(第二回SS合評参加作品) 四年ぶりに訪れる故郷は、記憶の中とそれほど異なってはいなかった。山を切り開いて造られた人口一万人程度の新興住宅地。幼い日の僕にとって「世界のすべて」だった町。思春期の僕にとって退屈の閉塞の象徴だった町。考えてみれば僕はずっとこの町を出て行くことばかり考えていた。この盆地を囲む山の向こうのどこかに自分の本当の居場所があると信じていた。結局それは素朴なロマンティシズムに過ぎなかったのだが、とにかく僕は両親をこの町に残し、遠く離れた土地で暮らしている
(第一回SS合評参加作品) 僕たちはきっと長生きできない。 僕達が成人する頃に、世界は滅びる。 いつだって「終末」を意識していた。どんな時も心のどこかで「終末」のことを考えていた。それはまるで詩歌の結句みたいに、あらゆる思考に纏わりついてきた。 学校で頑張って勉強しよう。でもやがて世界は滅びる。 友だちと遊ぶのは楽しい。でもやがて世界は滅びる。 今日のご飯はおいしい。でもやがて世界は滅びる。 将来どんな大人になりたい? でもやがて世界は滅びる。 なにしろ「終末」の訪れ