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宝島社の「悪質な盗作物」!

情報文化研究所(山﨑紗紀子・宮代こずゑ・菊池由希子)が執筆し、私が監修した『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』(フォレスト出版)は、2021年4月10日に発行された。おかげさまで、現在第12刷まで増刷され、発行部数は10万部に迫る勢いになっている。

さて、本書発行から約1年後の2022年5月14日、齋藤勇監修『思い込みで誤った情報を選択しないための必須教養 認知バイアス見るだけノート』(宝島社)という書籍が発行された。

結論から先に言うと、この『思い込みで誤った情報を選択しないための必須教養 認知バイアス見るだけノート』(宝島社)は、『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』(フォレスト出版)の構成・項目内容・文章などの「本質的特徴」を根拠として、概ね全体的に項目の順番などを変えながらコピー&ペーストし、専門家ではないライターが少しずつ言い回しを変えながら適当にまとめた「悪質な盗作物」なのである!

宝島社への質問状

2022年12月16日の『情報を正しく選択するための認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学編』発行にともない、下記の「質問状」を宝島社に内容証明郵便で送付した。

                                                                                                    2023年1月20日
株式会社宝島社 代表取締役社長 蓮見清一 殿
『認知バイアス見るだけノート』監修者 齋藤勇 殿
『認知バイアス見るだけノート』執筆協力者 玉木成子殿、千葉あかり殿、山本洋子殿、村沢譲 殿、野村郁朋 殿、工藤羽華 殿、三ツ森陽和 殿

            株式会社 フォレスト出版 代表取締役社長 太田宏
                 『認知バイアス事典』監修者 高橋昌一郎
               『認知バイアス事典』執筆者代表 宮代こずゑ

 貴社は『認知バイアス見るだけノート』(以下、貴社刊行物)を2022年5月に発行しております。
 貴社刊行物は、弊社が2021年4月に発行した『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』(以下、弊社刊行物)の「本質的特徴を直接感得することができる構成・内容・文章」となっており「翻案権の侵害」および「著作権の侵害」に該当するものと考えられます。
 弊社では、弊社刊行物が好評をいただいていることから続編を2022年12月に発行しました。貴社刊行物が弊社刊行物と誤認を与える可能性もあり、貴社の見解を質したく存じます。下記の質問状に2023年2月20日までに回答いただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
 なお貴社の回答如何によっては、出版差止・重版差止・書籍回収・損害賠償請求などの法的措置を取る可能性があることを申し添えておきます。

質問状

1. 構成における類似点について

【1-1】貴社刊行物は「認知バイアスへの3つの学問からのアプローチ」(p.4)として「論理学、認知科学、社会心理学」を挙げています。しかし、「認知バイアス」に対してこれらの3つの学問分野からアプローチするという発想そのものが弊社刊行物監修者・高橋昌一郎の学術的見解に基づく独自のアイディアであり、他に類を見ない弊社刊行物の極めて独創的な特徴です。貴社刊行物は弊社刊行物を「主要参考文献」として挙げており、貴社刊行物監修者は弊社刊行物の内容を参照した上で執筆していることから、「既存の著作物に依拠している」状態に該当するにもかかわらず、この学術的見解の引用に関する記載がまったくありません。この学術的見解の「盗用」について、どのように認識していますか?(研究活動において、他の者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語をその者の了解又は適切な表示なく流用することを「盗用」と呼びます。立正大学名誉教授・齋藤勇氏は、心理学の研究者である以上、「盗用」が何を意味するのか、よくご存知のはずです。)

【1-2】弊社刊行物「第Ⅱ部」の20項目すべてが貴社刊行物で使用されています。具体例を挙げると、貴社刊行物「Chapter 1」の項目4、5、6、7、8は弊社刊行物「第Ⅱ部」の項目1、2、3、4、5と内容・順番が完全に一致し「Chapter 1」の項目9、10、11は弊社刊行物「第Ⅱ部」の項目9、10、11と内容・順番が完全に一致しています。個々の現象はいずれもよく知られたものとはいえ、これらを「認知バイアス」として捉えたのは弊社刊行物独自の学術的見解であり、項目選定のために監修者と3人の執筆者が何度もミーティングを重ねて相互に重複がないように選択した結果として導かれた20項目です。その20項目が完全に一致するということは、貴社刊行物が項目を「盗用」したものとしか考えられませんが、この点について、どのように認識していますか?(なお、以下の事例について「第Ⅰ部」「第Ⅲ部」でも同様の指摘ができますが、ここでは煩雑になるため「第Ⅱ部」のみを対象に取り上げます。)

2. 各項目の内容・文章における類似点について

【2-1】弊社刊行物「第Ⅱ部」と同一項目の貴社刊行物の内容について確認したところ、引用されている研究が完全に一致していました。弊社刊行物「第Ⅱ部」で引用した研究が貴社刊行物で割愛されている部分はありますが、貴社刊行物だけで独自に引用した研究は1件のみしかありません(「1917年にフランスの心理学者エミール・ブラワックが発表した論文」p.32という1カ所のみ)。さらに弊社刊行物の執筆者・宮代こずゑが、とくに学術的見解から紹介した研究までもが一致しています(「第Ⅱ部」項目3の「多感覚統合」)。引用されている研究が完全に一致しているということは、貴社刊行物が弊社刊行物を「盗用」している重大な証拠とみなせますが、この点をどのように認識していますか?

【2-2】弊社刊行物は、単に「認知バイアス」を定義し説明するだけではなく、その具体例や日常生活でその知識を活かすためにどうすべきかという事例について、執筆者が独自に考えたアイディアを紹介しています。貴社刊行物においては、それらの事例についても完全に一致していました。

具体例:【弊社刊行物】単に「休憩を取ればいい」というものではなく、ぼんやりとリラックスすることが重要である (pp.146-147)→【貴社刊行物】休憩を取るという意識ではなく、リラックスするように心がけてください (p.61)

具体例:【弊社刊行物】現在自転車の片手運転は道路交通法で禁止されている。いわゆる「ながらスマホ」は法律違反なのだ。したがって、自転車にスマートホンを固定して使える器具も売られているが、これは問題を解決したと言えるだろうか? (p.155)→【貴社刊行物】自転車にスマホを固定できる器具は、道路交通法で違反とされている片手運転は回避できますが、じつは本質的な問題を解決できていません。(p.105)

具体例:【弊社刊行物】たとえば、朝、学校に行く前に親とちょっとした口論になったとする。しかし、朝の口論のことは忘れた休み時間に、友人がいたずらを仕掛けてくる。いつもの自分ならば一緒になって笑えるが、その日はそんな気持ちになれず、友人に対する怒りを感じる。さて、この「怒り」は、本当に友人のいたずらによって喚起されたものだろうか?実際は、朝の親との口論によって引き起こされていた感情を、友人のいたずらのせいだと勘違いしているのかもしれない。(p.118)→【貴社刊行物】たとえば、朝、親と喧嘩した子どもがそのまま登校したとします。学校に着くと友人がいたずらをしてきて、いつもは怒らないにもかかわらず、その日は怒ってしまった……。このケースでは、友人のいたずらに怒ったというよりも、朝に親と喧嘩をして引き起こされた感情を、友人のいたずらのせいだと勘違いして怒ってしまったフラストレーション攻撃現象です。(p.107)

具体例:【弊社刊行物】自分が落ち込んでいる自覚があれば、より意識的に「気分の切り替え」を行うためにも、友人に電話したり、家族に自分の失敗を笑い話として話したり、あるいは自分の好きなことをして静かに過ごしたりといった気分転換を早めに行い、落ち込みループを未然に防ぎたい。(p.127)→【貴社刊行物】嫌なことがあって落ち込んでしまったときは、意識的に気分の切り替えを行うために、気の合う友人に連絡したり好きなことをして過ごしたりして、落ち込みの悪循環を未然に防ぐ意識が大切です。(p.161)

弊社刊行物「第Ⅱ部」と同一項目の貴社刊行物の内容について確認したところ、貴社刊行物で割愛されている部分はありましたが、貴社刊行物だけで独自に表現されている事例は見当たりませんでした。具体例や日常生活でその知識を活かすためにどうすべきかという事例までもが完全に一致しているということは、貴社刊行物が弊社刊行物を「盗用」している重大な証拠とみなせますが、この点をどのように認識していますか?

【2-3】弊社刊行物の文章が貴社刊行物において、ほとんどそのまま用いられている箇所も全体的に多く見受けられます。

具体例:【弊社刊行物】ハンスの例のように、ある人の挙動が別のだれかの行動に影響を与え、結果を歪めてしまうような現象をより広くとらえて実験者効果と呼ぶ。(pp.161-162)→【貴社刊行物】賢馬ハンス効果のように、人の挙動に影響を受けることで、自分の意見や行動を変えてしまう認知の歪みを「実験者効果」とも言います。(p.19)

具体例:【弊社刊行物】スムーズに行動したり危険を避けたりするのに日々大きく役立っている (p.99)→【貴社刊行物】日常生活のスムーズな行動を助けたり、危険を避けることに大きく役立っている (p.23)

具体例:【弊社刊行物】「見えている」ものとは、目に映る形そのままというよりは、「自分の心が解釈した結果」である (p.100)→【貴社刊行物】「見える」ということは、自分の脳が「このように見える」と解釈した結果なのです (p.24)

具体例:【弊社刊行物】以前見たことがある対象に再び接する際は、(たとえそのことを忘れていたとしても)比較的スムーズに知覚される (p.115)→【貴社刊行物】一度見たことのあるものを再び知覚する際、初めて見るものに比べてスムーズに知覚できる (p.30)

具体例:【弊社刊行物】私たちは日々、テレビや雑誌、ネット、人のうわさ話などを通じてさまざまな情報に触れる。時には不確実な情報が独り歩きしてしまい、デマの拡散や特定の個人のバッシング、さらに「炎上」へつながることもある。(p.140)→【貴社刊行物】私たちは日々、テレビやインターネット、雑誌などからさまざまな情報を得ています。それには不確かな情報も多く含まれ、悪質やデマやうわさ話の拡散により炎上するものも少なくありません。(p.132)

具体例:【弊社刊行物】人は自分の今の気分に沿って物事を記憶したり、思い出したり、判断したりする傾向がある。(p.124)→【貴社刊行物】私たち人間は、自分の今の気分に沿って物事を記憶したり、思い出したり、判断したりする傾向があります。(p.158)

具体例:【弊社刊行物】目が冴える薬(実際には偽薬)を服用した不眠症患者は、自分の症状を「目が冴える薬を飲んだからだ」と考え、眠れない自分を責めたり感情的になったりということが減り、むしろリラックスできたのだと解釈できる。(p.118)→【貴社刊行物】不眠症の人に”目が冴える”偽薬を与えたところ、不眠症の人は、眠ない理由を薬を飲んだからだと考え(誤帰属)、眠れない自分を責める気持ちや不安定な感情が減ったと言います。その結果、リラックスして早く眠ることが出来たのです。(p.163)

具体例:【弊社刊行物】この郵便局員の問題は4枚カード問題と同じ構造だが、チェックする必要があるのは㋑と㋩であることは、比較的理解しやすいのではないだろうか。(p.166)→【貴社刊行物】問題の構造的には4枚カード問題と変わりませんが、こちらは比較的わかりやすく短時間で正解できたのではないでしょうか。(p.203)

これほどまでに文章の記述が一致しているということは、貴社刊行物が弊社刊行物を「盗用」している重大な証拠とみなせますが、この点をどのように認識していますか?

3. 著作物としての不適格性について

【3-1】弊社刊行物は、本文内で引用している論文の書誌情報をすべて掲載しています。しかし、貴社刊行物には本文内で引用している論文の書誌情報がまったく掲載されていません。したがって、貴社刊行物は、「著作権法」第48条(「著作物を引用する際には、原則として出所の明示が求められる」)に抵触しているものと思われます。この「著作権法違反」の事実について、どのように認識していますか?

【3-2】そもそも貴社刊行物は、専門的な原著論文を入手して執筆者が理解した上で引用しているのではなく、弊社刊行物から「孫引き」しているとしか考えられません。こちらも「著作権法」第48条(「引用された文献を原典にあたることなしに、引用することは孫引きと呼ばれ、本来行うべきではない」)に抵触しているものと思われます。この「著作権法違反」の事実について、どのように認識していますか?

【3-3】誰がどの項目を執筆したのか、執筆者の情報が欠落しています。「執筆協力」と記載されている玉木成子・千葉あかり・山本洋子・村沢譲・野村郁朋・工藤羽華・三ツ森陽和の各氏について調べたところ、論理学・認知科学・社会心理学の研究者としての業績がまったく見当たりません。非専門家が弊社刊行物から孫引きして適当に執筆した結果、貴社刊行物は学術研究に関する多くの誤りを生じさせています。

具体例:【貴社刊行物】p.26「多くの子どもがたった1回の声かけで絵の見方を変えることが出来たのです」という文章は、【弊社刊行物】p.103 のKyle(2018)の実験からの孫引きと思われますが、この実験は「大学生」を対象にしていますから「子ども」という表現は不適切です。

具体例:【貴社刊行物】p. 35「被験者に専門的な単語を記憶させて意図的に舌先現象が生じやすい環境をつくり出す実験」という文章は、【弊社刊行物】p.135 の Brown and McNeill(1966)の実験からの孫引きと思われますが、実験手続きと使用単語の説明が誤っているため「舌先現象」の例として不適切です。さらに【貴社刊行物】は、結果として「舌先現象が起こった人ほど、単語の特徴をより正確に覚えていた」と断定していますが、これも「単語の特徴」が何を指すのか、舌先現象が起こった人と何を比較して「より正確」であるのかが明記されていないため、不適切な説明となっています。

執筆者の学術的経歴および各々の担当項目は何か、詳細な情報の開示を求めます。貴社刊行物の監修者・執筆者の学術的な不適格性について、どのように認識していますか?

4. 盗作について


【4】以上を統合して考えると、貴社刊行物は弊社刊行物の構成・項目内容・文章などの「本質的特徴」を根拠として、概ね全体的に項目の順番などを変えながらコピー&ペーストし、専門家ではないライターが少しずつ言い回しを変えながら適当にまとめた「悪質な盗作物」であり、法的には一種の「複製物」であると結論付けざるを得ません。この点について、どのように認識していますか?

                                                                                                                     以上

宝島社の回答

2023年2月15日、次の「回答書」が内容証明郵便で届いた。


この「回答書」は、1カ月の猶予があったにもかかわらず誠に不十分であり、問題に真摯に向き合おうとする姿勢に欠け、不誠実極まりないと言わざるを得ない。そもそもこの「回答書」は、「質問状」に一切答えることなく、「厳密な議論」そのものから逃避している。とくに『認知バイアス見るだけノート』の監修者(齋藤勇)・編集者(中原海渡)・執筆協力者(玉木成子・千葉あかり・山本洋子・村沢譲・野村郁朋・工藤羽華・三ツ森陽和)がどのように考えているのか、まったく回答がない。改めて真摯な回答を求めているところである。

この「盗作」問題を公にする理由

それにしても、宝島社は「重版の停止、再出荷の停止を急ぎ進める所存」を自発的に申し出ているのだから、多少は反省していると思われるかもしれない。ところが、まったくそうではないのである(笑)!

2023年3月4日17:24時点のAMAZONでは『認知バイアス見るだけノート』は「残り20点(入荷予定あり)」となっていた。

ところが、その翌日2023年3月5日11:03時点のAMAZONでは『認知バイアス見るだけノート』は「在庫あり」となっている。つまり、今も普通に「再出荷」が続いて補給しているというわけである(笑)。

要するに、宝島社は、2月15日時点で「重版の停止、再出荷の停止を急ぎ進める所存」だから「法的議論」は勘弁してほしいと泣き言を言いながら、それから約20日経った現在も「再出荷」を横柄に続けているわけで、「重版の停止」の話もどこまで信用できるかわからない。

これまでに大手出版社の編集者複数名から「宝島社はヤクザな会社」だという噂を聞いたことがあったが、ここまで卑劣な会社だとは思わなかった。

というわけで、今後の法的措置の進行も含めて、この件については、すべてオープンに公表していくつもりである!

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Thank you very much for your understanding and cooperation !!!