拳を握って、勝利を “絶対” つかみ取る
“È la mia salvatrice!”
noteのとある記事を読み、思わず呟いた。
スマホを机に置きタブレットを手に取って、件の記事を表示させる。そして、キッチンへ向かった。
※この記事(上のリンクの記事ではなく、今あなたが読もうとしてくださっているこの文章)は、日本人の僕とイタリア人の友人アンドレアがイタリア語で交わした会話を、日本語に訳したものです。
ほぼ会話のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りしたいと思います。
L「なぁアンドレア...」
A「しつこい」
L「...まだ何も言ってないだろ」
A「もう何回も聞いた。でも、何回聞こうが君の要求を聞き入れるつもりはない」
L「僕は要求なんかしてないよ。昨日の夜から雑草のお茶しか飲んでないのに、昼飯が茹で過ぎて食感の無いカリフラワーとかニンジンみたいなのが漂ってる液体だけとかおかしいだろ、って説得してんの」
A「カモミールは雑草じゃないし、”カリフラワーとかニンジンみたいなの” じゃなくてカリフラワーとかニンジンだ。それに、茹でたんじゃなくて蒸したんだよ。あと、スープを液体って言うな」
L「僕の表現の方が的確だと思うけど。とにかく、病人の食べ物なんかやだ」
A「さっきまであんなに苦しんでたのに...」
L「もう治ったもん」
A「ローリス、少しは反省しろ。この前はチョコレートで昨日はジェラート... もう俺が外出しているときには何も食うな」
L「うるさい。僕が一人で何しようと勝手だろ」
A「ひとに迷惑をかけておいてよくそんなことが言えるな。百歩譲ってジェラートをどれだけ食べようが君の勝手かもしれないけど、チョコレートに関して君がしたことは窃盗だ」
L「その話はもういいよ... そんなことより、kaekoikさんが今月の記事投稿したから一緒に読もう」
A「...彼女、最近忙しいだろうに、やるべきことはちゃんとやって偉いなぁ。それに引き換え...」
L「黙れ。ほら見て、今回紹介されてるのは宇宙の漫画なんだよ。お前、宇宙大好きだろ。よかったな」
A「“FRATELLI NELLO SPAZIO”...聞いたことないな。有名な作品?」
L「うん。僕は読んだことないけど、名前だけは知ってる。確かイタリア語版のタイトルも原典と同じだったんじゃないかな。“FRATELLI NELLO SPAZIO” はサブタイトルだよ。“UCHU KYODAI” って聞いたことない?」
A「...ない」
L「お、じゃぁ紹介してもらえてちょうどよかったな。さっそく読もうよ。真ん中あたりから」
A「...なんで真ん中?」
L「真ん中が一番重要なんだよ」
A「俺は君と違って最初から順を追って読むから...」
L「うるさい! 最初に真ん中を読んで、それから最初に戻ればいいだろ! 今はカルロのことが一番重要なんだよ!」
A「...カルロ?」
L「言っておくけど、お前の友達のカルロでも、僕の犬のカルロでもないからな。この漫画の登場人物。ほら、ここ見て...」
A「『とてもかっこよくてキザなイタリア人で、天才的な医師でもあります』...」
L「ぁーあ、負けちゃったな。とてもかっこいいのは、まぁいいとして、お前はバカなイタリア人だし、医者じゃない。ちなみに、アルフレードのお兄ちゃんは医者なんだよ。かっこいいよな」
A「...『縁を切っていたマフィアの父親が、実はマフィアに潜入捜査をしていた刑事であると判明し、亡くなった父親を誇りに思いながら(…)』」
L「父親が刑事っていうのはいけ好かないけど、マフィアの潜入捜査をしてたってことは、シチリア...少なくとも南イタリア出身の可能性が高いよね」
A「そうとは限らないよ」
L「でも、ほら、ここ見て。『カルロがミッション中に作ったトマトソースは絶品と評価されています』って書いてある! 南イタリアの男って、アルフレードもルーカもそうだけど、料理めちゃくちゃ上手いじゃん。そういえばお前もトマトソース作るの得意だけど、でも、カルロには負けちゃうかもね」
A「...そんなことないよ」
L「どうかなぁ? トマトソースでも負けちゃったら、お前、はっきり言って価値ないね。なぁ、ここ見て。『カルロのようなお医者さんだったら手術を受けてもいいなあと思うのです』って書いてある。せめてトマトソースで勝てなかったらkaekoikさんに嫌われちゃうよ。前にお前のトマトソースの写真をnoteに載せたとき、あんなに褒めてくれてたのに、残念だなぁ。まぁ、カルロが相手じゃしょうがないよね。そうだ。カルロが作ったのよりも美味そうな料理の写真と、それをベタ褒めする僕の名キャプションをまたnoteに載せれば...少しは見直してもらえるかも知れないねぇ?」