じテンションなのである。人間として何かが欠けているのではないかと心配になる。 一方で私がただ『違いがわからな

    • 鴨川・学生最後の

      この春大学を卒業し、京都を離れる身である。 そういえば京都についてまっすぐ書いたことがないなと思ったので、書く。 京都が好きだ。 たぶん森見登美彦の小説の影響が大きい。夜は短し歩けよ乙女とか、四畳半神話大系とか、まあそういう作品に触発されて京都にやって来た大学生は少なくないだろう。私もそういうありきたりな学生の1人なのだ。 京都のいいところは、過去と現在、自然と文化、みたいな相反する概念が共存できているところだと思う。歴史ある建造物と現代的な建物が層をなして干渉も離別もし

      • 世界で一番尊敬しているドS数学教師について

        私が人生で出会った中で最も頭が良いと思う人間は、地元の塾のドS数学教師である。 ドS数学教師には高校時代にお世話になった。東京で大手予備校講師として華々しくデビューしたのちに地元に舞い戻り、私の通っていた塾で数年間講師をしていた人だ。現在は起業し新たな道を進もうとしているらしい。博識で話し方が知的でおまけにコミュ力も高い、身近にいる懐もスケールもビッグな人間代表である。私も先生のようなビッグな人間になりたいものなのである。 前回会ったのは3年半ほど前、大学1年の夏に合格報

        • 夢日記ベスト盤

          銃撃戦の夢と、デカいエレベーターに乗る夢と、知らんコインランドリーの中を走り回る夢をよく見ます。 人生に刺激を求めているのだろうか。 大学の授業で夢分析について学んだことがある。その講義のレポートで、最近見た夢を記録して深層心理を考察する、というものがあった。それをきっかけに今でも夢日記をつけるのが習慣になっている。朝起きてスマホのメモを開き、覚えている範囲で文字に書き起こすのだ。 前述の講義を受けてからもう約3年経つので、夢日記もそこそこの量が貯まってきた。せっかくな

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        カロリーメイト強く噛む

          同窓会前日、恩師と恋バナをする。

          高校の部活同期と、当時の顧問を交えて飲もうという話になった。参加者はいつもの如く、私・友人A(22歳女・容姿端麗)・友人B(22歳男・挙動不審)である。 元顧問はもう我々の母校を離任し、今年度から遠くの高校で教頭先生をやっている。 私が『お忙しい中来てくださってありがとうございます』と言うと先生は『今の職場は××高校(我々の母校)ほどブラックではないので全然大丈夫ですよ』と冗談とも本気ともいえないような表情で仰ってきた。 注文を済ませ、美味い飯とともに思い出話に花を咲かせ

          同窓会前日、恩師と恋バナをする。

          大後悔時代

          風邪。デカ風邪を引いた。 ここ数日自宅療養をしていたが、地元の海岸くらいざらつく喉・日本海のごとく荒れ狂う鼻水・ただでさえ人生はダルいというのにそんな通常時の人生と比較しても実に8割増しの倦怠感・逆に34℃を叩き出す体温計・関係ないけど普通に汚い部屋・・・等の種々の症状を前に、かよわくうら若き乙女こと私はひれ伏す他に術がなかったという。 風邪のときは水分補給が肝要である。 田中みな実は美容のために1日2Lの水を飲むらしいが、私は健康を取り戻すため1日3Lは水を飲んでいた自

          大後悔時代

          秋、広島にて、愛をこめて

          広島に1泊2日で旅行に出かけた。中高の同級生、私を含めて3人。部活同期として共に笑い、共に泣き、締切前は共に廊下を駆けずり回った仲である。 我々は朝に広島駅で合流した。 久々に会った友人A(22歳女・容姿端麗)は相変わらずのおしゃれさんで、友人B(22歳男・挙動不審)は高校時代からは飛躍的な進化を遂げていた。これは想像もしていなかった事態。私はこんなBなど知らぬ。Bはクタクタのパーカーに脚が長いせいで妙に半端な丈になってしまっている細身ジーンズにどこの何の試練をくぐり抜け

          秋、広島にて、愛をこめて

          火を見る

          五山送り火。 京都の夏の風物詩である。お盆に帰ってきたご先祖様の霊を見送るための火だとされているらしい。 だが、そんな由来の話は正直なところ二の次なのである。大学進学を機に京都に越してきた身としては、送り火はありったけの京都感を味わうための一大イベントという認識にすぎないのだ。 凡庸な大学生とはそういうミーハー心を主成分にしている生物なのである。 目の前を華奢な黒髪女性が彼氏とおぼしき男性に手を引かれ通りすぎていった。 大学の付属農場前道路である。15分程前まではほと

          エブリデイ聖地巡礼

          森見登美彦が好きだ。 私と森見(以降おこがましいが敬称略)との出会いは9年前にさかのぼる。中学入学前の春休み、何の気なしに手に取ったその本こそが、のちに我が人生を大きく変える森見の著書との出会いであった。 その本(ちなみに『ペンギン・ハイウェイ』)が大好きになった私は中学の図書館で森見の本を読み漁り始め、すぐに大ファンになった。 森見は京大在学中に執筆した作品でデビューを果たしている。作品内には京大の学生や京都の町並みが度々登場する。私はその描写に触れるごとに京都という町

          エブリデイ聖地巡礼

          21歳、雪を食う

          雪が好きだ。多分、全世界の人間で上位20%に入るくらいには好きだ。 新垣結衣は『降る雪が全部メルティー・キッスならいい』と述べているがその論理はひどく誤謬をはらんでいる。降る雪は降る雪だからいいのだ。他の何にも代替されようのない素晴らしい気象現象なのである。そもそもメルティーキッス『なら』ってなんだ。新垣雪嫌いなんか。雪いいだろ。百歩譲って『降る雪は雪ですごくいいし、降る雪とは別にメルティー・キッスが降ってきたらそれはそれでいいかもしれない』って言え。 雪のことはずっと好

          21歳、雪を食う

          土壌物理学実験班親睦会レポート

          1.はじめに 当該飲み会はある授業内で偶然組まれた実験班に私が勝手に愛着を持ちすぎるがあまり開催を決定したものである。 2.背景 前期の授業。名前の順で決まっただけの4人の実験班。砂に電気を通したり土を捏ねくり回したりしているうちになんとなく仲良くなり今に至る。 仲良くなり、と記述したが、正直仲が良いと言えるほどの自信はない。集まると楽しいけれどいつも何だかぎこちない。なにせ班員全員内向的(控えめで奥ゆかしく聞き上手ともいう)ゆえ話を回す人がいないのだ。実験の時も全員が何の

          土壌物理学実験班親睦会レポート

          枕元にパッションフルーツ

          私のアルバイト先はケーキ屋である。稀に試作品や期限の近いケーキを貰って帰ることがあり、そういうときは大抵誰かにお裾分けをする。 先日ケーキを渡した相手は『申し訳ないから』と言って事あるごとに何か返してくれようとする人だった。 ある日、お昼ご飯を食べていると彼が突然『お腹空いてる?』と声をかけてきた。 私は『今飯食ってんだから当たり前だろ』と考えうる限りで最も心象の悪い返答をした。好きな子には不器用になってしまう中学男子のアレである。ただ今回の場合そういうわけでもないので実際

          枕元にパッションフルーツ

          学園祭にて芋を売る

          11月下旬に行われる我が大学の学園祭。私のクラスは特段騒がしい人間がいるわけでもないのに何故だかすこぶる仲が良く、誰かが『クラスで模擬店やろう』と言うと、とんとん拍子に出店が決まった。 売るのは秋の味覚石焼き芋。日に日に寒さを増すこの頃の気候にピッタリのナイスアイデアである。 迎えた初日。宣伝担当の私はとりあえず看板を掲げて吉田南グラウンドをウロウロし周囲の店を偵察した。 グラウンドには様々なコスチュームを身にまとったミニスカ女子達がいた。普段構内にそのようなきらめきガー

          学園祭にて芋を売る

          おじさんがくれたほうじ茶ラテ

          2週間にわたるインターンが終わった。 初日はもちろんド緊張。慣れない土地でひとりきり、もちろんインターンなんて初めて。でけぇキャリーバッグをごろごろさせて何度もつまづきながらサラリーマンの聖地に降り立った。慣れないパンプスを履いた足にはいくつも靴ずれができていた。 それから2週間が過ぎ、私は今帰りの新幹線の中でこの文章を書き始めた。足元にはバカデカキャリーバッグ。手元にはほうじ茶ラテ。 このほうじ茶ラテはインターン先のおじさんが帰り際にくれたものである。 それはそれは馴

          おじさんがくれたほうじ茶ラテ

          ほろにがカヌレ

          『四月は君の嘘』という作品のヒロインの好物が確かカヌレで、当時中1だった私はそこでカヌレというものの存在を初めて知った。 大阪の百貨店に行ったときカヌレが売っているのを見つけ、珍しくおねだりをして親に買ってもらった。初めて食べたカヌレは本当に美味しくて、私はそれが大好物になった。 カヌレといえば高校1年生の頃のほろ苦い思い出がある。 当時私には好きな人がいた。彼は『細長い』という形容詞が似合うようなひょろい人間で、背筋はぴんとしている癖にありえんくらい首が前に出ていて、か

          ほろにがカヌレ

          部活と羨望とサイダーの味

          高校時代の部活同期が下宿にやって来た。彼女と知りあったのは確か小学5年生のときだったから、なんだかんだもう10年来の友人である。晩ご飯を食べてからふたりでコンビニに行くと、ふと赤い缶に入ったコーラが目に入った。 『Coca-Cola』の筆記体を目線でなぞりながら、『約20年生きてきたけど、コーラって未だに飲んだことないな』と呟くと、彼女は『マジぃ?』と言い、酒選びを中断してこちらを振り向いた。『じゃあ今日飲も』 私が返事するより先に、Coca-Colaが2本カゴに入れられた

          部活と羨望とサイダーの味