とりあえず、天狗をめざす
「とりあえず、GWは高尾山に行こうよ」
「なんで?」
「……。
天狗の山だから…?」
まったく理由にならない理由を述べたにもかかわらず、なぜか意見が通った。
というわけで、高尾山に出かけてきた。
出かける前に、まずは装備。
飲み物、タオルなどに加え、
なぜか各々のリュックに詰め込まれる
単行本、文庫本の上下……
向かうのは修験道の山。
本の重さで負荷をかけ、鍛練する気満々なのだ。
高尾山口駅に到着。
ケーブルカーにするか、リフトにするか多数決。
「足をブラブラさせたいー!!」
と、はしゃぐ両親に、さめざめとした顔をする子。
リフトに決定し乗り込むと……
3人でフリーズ。
山上駅につき、地に足がつく喜びを噛みしめる。
気を取り直して、出立。
天狗並みに小さな気配を逃さず、初心者コース6号路を進む。
新緑や薬王院の素敵な景色のそばに、彼らは確かにいるのだ。
見つめてあげてほしい。
薬王院の境内もぐるぐる。
「なんで、斧?」
「ジェイソンの師匠なんじゃない……」
親のなぜなぜに、とりあえず、こたえてやる子……。
この善道鬼は夫婦の鬼で、もう一体と対になり修験者を助けていたそう。
そうなると、等身的にイシシとノシシっぽく見えてくる。
ゾロリ先生(お稲荷さん)もいらっしゃるし。
もちろん、天狗にまつわる物も。
“願叶輪潜”は、くぐった先ででっかい錫杖岳を鳴らして祈願。
と、不届な紹介ばかりしているが、緑の中にたたずむ仁王門や本堂など、薬王院は見どころ盛りだくさんだ。
寄り道をしながら、たどり着いた山頂。
日差しが強いけれど、とても清々しい。
「うどん、あるんだけど…」
ミスドと同レベルで好きなうどんに吸い寄せられるものが現れたので、山頂で昼をとった。
山の家でいただく冷やしなめこうどん。
夏場の海の家の味を想像していたのだが、しっかりコシがあり、具も多く、美味しかった。
この日からはじめたという、冷やし味噌おでんは、さらにめちゃウマだった。
お腹も満たされて、下山。
帰りは吊り橋がある4号路を行く。
上りで来た道より、山道。木の根が張り出していたり、道が狭かったり、なかなか周りを見ることができない。
そんな中、
誰が置いたのか、小さな石仏。
(楽しく帰れますように…)
祈った直後、しりとり大会がはじまる。
わが家のしりとりは、子が保育園の頃から一切配慮なしのハードモードである。
“る”攻め、濁点攻め、逃げ語(例:ニンジンジュース、ワシントンD.C.)など、オリジナルな戦いをする。
正しい意味を説明できれば認められるので、とにかく、どちらかがあきらめなければエンドレス(夫はさっさと離脱する)。
道中の暇つぶしにはじめたのだが、英単語も混ざり込んできて、マジで終わらない……
「吊り橋を渡るから、いったんストップ」
と、なんとか逃げた。
そんな感じで、帰りは歩くのとしりとりに終始してしまった。
戻った駅で、名物の天狗焼きをいただく。
とりあえず、機敏さも信心深さも足りず、めざす天狗には程遠い旅となったが、面白&美味しかったので、めでたし、めでたし。
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