齋藤勇監修『思い込みで誤った情報を選択しないための必須教養 認知バイアス見るだけノート』（宝島社）が、情報文化研究所（山﨑紗紀子・宮代こずゑ・菊池由希子）が執筆し私が監修した『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』（フォレスト出版）の「悪質な盗作物」であることは、次の記事で詳細に指摘したとおりである。

驚いたことに、この記事には発表から3日で2万5千以上のアクセスがあり、400近くの「スキ」をいただいている。とくに明るく楽しい話題でもないのに、応援してくださっている皆様に心より感謝したい。

Twitterでは「リライトしただけの内容で救いがない」「宝島社あいかわらずひどいな」「悪すぎる」「激ヤバ案件」「宝島社側の対応に呆れる」「大変お気の毒」といった声を頂戴し、「こんなこと許されないです。徹底的にやってください」というコメントも頂戴している。

宝島社・第一編集部編集長への電話

さて、私が上記の記事を note に公表したのは3月5日午前だが、実は私はその２日前の3月3日午後、宝島社・第一編集部編集長の井上泰氏に電話を掛けているので、この件についてご報告しておきたい。

宝島社の代表番号から受付を経て本人に繋がった後、「國學院大學の高橋と申しますが」「はい」「認知バイアス見るだけノートの件でお話があるのですが」「はい」「AMAZONではいまだに販売が続いているようですが」「はい」という感じで、結果的に井上氏の発言は、ほとんどが「はい」という気持ちのこもっていない返答だった。彼からは積極的なコミュニケーションを取ろうという意思が感じられず、「盗作」に対する「謝意」もまったく表明されず、まるで迷惑電話に嫌々対応しているような印象を受けた。

私は、まず最初に、こちらの要望は「質問状」に真摯に答えていただくことなので、仰々しく内容証明郵便など使用する必要はなく、メールで構わないから要点だけでも答えてほしいと述べて、私のメールアドレスを伝えた。

次に、以下の質問をした。①『認知バイアスノート』の発行部数・販売部数を知らせてほしい（答「今すぐにはわからない。メールで知らせる」）、②この件をネットで公開してもよいか（答「はい」）、③『認知バイアスノート』の「エピローグ」（「認知バイアス」に「論理学・認知科学・社会心理学」の３つの学問分野からアプローチするという「翻案権侵害」のある部分）を書いたのは齋藤勇氏か（答「はい」）、④AMAZONで販売が続いているのはなぜか（答「2月22日時点で出荷の停止を行ったはず。今日もう一度確認してみる」）……。

井上氏が述べた新たな情報は、『認知バイアスノート』は「外部プロダクション」（株式会社G.B.）に制作を委託し、さらにプロダクションが「外部ライター」に委託した部分もあるため、「宝島社の管理が徹底できなかった点があることは事実だ」と認めた点である。「それでは、盗作の責任は外部プロダクションおよび外部ライターにあるということですか」と尋ねると、「いや、全責任は弊社にあります」ということだった。

というわけで、電話から5日が過ぎたが、いまだに井上氏からメールは届いていない。

さらに2023年3月8日10:54時点のAMAZONでは『認知バイアス見るだけノート』は「残り18点（入荷予定あり）」ということで、「重版の停止、再出荷の停止を急ぎ進める所存」を表明した2月15日からちょうど3週間が経過した今日も、通常販売が続いている。

宣伝文句までパクられていた！

AMAZONの『認知バイアス見るだけノート』のページを見て改めて驚いたのは、その宣伝文句である。

どこかで見た文章だと思ったら、私が『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』の「監修者まえがき」で書いた言葉を組み合わせたリライトではないか（笑）！

文章をお書きになる読者であればおわかりだろうが、「膨大な情報に流されて自己を見失う」や「デマやフェイクニュースに騙される」といった言語使用は、簡単に見えるかもしれないが、実は著者はいろいろな言葉を組み合わせながら、何日も悩んで、何度も校正を重ねながら、ようやく校了した結果なのである。

その言葉さえ平気で盗んで、リライトして宣伝できるような宝島社の編集者には、もはやマトモな道徳観や正義感は望めないのかもしれない。

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