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朝日新聞広告に潜む「カルト勧誘」!

2021年3月28日付『朝日新聞』朝刊の「全面広告」は「新しい世界に羽ばたく人に贈りたい――本の力」というタイトルで、12人が各々1冊の書籍を紹介する仕組みのページになっている。

新しい世界に羽ばたく人に贈りたい
進級、進学、卒業、就職……いま新しい世界に飛び立とうとしている人たちに何か力になるものを贈りたい。羽の骨格となり筋肉となる力の素(もと)を贈りたい……。本を愛し、読書によって励まされ、勇気づけられてきた様々な方面の方々が「君にこそこの本を贈りたい」と厳選した一冊をご紹介します。

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同日、「広告朝日」編集部は、中川翔子・松丸亮吾・能町みね子・池上彰・竹下隆一郎・辻村深月各氏の名前を挙げて「『君に贈りたい』一冊をご紹介しています」と Twitter でツイートしている。

「広告朝日」編集部 @adv_asahi 3月28日
新しい世界へ羽ばたく人に贈りたい【本の力】
3月28日の朝日新聞朝刊で「君に贈りたい」一冊をご紹介しています。
中川翔子 @shoko55mmts 松丸亮吾 @ryogomatsumaru 能町みね子 @nmcmnc 池上彰 竹下隆一郎 @ryuichirot 辻村深月 @tsujimura_joho_

藤倉善郎氏の告発

さて、この広告の最上段左の第1冊目に紹介されているのが『歎異抄をひらく』(1万年堂出版)という書籍で、紹介しているのは「1万年堂出版」の社員である。ここでジャーナリストの藤倉善郎氏が問題視して告発しているのは、この書籍の著者が「親鸞会」の教祖・高森顕徹氏であり、その「親鸞会」は「カルト勧誘」で知られる新興宗教団体だという点である。

親鸞会は、一般的な浄土真宗各派とは無関係の新宗教団体。地域の公共施設や大学などで、宗教団体であることを隠したり別趣旨の団体を装ったりする「偽装勧誘」で知られている。全国の大学では新入学シーズンに「カルト勧誘」への注意を学生に呼びかけているが、大学が公に名指しするケースこそしないものの、多くの大学が事実上の「要注意団体」として意識している複数の宗教団体の1つだ。

新聞広告基準

朝日新聞社が会員となっている日本新聞協会の「新聞広告掲載基準」によれば、「編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの」は「掲載しない」ことになっている。

新聞広告掲載基準
1976(昭和51)年5月19日制定
1991(平成3)年3月20日一部改正
「新聞広告倫理綱領」の趣旨にもとづき、「新聞広告掲載基準」を次のとおり定める。
以下に該当する広告は掲載しない

1. 責任の所在が不明確なもの。
2. 内容が不明確なもの。
3. 虚偽または誤認されるおそれがあるもの。
 誤認されるおそれがあるものとは、つぎのようなものをいう。
 Ⅰ 編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの。
 Ⅱ 統計、文献、専門用語などを引用して、実際のものより優位または有利であるような表現のもの。
 Ⅲ 社会的に認められていない許認可、保証、賞または資格などを使用して権威づけようとするもの。
 Ⅳ 取り引きなどに関し、表示すべき事項を明記しないで、実際の条件よりも優位または有利であるような表現のもの。
4. 比較または優位性を表現する場合、その条件の明示、および確実な事実の裏付けがないもの。
5. 事実でないのに新聞社が広告主を支持、またはその商品やサービスなどを推奨、あるいは保証しているかのような表現のもの。
6. 投機、射幸心を著しくあおる表現のもの。
7. 社会秩序を乱す次のような表現のもの。
 Ⅰ 暴力、とばく、麻薬、売春などの行為を肯定、美化したもの。
 Ⅱ 醜悪、残虐、猟奇的で不快感を与えるおそれがあるもの。
 Ⅲ 性に関する表現で、露骨、わいせつなもの。
 Ⅳ その他風紀を乱したり、犯罪を誘発するおそれがあるもの。
8. 債権取り立て、示談引き受けなどをうたったもの。
9. 非科学的または迷信に類するもので、読者を迷わせたり、不安を与えるおそれがあるもの。
10. 名誉棄損、プライバシーの侵害、信用棄損、業務妨害となるおそれがある表現のもの。
11. 氏名、写真、談話および商標、著作物などを無断で使用したもの。
12. 皇室、王室、元首および内外の国旗などの尊厳を傷つけるおそれがあるもの。
13. アマチュアスポーツに関する規定に反し、競技者または役員の氏名、写真などを利用したもの。
14. オリンピックや国際的な博覧会・大会などのマーク、標語、呼称などを無断で使用したもの。
15. 詐欺的なもの、または、いわゆる不良商法とみなされるもの。
16. 代理店募集、副業、内職、会員募集などで、その目的、内容が不明確なもの。
17. 通信販売で連絡先、商品名、内容、価格、送料、数量、引き渡し、支払方法および返品条件などが不明確なもの。
18. 通信教育、講習会、塾または学校類似の名称をもちいたもので、その実体、内容、施設が不明確なもの。
19. 謝罪、釈明などの広告で広告主の掲載依頼書(または承諾書)の添付のないもの。
20. 解雇広告で次の項目に該当するもの。
 Ⅰ 解雇証明書の添付のないもの。
 Ⅱ 解雇理由を記述したもの。
 Ⅲ 被解雇者の写真を使用したり、住所などを記載したもの。
21. 以上のほか、日本新聞協会の会員新聞社がそれぞれ不適当と認めたもの。

藤倉氏は、今回の朝日新聞の「広告手法」について、あたかも広告でないように偽装して広告する「ステルスマーケティング」の一種であり、「新聞広告掲載基準」が「掲載しない」と述べている規則「3. 虚偽または誤認されるおそれがあるもの」に抵触するのではないかと指摘している。

これは、まさに的を得た批判であり、朝日新聞社広報部は、藤倉氏の批判を謙虚に受け止めて、今後は類似した「偽装広告」を発行しないように、くれぐれも注意すべきだろう!

偽装を自力で見抜く力

この広告の読者としては、まず他の有名人が推薦する大手出版社の刊行物に比べて、『歎異抄をひらく』が特殊な出版社から発行され、その特殊な出版社の社員が推薦している点に注意してほしい。そこでネットで検索すれば、著者の高森氏がどのような人物か、親鸞会が何をしてきたのかも見えてくるだろう。要するに、目の前にある記事だけを妄信して簡単に騙されないように、読者には「偽装を自力で見抜く力」が求められているのである!

藤倉氏は、次のように指摘している。

『歎異抄をひらく』は、ただの「カルト教祖の本」ではない。内容の良し悪しが問題だというわけでもない。偽装勧誘のツールそのものなのだ

上記の偽装イベントの「仏教講師」たちのプロフィールを見ると、宗教関係の専攻でもないのに大学卒業後、唐突に「仏教講師」になっているケースがいくつかある。「僧侶」や「住職」ではないから、実家が寺なので跡を継いだという話でもなさそうだ。

彼ら自身が、大学生時代に親鸞会の偽装勧誘によって入信し、そのまま教団所属の講師になってしまったクチなのではないだろうか。被害者が加害者となり新たな被害者を再生産する地獄のようなサイクル。親鸞会の偽装勧誘とは、そういう問題なのだ。

一般読者はもちろん、とくに大学生諸君には、決して「被害者が加害者となり新たな被害者を再生産する地獄のようなサイクル」に陥らないように、「偽装を自力で見抜く力」を体得してほしい!

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