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パニック障害 予期不安

私は長い間パニック障害とともに生活してきました。今も「ともに」と言えるかもしれません。

最初にその傾向に気が付いたのは18歳頃だと思います。決定的だったのは20代の真ん中くらいの頃車で高速道路を走っていた時のこと。助手席にはガールフレンドが座っていました。車を運転していた私は突然、身動きがとれず運転するしかない自分に焦燥感を感じました。なんて言えばいいのか、がんじがらめに縛りあげられてその状態から抜け出せない恐怖が急に襲ってきたんです。

高速道路でなければ車を端に寄せて一時停止もできたのですが、前後左右を走行している車に囲まれていたので、とにかく前に進むしかない状況でした。高速道路だったらこんな状態は当然いくらでも起こりえます。だから突然襲ってきた強烈な焦燥感には心底驚きました。恐怖、です。

その時は一回限りのことでさして気にも留めず、いつの間にか忘れ去っていたのですが、その後7,8年して今度は電車で症状が出始めたのす。そしてさらに10年ほどして人生を変える大きな出来事を経験し、うつ状態となり、加えて重度のパニック障害にも悩まされる日々を送るようになりました。高速道路は日常生活でそう頻繁に使うことはなかったのですが、電車に乗れなくなってしまったことで生活にかなりの制約が生じました。

パニック障害って、障害をお持ちでない方にはさっぱり想像つかないと思います。私の場合発作自体を経験したことはそう多くありません。では何が問題かというと、高速道路での運転中や電車に乗った時に経験した、逃げられないという認識からくる強烈な焦燥感と恐怖感が、電車に乗るたびににまたよみがえるのではないか?という不安に襲われることです。この不安を繰り返し感じているうちに、電車のドアが目の前で開いているのに乗り込めない、もしくは一度電車に乗ったものの、その不安が強くて降りてしまうということを繰り返すようになりました。

これは「予期不安」と呼ばれています。発作自体に苦しむという方もいらっしゃるようですが、私の場合は不安と恐怖にさいなまれました。

これにより私は徹底して電車の利用を避けるようになったんです。通勤自体は電車を使う必要はくバイクでした。時折仕事の研修で都心に出向く必要が生じた際もバイクを使いました。通勤ラッシュの時間帯に電車で都心に向かうということは本当に考えられないことでしたから。

電車に乗れない生活は10年近く続いたと思います。それでも友人と乗っていれば大丈夫だったのが救いでした。しかし、精神状態が危機的な時はそれすら不可能になってしまいました。知人2人と私の三人で電車に乗り、たったひと駅、わずか3,4分であっても私には耐えかねる状態となっていたのです。その時は電車はおろか路線バスですら乗れなくなっていました。

経過はここでは詳しく書きませんが、今は何とか電車に乗れています。でも決して心地よいことではありません。高速道路で不安なく運転できる自信もありません。

ただ、電車に全くのれなかったころ、よくこんな風にも思っていたものです。(今でも思っています。)

「混雑している電車。あれは異常事態なんだ。狭い箱にギュウギュウに詰め込まれて仕事や学校に毎日通うというこの社会。私は確かにこの社会からは脱落しているのかもしれないけれど、この社会のありようのほうがおかしいんだ。私にパニック障害という症状が起きるのは、社会のほうに障害があるからなんだ」と。

そして今年になって起こった感染症。

外出の自粛やら、リモートワークで通勤の異常さから解放された人々について言及される文章や記事を目にすることも少なからずありました。こうしたものを目にして私はちょっとくやしかった。「今頃遅いよ!」って。

私が利用している通勤電車もガラガラ。そんな状況の中私はこんな風に感じていました。「最近電車に乗ってて人身事故が起こらなくなったよなぁ」って。乗降客が激減したということもあるでしょうけれど...

私は、『社会のほうに障害があるんだ』という認識は決して間違っていないとそう信じてます。

私が深刻なパニック障害に苦しんでいたころ、克服した方々の文章を読んで腹立たしく思ったことがあります。それはとっても複雑な心理なんです。「克服して今は高見の見物なのか?この人は?」と感じてみたり、「あなたはパニック障害を克服して、あちら側に行戻れて幸せでいいですね。私は相変わらずこちらに取り残されてますよ。」という劣等感にも似た気持ちを持ったり。

ただ、私は少なくとも「この人、高見の見物なのだろうか?パニック障害の克服方法とかいっておせっかいだよ。」という気持ちを実際に味わったことがあるということは、お伝えしておこうと思います。

タイトルに使わせて頂いたのは駅の画像。何気ない画像ですが、私には色んな思い出や経験を象徴するような風景です。


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